実況!4割打者の新井さん
みのりんにネタ提供の新井さん
「まあ、これはマスコミには言ってないことだけど、北海道との3連戦の初戦にキッシーが負け投手になった時、やつが座る隣の席にあえて座ってやったのよ。みんなが気を使って、周りを敬遠している中、あえてドーンとね」
「うんうん。新井くんはそこで岸田さんに何て言ったの?」
「確かね、まあ負け投手の隣に座るのも勉強の1つだなみたいなことを言ってー……」
「うんうん」
「ホテルに着くまでの10分くらいの間、ビクトリーズが負けた本当の戦犯は誰だ!? みたいな推理ショーが始まっわけ」
「そんなことをして大丈夫だったの?」
「大丈夫よ。そして野球探偵新井くんはまず、無理な前進守備を指示した守備走塁コーチを疑ったのさ。犯人はお前だってね!」
「え、えー。コーチさんなのに?」
「しかしそのコーチさんはフェイク。ミスリード要員に過ぎず、真犯人は、センターを守っていた柴ちゃんだったのさ!!」
「えー、柴崎くんが………?」
「しかしよ、山吹さん。本当の正義とは世間から疎まれてしまうもの。出る杭は打たれてしまうんだ。気付けば俺は、チーム全員から犯人はお前だと仕立てあげられ、なすすべなく真顔で座席に戻ったていうわけさ」
「確かにあの日新井くんは全然打てなかったもんね」
「まあ、バスの中でそんな事件があった後、その後のお楽しみはなんといってもホテルのバイキングだよね。……部屋で着替えた俺はレストランにヘッドスライディングで飛び込んだわけだけど、そこに現れたのは俺の天敵よ」
「え、誰? コックさん?」
「その天敵とは広報の宮森ちゃん。これがとんだ生真面目娘で。栄養管理担当とか適当なことを抜かして、俺のトレイから料理を奪っていくひどい猫娘で、新卒1年のぺーぺーのくせして、俺にあれこれ指図するわけよ」
「新井くんも1年目のぺーぺーだよね」
「うん、まあね。まあそんなことがあった後に、試合に負けたから禁止されているお酒をちょっとだけ持って、キッシーの部屋を訪ねたわけよ」
「そうなんだ。そこでアドバイスしてあげたの?」
「そうそう。球団から支給されてるタブレットに、キッシーのピッチングフォームを色んな角度から撮って編集した映像をスコアラーに入れてもらってさ。すると、キッシーは気付いたね。今のピッチングフォームでは、右バッターにたいして球離れが見やすくなるという欠点に」
「そっかあ、新井くんはそれを伝えたかったんだね」
「ああ、ピッチャーのリリースポイントに攻略の重点を置くのは俺のバッティングスタイルの1つだからね。……そのことに気付いたキッシーはピッチングフォームを戻すのではなく、右バッターにはサイドスロー、左バッターには従来のオーバースローで投げ始まったっていう流れだね。……名付けるなら、キッシーのハイブリッド投法の巻って感じかな」
「なるほど、なるほど。キッシーのハイブリッド投法の巻。………それ、いただき」
「山吹さん、わりとノリノリだね。……そして、この話は、それって俺じゃなくてピッチングコーチの仕事じゃろがいっていうのがオチだね」
「なるほど。オチの出来はともかく、この話いただきました」
ええー!? オチが今一つだったの? みのりんは手厳しいなあ。
やっぱり、てっきり大人の付き合いになるかと思った宮森ちゃんとこっそり2人きりで向かった先は、ただのダーツバーだったという話の方がよかったかな。
しかし、勘違いとはいえ、みのりんにそんな話しにくいし。
かといってオチが弱いと言われたままでは………。うーん、悩ましい。
「もう少しで、マイちゃんとさやちゃんが来るからご飯仕上げるね」
みのりんは分厚いメモ帳を閉じて、それを引き出しにしまうと、エプロンを着け直してキッチンに向かう。
すると………。
「はろーん、遠征お疲れー!」
ギャル美がやってきた。少し茶色がかった髪の毛を止めていたヘアピンを外しながら、靴を脱いでみのりん部屋に上がり込む。
「いやー、仕事疲れたー。見て、肩がバッキバキ」
「見て分かるかい!」
ギャル美は、近所のスーパーの袋をどさっとテーブルに置く。
