クラスメイトは魔法少女。俺、黒幕。

わーたん

桃浦さんよ。頑張って。

「……はっ……はっ……ゴール……すごく疲れたのだ……タイムはどうだったのだ!?」





「2分23秒68。今のところ、3番目だね」





「うう……。綾音にも勝てなかった……。悔しいのだ……」





「まあ、ドンマイ、ドンマイ」





やはり、普通に走れるわけではないな。





「喉渇いた……新井魔人。何か、飲み物を頂戴なのだ」





「俺に言うなよ。ジルハ先生に聞いてみろ」





「自販機まで、ひとっ走り行ってくれなのだ」





「クラスメイトをパシらせるなよ」





全く。黄名鈴香は自由人だな。目の前に、肉まんをぶら下げれば、だいぶタイムが縮まるんじゃない?



「ところで、最後は桃浦さんだよね? まだスタートしてないのかな?」



赤嶺さんは、そんな事を口にして、辺りをキョロキョロしている。



「そうね。姿が見えないわ」



青山さんも、それに同意するようにみんなの顔を見渡す。



「何処に行ってしまったのでしょう?」





「そういえば、着替えしている時から居なかったのだ」



緑川さんも黄名さんも、もう少ししたら、探しに走ってしまうのではないかというくらいに、真面目なお顔。



え? 何言ってんの、この子ら。俺はそう思ってしまった。



しかし、桃浦さん失踪疑惑を抱いているのは、魔法少女達だけでなく、スタート地点にいるジルハも同じようだった。





50メートル先で、桃浦さんの名前を呼びながら、キョロキョロしている。





「桃浦さんは、一体何処に消えてしまったのでしょう?とりあえず、ジルハ先生に……」





「私はここにいますけど」





「きゃあ!?」





辺りを見渡す赤嶺さん背後から、桃浦透美さんは、忽然と現れた。





ゴールに平均2分20秒かかる、50メートル走の疲れを忘れて、皆飛び上がりながら驚いていた。





俺は驚かないよ。だって、なんとか彼女の姿を見失わなかったからさ。



「桃浦さん、いつの間に……。早くスタートの所に行かないと……」





「赤嶺さん。私、今走り終えたんですよ」





「「ええ!!?」





桃浦さんの発言に、他4人の魔法少女候補生が心底驚いた。





そりゃ、驚くわな。彼女達はまたしても、桃浦さんの目視に失敗した様子だからな。





「でも、時間計ってないんじゃない? いつ、スタートしたっていうのよ!」





青山さんがまるで幽霊を見るかのような表情でそう桃浦さんに尋ねている。





冗談ではないらしい。





「タイムなら、ちゃんと計ったよ。2分18秒78。2番目にいいタイムだったよ」





「嘘なのだ! レーンには誰も走って居なかったのだ!」





「すみません。私、昔から影が薄いんです」





「そうなのか? ちゃんと後ろに、黒い影があるのだ」





「黄名さん。そういう意味じゃねえよ」

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