実況!4割打者の新井さん

わーたん

ヒーローインタビューをしたい新井さん11

東京スカイスターズとの3戦目だ。

日曜日のデーゲーム。

今日は負けられない。一昨日、昨日の逆転まけでビクトリーズの連敗は6に伸び、1ヶ月前に記録したばかりの球団ワースト記録を更新しようとしている。

しかし、さすがに今日負けて7連敗はさすがにきつい。

7連敗して移動日の月曜日を迎えるか、なんとか首位のチームから1勝をもぎとって火曜日からの北海道、東北遠征に向かうかはえらい違い。

今日負けたら、今夜は悔しくて眠れない気がしてくる。

いくらうちが弱いチームとはいえ、弱いチームでも3割は勝てるという言葉があるくらい、野球は単純な力関係だけで、勝敗が簡単には決まらない。確率的に7連敗なんてする方が難しいんだから。


今日のビクトリーズは、さすがに今日のビクトリーズは、そんな言葉を体現するかのように、かなり優勢に試合を運んでいた。

初回に1点こそ失うものの、1回ウラ、柴ちゃんのヒットと盗塁から、3番阿久津さん、4番赤ちゃん、5番シェパードと3者連続のタイムリーが飛び出して3点を奪う。

さらに2回にも、8番守谷ちゃんのヒットからチャンスを作り、柴ちゃん、阿久津さんがタイムリーを放つなど、2回を終えて7ー1と大量リードを奪うことに成功した。



投げても、期待の若手である先発の中山涼というピッチャーが立ち上がりこそは安定しなかったものの、10本のヒットを許しながらも、なんだかんだで6回1失点と好投した。

7回をベテラン左腕の奥田さん。8回を台湾人左腕のリ・ロンパオと繋いで、6点リードのまま、いよいよ最終回を迎えた。

「北関東ビクトリーズ、ピッチャーの交代をお知らせします。ピッチャー、リ・ロンパオに代わりまして、岸田。ピッチャーは岸田。背番号21」

6点リードなど、7連敗中のうちには関係なし。ほんの少しの油断も隙も作りたくない。常に最善。出しうる最適な采配、起用でとにかく勝ちを取りに行く。

なんとしても今日は、絶対に勝たなくてはいけない。

なにがなんでも勝たなくてはいけない。そんな姿勢。6点リードしていても萩山監督の目はいまだに血走っている。

そんな表情で出て来たのが、クローザーの岸田だ。

前々登板は味方投手の残したランナーを返してしまい同点に追い付かれ、前回登板はセーブシチュエーションで失点し、負け投手。

7連敗しているチーム以上に、今の岸田は失敗出来ない立場にあった。



ましては6点差。絶対に失敗出来ないプレッシャーがわりと重く、鉛のようにのし掛かる。




ライトスタンド下にあるプルペンに繋がる、ライトポール下のフェンスがオープンすると、黄色いパトライトを光らせたブルペンカーが現れる。

ニコニコのお姉ちゃんが運転するその車が1塁ベースの後ろまでやってくると、その後部座席から降りて、ゆっくりとマウンドに向かうキッシー。

ボールを受け取りながら、キャッチャーの鶴石さんといつもより少し長めに話をしている。慎重に、慎重にといった様子。

レフトの守備位置から見ている限り、岸田は特別気負っている様子もなく、焦ることもなく、ある意味いつも通り、投球練習でもキレのあるボールを鶴石さんに向かって投げ込んでいる。

心配なさそうだが。

相手の打線も下位からだし、かるーく3人で抑えて欲しいところだ。


カンッ!


「1、2塁間破っていきました。ノーアウト、ランナー1塁です」


相手バッターが打った打球がファーストの横を抜けていき、先頭打者が出塁する。

そして次打者の打球が俺の目の前へ。多少詰まった打球だが、三遊間を抜けた打球がワンバウンド、ツーバウンドで俺のグローブに収まる。

掴んだ打球を中継の赤ちゃんに返す。

ノーアウト、ランナー1、2塁になったけど、まあ6点差あるし、だいじょぶっしょ。


「引っ張った! 大きな打球がレフトへ! 新井の頭上へ飛んでいる!」



むりー。捕れませーん。

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