実況!4割打者の新井さん
デビューの結果は……2
「なんでって。みのりと一緒にあんたが出てた2軍の試合を見てたのよ。アナウンス室の横で。それであんたがデッドボールを受けて病院に行くって聞いたから、心配してきたんじゃん。チョーウケる」
アナウンス室の横って、確か来賓専用の観戦室じゃねえか。2軍の試合とはいえ、なんでそんなところに入れんだよ。
「別にー。あたし、ビクトリーズの球団担当イラストレーターだから、結構融通利くし、取材のためとかいえば、好きな時に球場入れるしー。チョーいい仕事みたいなー」
イラストレーター? なんじゃそれは。まあ、とにもかくにも、今日がオープン戦最後だってのに、早速全治1ヶ月のケガかよ。
何をやってんだ、俺は。
「ま、とりあえず球場戻って監督に報告しよか。もう試合終わっとるやろうし」
「ナゼ、スシボーイをゲームに出したのデスカ!!ユー、ワタシが言ったコトを覚えていないのデスカ!!」
「ビクトリアさん! 落ち着いて下さい! ほら、放して」
関西弁コーチの運転する車でブイーンと2軍のスタジアムに戻ると、試合は既に終了して、グラウンドは整備チームのスタッフの何人かが作業しているだけ。
監督はもう監督室に戻っているだろうと、ケガの報告に廊下を歩いて行くと、その途中で、事件が起こっていた。
なぜだか2軍の施設にオーナーのビクトリア社長が顔を真っ赤にして怒り狂っていて、2軍監督の胸ぐらを掴んでいたのだ。
それを秘書の山吹さんが、慌てて止めていたのだ。
「無理にゲームに出して、デッドボールなんて、彼に何かあったら、ユーは2軍のボスとして、責任取れるのデスカ!?」
真っ赤なスーツのアメリカおばちゃんがそう言ったのを聞いて、俺は自分のしてしまったことに、背筋が凍るような寒気を感じたのだ。
あと、アメリカおばちゃん、かなり日本語がお上手ね。
「も、申し訳ない……」
2軍監督は、少しばかり薄くなった頭をさらけ出して、オーナーに向かって頭を下げる。
しかし、それではオーナーの怒りは収まらないようだ。
なんて言っているのか英語だから分からないが、手を大きく広げたり、ブロンドの髪の毛を振り乱して、きつい言葉を飯塚監督にぶつけているようだった。
それを見て俺は、2軍監督の横で同じく帽子を取り、同じように頭を下げた。
「ス、スシボーイ!?」
「新井くん! いつの間に!」
ベンチ裏で深く黒ずむプロ野球闇の一部にて、すっと現れた28歳のオールドルーキー。
「オーナー。申し訳ございません。何を隠そう、このケガの原因はこのわたくしにあるのでございます。私を起用した監督には何の罪もないのでございます」
俺は思わず声を発してしまった。ケガをした当人である俺自身がでしゃばる場面ではないと分かってはいたのだが、今年中学生になった監督の一人娘のことを考えたら、いても立ってもいられなくなってしまったのだ。
          
アナウンス室の横って、確か来賓専用の観戦室じゃねえか。2軍の試合とはいえ、なんでそんなところに入れんだよ。
「別にー。あたし、ビクトリーズの球団担当イラストレーターだから、結構融通利くし、取材のためとかいえば、好きな時に球場入れるしー。チョーいい仕事みたいなー」
イラストレーター? なんじゃそれは。まあ、とにもかくにも、今日がオープン戦最後だってのに、早速全治1ヶ月のケガかよ。
何をやってんだ、俺は。
「ま、とりあえず球場戻って監督に報告しよか。もう試合終わっとるやろうし」
「ナゼ、スシボーイをゲームに出したのデスカ!!ユー、ワタシが言ったコトを覚えていないのデスカ!!」
「ビクトリアさん! 落ち着いて下さい! ほら、放して」
関西弁コーチの運転する車でブイーンと2軍のスタジアムに戻ると、試合は既に終了して、グラウンドは整備チームのスタッフの何人かが作業しているだけ。
監督はもう監督室に戻っているだろうと、ケガの報告に廊下を歩いて行くと、その途中で、事件が起こっていた。
なぜだか2軍の施設にオーナーのビクトリア社長が顔を真っ赤にして怒り狂っていて、2軍監督の胸ぐらを掴んでいたのだ。
それを秘書の山吹さんが、慌てて止めていたのだ。
「無理にゲームに出して、デッドボールなんて、彼に何かあったら、ユーは2軍のボスとして、責任取れるのデスカ!?」
真っ赤なスーツのアメリカおばちゃんがそう言ったのを聞いて、俺は自分のしてしまったことに、背筋が凍るような寒気を感じたのだ。
あと、アメリカおばちゃん、かなり日本語がお上手ね。
「も、申し訳ない……」
2軍監督は、少しばかり薄くなった頭をさらけ出して、オーナーに向かって頭を下げる。
しかし、それではオーナーの怒りは収まらないようだ。
なんて言っているのか英語だから分からないが、手を大きく広げたり、ブロンドの髪の毛を振り乱して、きつい言葉を飯塚監督にぶつけているようだった。
それを見て俺は、2軍監督の横で同じく帽子を取り、同じように頭を下げた。
「ス、スシボーイ!?」
「新井くん! いつの間に!」
ベンチ裏で深く黒ずむプロ野球闇の一部にて、すっと現れた28歳のオールドルーキー。
「オーナー。申し訳ございません。何を隠そう、このケガの原因はこのわたくしにあるのでございます。私を起用した監督には何の罪もないのでございます」
俺は思わず声を発してしまった。ケガをした当人である俺自身がでしゃばる場面ではないと分かってはいたのだが、今年中学生になった監督の一人娘のことを考えたら、いても立ってもいられなくなってしまったのだ。
          
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