実況!4割打者の新井さん
運命の………?3
地獄。なかなかの地獄。バットを放り投げ、人の家のガラスを豪快に割ってしまったというショックに打ちひしがれながら、俺は下の公園からマンションの階段を上がっていく間、どう謝ろうかと、そればかり考えていた。
まさか、バットがマンションの2階まですっ飛んでいってしまうなんて。
しかも、隣は俺の部屋。自分の部屋だったら、修理依頼の電話をするだけで済む話だったのに……。
しまった。プロ野球選手になった瞬間にこの体たらく。
とにかく、一体どう言い訳しようかと、何か上手い言い回しはないものかと、必死になって考えたが、あっという間にバットを放り投げてしまった部屋に到着した。
下手にモタモタしてはいられないと、俺はすぐにインターホンを鳴らした。
「…………はい」
細々とした女性の声が聞こえ、ドアが開かれた。
とりあえず、悪気はありませんでしたという誠意は見せようと、俺は玄関先で全力の土下座をかました。
「この度は本当に申し訳ありません! お怪我、怪我などはされていないでしょうか!本当に申し訳ございません!!」
砂混じるコンクリートに額を擦り付け、申し訳ございませんでしたと、声を大にして謝った。
するとその女性は………。
「別に大丈夫です。隣の部屋にいましたから。気にしないで下さい」
そう言って、少し俺を励ますような口調で、頭を上げるように促してきた。なんとお優しい。
俺はゆっくりと立ち上がりながら、目にしたその女性の姿を見て、俺はドキッとしてしまった。
目はくりっと大きく、鼻すらっと細長く通っており、少しだけ赤みのある柔らかそうなほっぺたが印象的。
手足も細く、透き通るような色白で、肩まで伸びた綺麗な黒髪がツヤツヤしている。
沈みかけの夕陽を浴びてより一層キラキラして見えて、ぼんやりと見惚れてしまっていた。
なんだか控えめで大人しそうな。男を全然知らなそうな。
学校の図書室の隅にひっそりと座って静かに本を読んでいそうなちょっと地味な感じで、黒縁の細く四角めな眼鏡を掛けた女の子。
でも幼く見えてちょっと可愛らしい。
これはもしかしたらラッキーかも。こんな女の子の隣の部屋を契約してくれてありがとう。という気持ち。
生涯ビクトリーズを誓った瞬間だった。
「………今、大家さんに電話したら、すぐに業者の人が来て直してもらえるから。本当に気にしないで」
女性は少し低いトーンの声で俺にそう告げた。
「…………ぐ〜っ…………」
それに対して、俺の腹の虫が大きな声で返事をしたのだ。
「………あなた、お腹がすいているの?」
女性はさっきよりも若干やさしめな口調で俺に尋ねる。
無機質な表情で何を考えているのか分からないが、嘘をつくような空気ではなかったので、俺は黙って頷いた。
「………今、ご飯を作っていたところだから。よかったら………上がって。バットも持ち帰って」
え!? なんという展開……。
確かにその女性はそう言い残し、俺の目の前にふかふかしたスリッパを置くと、そのまま部屋の中へと戻っていってしまった。
本当にお呼ばれしてもいいのかと不安になってしまったが、今は1本しかない大切なバットがこの部屋のベランダにある。
このまま帰るわけにもいかない。恐る恐る靴を脱いで、ドキドキしながらスリッパに履き替えた。
「……ここで座って待ってて」
キッチンのすぐ横にあるダイニング。木製のテーブル。
それに備え付けれた椅子を引いて、女性はエプロンに着用し、IHヒーターにかけられた鍋のふたを開けた。
まさか、バットがマンションの2階まですっ飛んでいってしまうなんて。
しかも、隣は俺の部屋。自分の部屋だったら、修理依頼の電話をするだけで済む話だったのに……。
しまった。プロ野球選手になった瞬間にこの体たらく。
とにかく、一体どう言い訳しようかと、何か上手い言い回しはないものかと、必死になって考えたが、あっという間にバットを放り投げてしまった部屋に到着した。
下手にモタモタしてはいられないと、俺はすぐにインターホンを鳴らした。
「…………はい」
細々とした女性の声が聞こえ、ドアが開かれた。
とりあえず、悪気はありませんでしたという誠意は見せようと、俺は玄関先で全力の土下座をかました。
「この度は本当に申し訳ありません! お怪我、怪我などはされていないでしょうか!本当に申し訳ございません!!」
砂混じるコンクリートに額を擦り付け、申し訳ございませんでしたと、声を大にして謝った。
するとその女性は………。
「別に大丈夫です。隣の部屋にいましたから。気にしないで下さい」
そう言って、少し俺を励ますような口調で、頭を上げるように促してきた。なんとお優しい。
俺はゆっくりと立ち上がりながら、目にしたその女性の姿を見て、俺はドキッとしてしまった。
目はくりっと大きく、鼻すらっと細長く通っており、少しだけ赤みのある柔らかそうなほっぺたが印象的。
手足も細く、透き通るような色白で、肩まで伸びた綺麗な黒髪がツヤツヤしている。
沈みかけの夕陽を浴びてより一層キラキラして見えて、ぼんやりと見惚れてしまっていた。
なんだか控えめで大人しそうな。男を全然知らなそうな。
学校の図書室の隅にひっそりと座って静かに本を読んでいそうなちょっと地味な感じで、黒縁の細く四角めな眼鏡を掛けた女の子。
でも幼く見えてちょっと可愛らしい。
これはもしかしたらラッキーかも。こんな女の子の隣の部屋を契約してくれてありがとう。という気持ち。
生涯ビクトリーズを誓った瞬間だった。
「………今、大家さんに電話したら、すぐに業者の人が来て直してもらえるから。本当に気にしないで」
女性は少し低いトーンの声で俺にそう告げた。
「…………ぐ〜っ…………」
それに対して、俺の腹の虫が大きな声で返事をしたのだ。
「………あなた、お腹がすいているの?」
女性はさっきよりも若干やさしめな口調で俺に尋ねる。
無機質な表情で何を考えているのか分からないが、嘘をつくような空気ではなかったので、俺は黙って頷いた。
「………今、ご飯を作っていたところだから。よかったら………上がって。バットも持ち帰って」
え!? なんという展開……。
確かにその女性はそう言い残し、俺の目の前にふかふかしたスリッパを置くと、そのまま部屋の中へと戻っていってしまった。
本当にお呼ばれしてもいいのかと不安になってしまったが、今は1本しかない大切なバットがこの部屋のベランダにある。
このまま帰るわけにもいかない。恐る恐る靴を脱いで、ドキドキしながらスリッパに履き替えた。
「……ここで座って待ってて」
キッチンのすぐ横にあるダイニング。木製のテーブル。
それに備え付けれた椅子を引いて、女性はエプロンに着用し、IHヒーターにかけられた鍋のふたを開けた。
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