クラスメイトは魔法少女。俺、黒幕。

わーたん

陰のうすい魔法少女

「黄名さん……。そろそろ、よろしいですか?」



痺れを切らしたジルハ先生がが黄名さんの話を遮る。



「あ、ごめんなさい!  あたい、つい夢中になって……」





ジルハ先生が声を掛けていなかったら、彼女は一体あと何分駅弁の話をしていただろうか。





1人、1分少々の持ち時間だったのに、駅弁の話を15分もベラベラと。





その食い意地張ってる黄名さんが、4人目の魔法少女か。





まあ、みんな驚いてはいたけど、怒っている人はいなかったみたいだし。



最後は微笑ましい雰囲気で黄名さんは席に戻っていったし。



よしとしますか!……と、思ったら……。





「あの子は何なんですの?  1人であんなに時間を使って……。これだから人間というやつは……」





楓さんが怒っていらっしゃった。まあ、どうでもいいけど。





「出席番号5番、桃浦透美さん」





「………」





あれ?





桃浦さんとやらの、お返事がないな。



「桃浦さん……?  桃浦透美さん……!?」





ジルハ先生が教室の至る所を見渡しながら、5人目の魔法少女の名前を呼ぶ。





他のクラスメイト達も、何処に行ってしまったのかと、辺りを見渡している。





真実を知っているのは俺だけなのだろうか。





まだ自己紹介をしていない、黒いセミロングの髪の毛をサラサラとさせた女の子。





5列ある1番後ろの席を立った彼女は、誰にも気づかれないまま教壇へと到着した。





俺だけはずっとその子を見ていた。誰にも存在を黙認されず、気まずそうに下を向くその女の子を。





「桃浦さん!  いないの!?  桃浦さん!?」





教壇に立った1分を経っても、その女の子は気付いてもらえない。





俺は、その寂しそうな女の子の姿を見ていたたまれなくなり、救いの手を上げる事にした。





「ジルハ先生。今、桃浦さんは教壇に立っているようですが……」





「えっ……?」



振り返ったジルハ先生がぎょっとした表情で桃浦さんを見ていた。


「いつの間に……。ご、ごめんなさいね、桃浦さん。それでは自己紹介をどうぞ!」





教壇に立つ桃浦さんの姿を見て、目を丸くしたジルハ先生。





他のクラスメイト達も同じように驚いている。





彼女達にしてみれば、突然桃浦さんが壇上に現れた感覚だ。





くのいち姉妹はどんなリアクションだろうか?





「ふ、ふんっ。私は分かっていましたわよ。気配を隠すなんて、なかなかやりますわね」





「お姉様もずっと違う方向をキョロキョロしていたような……。私もあの方の姿を捉えられませんでしたけど……」





なんと……。驚きだ。





人の視界から気配を消す。人の気配を認知する事に秀でているくのいち姉妹も、桃浦さんの事を察知出来なかったとは。

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