実況!4割打者の新井さん
お嬢さん、泣かないで。
俺、一応プロ野球選手だから!
などと言うのもかったるくて心に閉ざしたまま、俺は部屋に戻る。
ゆっくりと大風呂に浸かり、布団に入ったのは、午前1時を過ぎた頃。
朝から宇都宮から大阪。試合の最後に出て、夕方には東京方面の新幹線の中。
乗る車両を間違えたおかげで、とんぼ返りにすらならなかった初めての関西遠征は、非常に心にも体にも何かずっしりくるような後味の悪いものとなってしまった。
そんな気持ちのまま、目覚ましをかけようと開いたスマホには。
みのり
新井くん。初ヒットおめでとう。
山さや
みんなでテレビで見てました!ナイスバッティングです!
マイマイ
まあまあだったんじゃない? 大阪みやげヨロシク!
グループメッセージにきていた3人娘のメッセージに少しだけ心を救われた気がした。
俺は、ありがとう。そう言ってくれるのはみんなだけだよ。と送り、返信を確認することなく、スマホと目を閉じた。
「はあ!? なんであんたが2軍に落ちたわけ!?」
翌日。
美味しい海鮮料理に下鼓を打った思い出だけの大阪旅行を終え、2軍の練習場に挨拶に行ったその夜。
みのりんだけに連絡して彼女の部屋を訪れたのに、みのりんの部屋にいたのは、ギャル美だけだった。
キッチンでフライパンをジャッ! ジャッ! っとふるいながら野菜か何かを炒めていたのだ。
そして、なんであんたが大阪じゃなくて宇都宮にいるのよ!とびっくりされてしまった。
しかし、憤るギャル美のエプロン姿も悪くはない。
「なんであんたが2軍に落ちちゃうのよ!昨日の試合ヒット打ったのあんただけだったじゃない!」
「俺が聞きてえよ」
「だって、そうでしょ!? あんたがいなかったら、ノーヒットノーランなんてやられてたのよ! それなのに………なんであんたが2軍に落ちなきゃいけないわけ!? ……他の打てなかったやつを落とせばいいじゃない!…………ぐすっ………ぐすんっ…………ごめん………でも、信じらんない。ひどいじゃない……そんなの」
あれ? ギャル美が泣いちゃった。
「あの…………その……………マイちゃん………」
こんな時に気の利いたセリフが出てこない俺は、ギャル美にボックスティッシュを差し出すことしか出来なかった。
「………ごめんね………ありがと」
ギャル美は少し乱暴にティッシュを何枚か引き出して、それを目元に当てた。
そして、なんとも言えない空気が漂い、いよいよギャル美を後ろから優しく抱き締めるしないと思ったその時、玄関ガチャリと開いた音がした。
「………あ、新井くん。もう来てたんだ」
両手に近所のスーパーのビニールを持ったみのりんが帰ってきた。
その後ろには、山名さんもいる。2人で買い出しに行っていたのか。
危ないところだった。
俺はギャル美をそのままにして玄関に向かい、たくさんの食材が詰まったビニール袋を受け取った。
「ありがとう、新井くん。ごめんね? 疲れているのに」
「いーの、いーの! 山吹さんの美味しい料理が食べれるんなら、なんでもするって」
「………そう。じゃあ、マイちゃんと一緒に晩御飯作っちゃうね」
「よろしくー!」
などと言うのもかったるくて心に閉ざしたまま、俺は部屋に戻る。
ゆっくりと大風呂に浸かり、布団に入ったのは、午前1時を過ぎた頃。
朝から宇都宮から大阪。試合の最後に出て、夕方には東京方面の新幹線の中。
乗る車両を間違えたおかげで、とんぼ返りにすらならなかった初めての関西遠征は、非常に心にも体にも何かずっしりくるような後味の悪いものとなってしまった。
そんな気持ちのまま、目覚ましをかけようと開いたスマホには。
みのり
新井くん。初ヒットおめでとう。
山さや
みんなでテレビで見てました!ナイスバッティングです!
マイマイ
まあまあだったんじゃない? 大阪みやげヨロシク!
グループメッセージにきていた3人娘のメッセージに少しだけ心を救われた気がした。
俺は、ありがとう。そう言ってくれるのはみんなだけだよ。と送り、返信を確認することなく、スマホと目を閉じた。
「はあ!? なんであんたが2軍に落ちたわけ!?」
翌日。
美味しい海鮮料理に下鼓を打った思い出だけの大阪旅行を終え、2軍の練習場に挨拶に行ったその夜。
みのりんだけに連絡して彼女の部屋を訪れたのに、みのりんの部屋にいたのは、ギャル美だけだった。
キッチンでフライパンをジャッ! ジャッ! っとふるいながら野菜か何かを炒めていたのだ。
そして、なんであんたが大阪じゃなくて宇都宮にいるのよ!とびっくりされてしまった。
しかし、憤るギャル美のエプロン姿も悪くはない。
「なんであんたが2軍に落ちちゃうのよ!昨日の試合ヒット打ったのあんただけだったじゃない!」
「俺が聞きてえよ」
「だって、そうでしょ!? あんたがいなかったら、ノーヒットノーランなんてやられてたのよ! それなのに………なんであんたが2軍に落ちなきゃいけないわけ!? ……他の打てなかったやつを落とせばいいじゃない!…………ぐすっ………ぐすんっ…………ごめん………でも、信じらんない。ひどいじゃない……そんなの」
あれ? ギャル美が泣いちゃった。
「あの…………その……………マイちゃん………」
こんな時に気の利いたセリフが出てこない俺は、ギャル美にボックスティッシュを差し出すことしか出来なかった。
「………ごめんね………ありがと」
ギャル美は少し乱暴にティッシュを何枚か引き出して、それを目元に当てた。
そして、なんとも言えない空気が漂い、いよいよギャル美を後ろから優しく抱き締めるしないと思ったその時、玄関ガチャリと開いた音がした。
「………あ、新井くん。もう来てたんだ」
両手に近所のスーパーのビニールを持ったみのりんが帰ってきた。
その後ろには、山名さんもいる。2人で買い出しに行っていたのか。
危ないところだった。
俺はギャル美をそのままにして玄関に向かい、たくさんの食材が詰まったビニール袋を受け取った。
「ありがとう、新井くん。ごめんね? 疲れているのに」
「いーの、いーの! 山吹さんの美味しい料理が食べれるんなら、なんでもするって」
「………そう。じゃあ、マイちゃんと一緒に晩御飯作っちゃうね」
「よろしくー!」
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