実況!4割打者の新井さん

わーたん

筋トレ頑張る新井さん。

「「ありがとーございましたー!」」



なんでだか、店を後にする俺を微笑ましい表情で見送るコーヒーショップの店員さん達が不思議だった。



可愛い子ばっかりだったので、悪い気はしなかったのだが。



店内に入るまでは乗り気じゃなかったけど、美味しいサンドイッチとコーンスープを頂き、さらに食後のコーヒーもごちそうになってしまった。



しかし、俺はコーヒーが正直苦手で、今まであまり飲まないようにしていたのだが。ポニテの店員さんにはなんだか悪くて言い出せなかった。



「私が淹れたコーヒーですよ。熱いので気をつけて飲んで下さいね」



可愛いグラマラスなポニテちゃんにそう言われたらしょうがないよなあ。



俺はちょっと多目に砂糖とクリームを入れてなんとか飲み干したのだ。



そんなこんなで、そこそこ時間も押してきてしまっているので、残りの10キロを必死になって走る。





また駅前から、大学前通りを走り、ショッピングモールを抜けて、2軍の練習場へと戻る。



予定よりも、20分くらいオーバーしてしまった。



ヒーヒー言いながら練習場前に倒れこんだ俺をジャージ姿の細身の男が待ち構えていた。



「遅かったね、新井君。さあ、すぐにトレーニングを始めるよ」



2軍練習場の裏手。お客さんが使う入り口とは反対方向の場所。



ちょうどホームベース裏に当たる場所だ。



階段を4、5段降りて、大きなガラス扉を開け、1塁側方向に向かう。



ベンチ裏に入る通路を通り過ぎ、ロッカールームとトイレを通りすぎたさらにその先。



重たい両開きの鉄扉を開けたその中。



俺はトレーニングコーチと思われる男にその部屋へ案内された。



様々なトレーニング器具やマットレス。バランスボールなどがおいてあり、部屋の半分の壁は鏡になっている。



「午前と午後の筋力トレーニングは、ここで行うよ。さっそくミーティングに移ろうか」



ジャージ姿の男は俺をバランスボールに座らせながら、手に持っていた資料を渡す。



「基本的に君のトレーニングは、比較的長い時間をかけて筋肉を肥大させるのが目的だから、1回の負荷は軽めになっているから、それは理解してくれ」



男はイラスト付きの資料と俺の顔を見比べながら、トレーニングのやり方と注意事項を話していく。



俺はその話をうつらうつらしながり聞いていた。



40キロのバーベルを台に寝転がって仰向けになった状態で、何度も上げたり下げたり、上げたり下げたり。



「よーし、オッケイ! 2分間休憩ね」





バーベルをストッパーに乗せて、乳酸の溜まった両腕をブラブラとさせる。



少し水分を取りながら、深呼吸をする2分間はあっという間で、すぐにまたバーベルを持つように促される。



そして、5回6回。7回8回と上げていき、ベンチプレスに30分じっくりと時間をかけた。



「よーし、オッケイ。じゃあ、次は腕の筋力アップのトレーニングねー。こっち来てー」



休む間もなく、別のバーベルを持たされてすぐに次のトレーニングが始まる。



しかし、20キロ走るよりもだいぶ楽だ。



楽なはずなんだ。



俺はそう自分に言い聞かせながら、昼飯を楽しみにしながら、1時間の筋力トレーニングに励んだ。

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