実況!4割打者の新井さん
山吹さんよ。君は俺をだましていたのか。
「いらっしゃいませー」
コンビニの中に入ると、程よい空調の風が酒で火照った俺の体を冷ます。
適当にアイスかプリンでも物色するかーという感じで、レジの前を通り掛かると買い物を終えた感じの女の子3人とすれ違う。
その中にいた1人の顔を見て、俺はぎょっとした。
山吹みのりんがいたのだ。
「あ、新井くん………」
レジ袋を持ったみのりんもさぞかし驚いている様子だった。
「あれ? 山吹さん、どうし……」
そう言いかけた時、連れの女の子の声が店内に響く。
「みのり。早くしないと休憩時間終わっちゃうよ。何してるの!? 早く工場戻るよ。ただでさえ今日は欠勤が出てるんだから」
えっ!?  工場? どういうこと?
「あれ? あの男の人って、みのりの知り合い? 私、まずった?」
「山吹さん、お仕事お疲れ様」
「新井くん………」
朝。俺は家で5時間ほど睡眠を取って、昨日みのりんと出くわしてしまったコンビニ方面へと足を向ける。
コンビニの側には昨日関西弁コーチをメシを食った鉄板焼屋さんがあり、その裏手の敷地には大きな洋菓子工場がある。
聞かずとも、その洋菓子工場がみのりんが深夜勤めている職場だと分かった。
工場の前で腕立て伏せをして待つプロ野球選手の鏡のような俺の姿を見て、みのりんは少し驚いたような顔をしていた。
「やっほー、迎えに来たよ。そのまま家に帰る?」
俺がそう訊ねると、彼女は少し間を置いてコクリと頷く。
俺達は並ぶようして道路とは区切られた歩道をゆっくりと歩く。
小鳥の声が聞こえ、太陽の光が眩しい。
「………あの、昨日はごめんね………。ちゃんと説明出来なくて………」
少し歩き出し、最初の角を曲がったところで、山吹さんは口を開いた。
コンビニでみのりんに鉢合わせした時は、軽く頭が真っ白になった。
しかも、えっ? みのりんが深夜の工場で働いているなんてどういうこと? そんな感じで俺はパニックになってしまった。
「さっき………というかコンビニではごめんね。もう休憩時間が終わりの時間で………」
「……うん、いいよ」
みのりんが明らかに困惑しているのが、手に取るように分かる。彼女は謝罪を口にすると、また黙ってしまったが、俺が聞きたいのはそういう事ではなかった。
俺のそんな考えも、彼女に伝わってしまっているだろうし、みのりんも内緒にしていた深夜の工場勤務を俺に知られてしまったのだ。
そして、仕事が終わり、帰ろうとすると、俺が待ち構えていたのだから、困惑するのも無理ないし、なんだか悪いことをしている気がするのもまた事実だ。
しかし、それくらい俺にとってみのりんが特別な存在になりつつあるのと同じように、みのりんも俺がただの隣人でないことが分かった気がして。
それがものすごく嬉しかった。
だから今度は俺の方から切り出すことにした。
          
コンビニの中に入ると、程よい空調の風が酒で火照った俺の体を冷ます。
適当にアイスかプリンでも物色するかーという感じで、レジの前を通り掛かると買い物を終えた感じの女の子3人とすれ違う。
その中にいた1人の顔を見て、俺はぎょっとした。
山吹みのりんがいたのだ。
「あ、新井くん………」
レジ袋を持ったみのりんもさぞかし驚いている様子だった。
「あれ? 山吹さん、どうし……」
そう言いかけた時、連れの女の子の声が店内に響く。
「みのり。早くしないと休憩時間終わっちゃうよ。何してるの!? 早く工場戻るよ。ただでさえ今日は欠勤が出てるんだから」
えっ!?  工場? どういうこと?
「あれ? あの男の人って、みのりの知り合い? 私、まずった?」
「山吹さん、お仕事お疲れ様」
「新井くん………」
朝。俺は家で5時間ほど睡眠を取って、昨日みのりんと出くわしてしまったコンビニ方面へと足を向ける。
コンビニの側には昨日関西弁コーチをメシを食った鉄板焼屋さんがあり、その裏手の敷地には大きな洋菓子工場がある。
聞かずとも、その洋菓子工場がみのりんが深夜勤めている職場だと分かった。
工場の前で腕立て伏せをして待つプロ野球選手の鏡のような俺の姿を見て、みのりんは少し驚いたような顔をしていた。
「やっほー、迎えに来たよ。そのまま家に帰る?」
俺がそう訊ねると、彼女は少し間を置いてコクリと頷く。
俺達は並ぶようして道路とは区切られた歩道をゆっくりと歩く。
小鳥の声が聞こえ、太陽の光が眩しい。
「………あの、昨日はごめんね………。ちゃんと説明出来なくて………」
少し歩き出し、最初の角を曲がったところで、山吹さんは口を開いた。
コンビニでみのりんに鉢合わせした時は、軽く頭が真っ白になった。
しかも、えっ? みのりんが深夜の工場で働いているなんてどういうこと? そんな感じで俺はパニックになってしまった。
「さっき………というかコンビニではごめんね。もう休憩時間が終わりの時間で………」
「……うん、いいよ」
みのりんが明らかに困惑しているのが、手に取るように分かる。彼女は謝罪を口にすると、また黙ってしまったが、俺が聞きたいのはそういう事ではなかった。
俺のそんな考えも、彼女に伝わってしまっているだろうし、みのりんも内緒にしていた深夜の工場勤務を俺に知られてしまったのだ。
そして、仕事が終わり、帰ろうとすると、俺が待ち構えていたのだから、困惑するのも無理ないし、なんだか悪いことをしている気がするのもまた事実だ。
しかし、それくらい俺にとってみのりんが特別な存在になりつつあるのと同じように、みのりんも俺がただの隣人でないことが分かった気がして。
それがものすごく嬉しかった。
だから今度は俺の方から切り出すことにした。
          
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