クラスメイトは魔法少女。俺、黒幕。

わーたん

おじさん達も怒られる。

「ほら、降りろ!!」

ワゴン車に乗せられ、着いた先は険しい山々に囲まれた村だった。

そして案内されたのは、1軒のログハウス風の小さな家だった。

「おーい、ミアちゃん! 兄貴を連れて来たぞ!」

1人の男がそう言うと、家の中からトタトタと足音が聞こえ、ドアが開けられた。

「お兄ちゃん!!」

家から出てきたのは、10才くらいの少女。俺の顔をまじまじと見つめると、痛烈に言い放った。

「この人、お兄ちゃんじゃない………」

少女がそう言った瞬間、俺を拉致してきたおっさん達はそれはそれは凍りついた。

「何を言っているんだ、ミアちゃん。どこからどう見ても君の兄貴じゃ……」

「違うよ。顔と背の高さは似てるけど、違う。別の人だよ………」

「なにぃ。それじゃあ、てめえは誰だ!!!」

「おやっさん!!」

おやっさんと呼ばれた人物は、俺の胸ぐらを掴み、今にも殴りかかってきそうな勢いで迫ってきた。



厨房でのオークなおっさんといい、このおやっさんとやらといい、魔界に来てからこんなんばっかりだな。

「てめえ! ミアちゃんの兄貴と偽りやがって」

「いやいやいや! 勝手にあんた達が連れてきたんじゃん」

「それなら、何故違うと言わなかったんだ!」

「違うと否定しても、絶対信じなかったでしょ? あんな乱暴に手錠を掛けやがって」

「手錠? そんなひどい事したの!?」

「やべ………ミアちゃん。これは君の兄貴を連れて来るために……」

「でも、私のお兄ちゃんじゃなかったんだから、これは誘拐だよね。おじさん達のした事は」

そーよねー。ミアちゃんい良い事言った。アネットさんがぶち切れるよ、これは。

「ごめんなさいね、お兄さん。おじさん達の勘違いでこんな遠いところまで。本当にごめんなさい」

おどおどする誘拐犯3人のおやっさんチームがいる傍ら、少女は申し訳なさそうに深々と頭を下げた。

「いいって、いいって」

年下の女の子にそんなかしこまられても、引け目を感じるだけだ。ちょっとスリリングなドライブを楽しませてもらったさと、俺なりのジョークを言ってやった。

「それじゃあ、おじさん達! 責任を持ってこのお兄さんを街まで帰してあげなさい!」

「はいぃっ!!」



「ちっ。ミアちゃんが言うならしゃあねえな。おい、車を出せ。街に戻るぞ」

「うすっ!」

どうやら、しっかり者の少女に大人達は言いなりなようで、車のキーを持った男が重たい腰を上げた瞬間、1人の若い男が部屋に飛び込んできた。

「おやっさん、大変です! 街に続く崖道で土砂崩れがありました!」

「なにいぃっ! ケガ人は!!」

「幸い巻きこれた者はいないようで。しかし、騎馬隊の話によると、土砂を片付けるまでに最低3日は掛かると………」

「そうか。昨日までの雨で地盤が緩んでいたのかもしれないな。うちの村からも、若い奴を手伝わせるか」

あらあら。雲行きがだいぶ怪しいぞ。しかし、俺はありったけの勇気をかき集めておやっさんに尋ねてみた。

「あの、俺を街まで送ってくださる予定は………」

「バカヤロウ!! 今の話を聞いていなかったのか! 土砂で道が塞がっちまったんだよ!」

「ちょっと、おじさん! そんな言い方はないでしょ!? ごめんなさい、お兄さん。街へ繋がる道はそこしかなくて、一応山を登って迂回する方法もあるけど、大人の足でも丸1日掛かるし、山には魔物が出るし………」

「そういうこった。まあ、空でも飛ばない限り、お前が居た街には行けねえんだよ!」

ヘイヘイヘイ! なんだいこのお約束展開は。俺は3日もここで立ち往生ってわけかい。

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