クラスメイトは魔法少女。俺、黒幕。

わーたん

アネットさん、お手柔らかに。

「今は………夜の10時を回ったところかな?」





「寮の門限は、何時だかご存知ですか?」





「確か……えっと……高校生だから、夜の7時くらいかな?」





「18時です」





マジか。知らなかったですね。知ってても帰れなかったけど。





「アネット先生。違うの! 魔人君には、私のバイトを手伝って貰ったの!!」



俺の大ピンチ底なしの巨乳に食べられちゃう! そう思った瞬間、横にいたパンダがなんとかしようと、俺を庇う。







「関係ありませんね」





しかし、一言で軽く片付けられてしまった。ありがとう、パン子ちゃん。君はいい子だったよ。









「自分の御身分をご存知ですか? まだ高校1年生のあなたが、連絡もせずに、こんな時間まで外出など、感心しませんね」



アネットさんの言葉は少し厳しいものであるが、確かにその通りだ。



途中で連絡の1つでもしておけば、アネットさんを心配させる事はなかっただろう。







「私のせいなの! 私が半ば無理矢理……」



パン子ちゃんはいい子だね。好きになっちゃうよ。パンダにさえならなければ。





「沢谷さん。あなたは早く自分の部屋に戻りなさい。今回は大目に見ますから」





「はい……。ごめんね、魔人にゃん」





申し訳なさそうに、馬鹿でかい図体のパンダが寮に戻っていく。





なんというシュール。




「魔王様。今1度言っておきますが、ご自身が魔王である事を、誰かに悟られてはいけません。特に魔法少女達には。その理由は、お分かりですね?」





「イエッサ」







ん? パン子ちゃんは人間側じゃないよな? 絶対に。



寮に帰り、俺の部屋でアネットさんによるプチ反省会。考えようによっては、おかずになりうるその状況は、自分が魔王である事を再確認するまでには至らない。





「よろしいですか? あなたが魔王だという事が知れれば、いつ誰に狙われるか分かりません。あなたはまだ、魔王としての力は何もないのですから」





「イエッサ」





俺の右薬指には、魔界に代々伝わる曰くつきの指輪「デルガド」が嵌められている。





どうやらこの指輪は、スーパーミラクルファンタジーパワーにより、普通の人間には目視出来ないようになっているらしい。







つまり、俺の指輪が見える人物が居たとしたら、それは魔界の人もしくは、魔界生まれという事になるみたいだ。




「この先、魔界の血を持つ者と出会っても、自らの正体を明かす事は控えて下さい。あくまでも、魔法少女達のサポートチームの一員という事で、あなたは樺羅杜学園の特別学級に通っている形なのですから」





「イエッサ」





つまりはこういう事。俺はその気になれば、世界を征服しかねない魔王ではあるけど、その力はまだない。





そして、俺が魔王として果たす目的は、世界を闇に葬る事でも、魔法少女達を蹴散らす事でもない。





その逆。





魔王の力を使い、魔法少女達を育て、魔王に対抗出来る力を蓄えさせる。







つまり、俺という魔王としての存在を消す為に、俺は魔王になってしまったんだ。





もはや、虚しさのかけらすらも感じない。









そして、なんというネタバレ具合だろうか。

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