そして俺はその彼女の格好を見て、愕然とした。
          
「うんうん。新井くんはそこで岸田さんに何て言ったの?」
「確かね、まあ負け投手の隣に座るのも勉強の1つだなみたいなことを言ってー……」
「うんうん」
「ホテルに着くまでの10分くらいの間、ビクトリーズが負けた本当の戦犯は誰だ!? みたいな推理ショーが始まっわけ」
「そんなことをして大丈夫だったの?」
「大丈夫よ。そして野球探偵新井くんはまず、無理な前進守備を指示した守備走塁コーチを疑ったのさ。犯人はお前だってね!」
「え、えー。コーチさんなのに?」
「しかしそのコーチさんはフェイク。ミスリード要員に過ぎず、真犯人は、センターを守っていた柴ちゃんだったのさ!!」
「えー、柴崎くんが………?」
「しかしよ、山吹さん。本当の正義とは世間から疎まれてしまうもの。出る杭は打たれてしまうんだ。気付けば俺は、チーム全員から犯人はお前だと仕立てあげられ、なすすべなく真顔で座席に戻ったていうわけさ」
「確かにあの日新井くんは全然打てなかったもんね」
「まあ、バスの中でそんな事件があった後、その後のお楽しみはなんといってもホテルのバイキングだよね。……部屋で着替えた俺はレストランにヘッドスライディングで飛び込んだわけだけど、そこに現れたのは俺の天敵よ」
「え、誰? コックさん?」
「その天敵とは広報の宮森ちゃん。これがとんだ生真面目娘で。栄養管理担当とか適当なことを抜かして、俺のトレイから料理を奪っていくひどい猫娘で、新卒1年のぺーぺーのくせして、俺にあれこれ指図するわけよ」
「新井くんも1年目のぺーぺーだよね」
「うん、まあね。まあそんなことがあった後に、試合に負けたから禁止されているお酒をちょっとだけ持って、キッシーの部屋を訪ねたわけよ」
「そうなんだ。そこでアドバイスしてあげたの?」
「そうそう。球団から支給されてるタブレットに、キッシーのピッチングフォームを色んな角度から撮って編集した映像をスコアラーに入れてもらってさ。すると、キッシーは気付いたね。今のピッチングフォームでは、右バッターにたいして球離れが見やすくなるという欠点に」
「そっかあ、新井くんはそれを伝えたかったんだね」
「ああ、ピッチャーのリリースポイントに攻略の重点を置くのは俺のバッティングスタイルの1つだからね。……そのことに気付いたキッシーはピッチングフォームを戻すのではなく、右バッターにはサイドスロー、左バッターには従来のオーバースローで投げ始まったっていう流れだね。……名付けるなら、キッシーのハイブリッド投法の巻って感じかな」
「なるほど、なるほど。キッシーのハイブリッド投法の巻。………それ、いただき」
「山吹さん、わりとノリノリだね。……そして、この話は、それって俺じゃなくてピッチングコーチの仕事じゃろがいっていうのがオチだね」
「なるほど。オチの出来はともかく、この話いただきました」
ええー!? オチが今一つだったの? みのりんは手厳しいなあ。
やっぱり、てっきり大人の付き合いになるかと思った宮森ちゃんとこっそり2人きりで向かった先は、ただのダーツバーだったという話の方がよかったかな。
しかし、勘違いとはいえ、みのりんにそんな話しにくいし。
かといってオチが弱いと言われたままでは………。うーん、悩ましい。
「もう少しで、マイちゃんとさやちゃんが来るからご飯仕上げるね」
みのりんは分厚いメモ帳を閉じて、それを引き出しにしまうと、エプロンを着け直してキッチンに向かう。
すると………。
「はろーん、遠征お疲れー!」
ギャル美がやってきた。少し茶色がかった髪の毛を止めていたヘアピンを外しながら、靴を脱いでみのりん部屋に上がり込む。
「いやー、仕事疲れたー。見て、肩がバッキバキ」
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そして俺はその彼女の格好を見て、愕然とした。
          
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