実況!4割打者の新井さん
新入団選手発表会なのーに……。
12月20日。午後1時。宇都宮市内にあるなかなか高級なホテルの広いお部屋にて。
今日は北関東ビクトリーズ新入団選手発表記者会見当日。
ドラフトで指名された全選手がユニフォーム姿で壇上に設置された長いテーブルに前後2列に、互いの顔が重ならないように席についている。
みんな緊張した面持ちだ。
その選手達の周りの壁やパーテーションは北関東ビクトリーズのチームカラーである鮮やかなピンク色。
何の動物なのかよく分からない、とりあえず毛がふわふわで気持ちよさそうなキャラクターが日本刀を構えるようにバットを握っている球団ロゴも至るところにある。
恐らく記者が30人かそのくらいいるみたいいで時折カメラのシャッターが切られ、フラッシュが眩しく、静かになると咳払いや用紙をめくったり擦れたりする音が聞こえてくる。
テレビカメラも数台あるみたい。
座る選手達の横には、司会を務めるロングヘアーの女子アナがマイクを握り、透き通るような声でスムーズに進行されている。
テーブルの真ん中にドンと座るおじさんは、萩山さん。ビクトリーズの1軍監督に就任した男。他球団での優れたコーチ経験を経て、新規参入球団の監督に抜擢されたおじさん。選手時代は、堅実な守備が売りの内野手だった。
会見はドラ1選手から1人ずつ、プロフィールやらこれまでの野球経歴が司会のお姉さんに読み上げられ、背後に降りてきたスクリーンにはプロジェクターによって、各々カッコいい写真が数枚ずつ、写し出されている。
一通り紹介が終わると、萩山監督から期待のメッセージが送られて、選手によってははにかむシーンも。
そんな流れが全員分終わり、最後に順番にマイクが回ってきて、席を立って1人ずつ挨拶と意気込み発表タイム。
カメラのフラッシュがバシュバシュッと容赦なく焚かれるわけだね。
そんな中で、目玉に魚と書いたそれを泳がせながら、新人王目指して頑張ります!とか、開幕1軍目指して頑張ります!とか言うわけよね。
俺もね、色々挨拶を考えましたよ。
3年はプロの世界で生き残れるように、ごますりして頑張ります!
美人女子アナをゲットするために頑張ります!
三冠王狙いで頑張ります!
それはそれはいろいろウケ狙いで考えましたよ。
だけどさ。
まさかインフルエンザになるとはね。
もう最悪だね。最悪。今までインフルエンザなんて小学校低学年以来縁がなかったのに。
よりによって、新入団記者会見の時にインフルエンザなんて発動するかね。
大事な人生の再スタートだってのに。
他の新人の奴らはテレビの向こう側でパシャパシャカメラを向けられているのに、俺はバナナとリンゴをかじりながら、ベッドで横になっている。
昨日、インフルエンザになりましたって、球団本社に電話したら、ガチギレされましたよ。インフルエンザ患者に普通にガチギレですよ。
普通さ、大丈夫ですかー!? 元気ですかー!? って言って、少しは心配するものじゃない。
一応、野球選手よ? ルーキーよ? もう少し労ってくれてもいいじゃない。
そんな風に不貞腐れながら、会見の途中だけどテレビを消し、薬を飲んで、またベッドで横になり静養に努めた。
そして…………。
「はい、これ。診断書と完治証明書ね」
インフルエンザにかかってから10日程が経過した。
発病した時期が悪く、かかりつけの病院が年末年始休みを取りやがったもんだから、完治証明書みたいなのをもらうのに、年を越して1月の4日になってしまった。
寝てたのは、新入団記者会見があった1日だけで、あまりにも暇だったので、野球ゲームの実況ミラクルプロ野球で、まだ実装されていない北関東ビクトリーズを自分で作って、ネットで移籍情報を調べながら、ゲーム内で選手を移籍させまくりましたよ。
最近ではライブ選手と言って、入団決まった選手をエディットモード独自に能力を査定して、顔や打撃フォームもそっくりに作って、パスワードで配ってるプレイヤーがいましてね。
もちろん、無名な俺は居るはずもなかったけど。
そのオリジナル選手達を使わせてもらいながら、オートモードでペナントレースを戦わせたりして遊んでましたね。
まあ、何回やっても最下位でしたが。
本当は素振りとか、母校に行ってキャッチボールとかティーバッティングくらいやらせてもらおうかと思っていたけど、診断書なければ、トレーニングしちゃダメとか球団の人が言うもんだから、そんな感じでずっと大人しくしていた次第でございます。
今日は北関東ビクトリーズ新入団選手発表記者会見当日。
ドラフトで指名された全選手がユニフォーム姿で壇上に設置された長いテーブルに前後2列に、互いの顔が重ならないように席についている。
みんな緊張した面持ちだ。
その選手達の周りの壁やパーテーションは北関東ビクトリーズのチームカラーである鮮やかなピンク色。
何の動物なのかよく分からない、とりあえず毛がふわふわで気持ちよさそうなキャラクターが日本刀を構えるようにバットを握っている球団ロゴも至るところにある。
恐らく記者が30人かそのくらいいるみたいいで時折カメラのシャッターが切られ、フラッシュが眩しく、静かになると咳払いや用紙をめくったり擦れたりする音が聞こえてくる。
テレビカメラも数台あるみたい。
座る選手達の横には、司会を務めるロングヘアーの女子アナがマイクを握り、透き通るような声でスムーズに進行されている。
テーブルの真ん中にドンと座るおじさんは、萩山さん。ビクトリーズの1軍監督に就任した男。他球団での優れたコーチ経験を経て、新規参入球団の監督に抜擢されたおじさん。選手時代は、堅実な守備が売りの内野手だった。
会見はドラ1選手から1人ずつ、プロフィールやらこれまでの野球経歴が司会のお姉さんに読み上げられ、背後に降りてきたスクリーンにはプロジェクターによって、各々カッコいい写真が数枚ずつ、写し出されている。
一通り紹介が終わると、萩山監督から期待のメッセージが送られて、選手によってははにかむシーンも。
そんな流れが全員分終わり、最後に順番にマイクが回ってきて、席を立って1人ずつ挨拶と意気込み発表タイム。
カメラのフラッシュがバシュバシュッと容赦なく焚かれるわけだね。
そんな中で、目玉に魚と書いたそれを泳がせながら、新人王目指して頑張ります!とか、開幕1軍目指して頑張ります!とか言うわけよね。
俺もね、色々挨拶を考えましたよ。
3年はプロの世界で生き残れるように、ごますりして頑張ります!
美人女子アナをゲットするために頑張ります!
三冠王狙いで頑張ります!
それはそれはいろいろウケ狙いで考えましたよ。
だけどさ。
まさかインフルエンザになるとはね。
もう最悪だね。最悪。今までインフルエンザなんて小学校低学年以来縁がなかったのに。
よりによって、新入団記者会見の時にインフルエンザなんて発動するかね。
大事な人生の再スタートだってのに。
他の新人の奴らはテレビの向こう側でパシャパシャカメラを向けられているのに、俺はバナナとリンゴをかじりながら、ベッドで横になっている。
昨日、インフルエンザになりましたって、球団本社に電話したら、ガチギレされましたよ。インフルエンザ患者に普通にガチギレですよ。
普通さ、大丈夫ですかー!? 元気ですかー!? って言って、少しは心配するものじゃない。
一応、野球選手よ? ルーキーよ? もう少し労ってくれてもいいじゃない。
そんな風に不貞腐れながら、会見の途中だけどテレビを消し、薬を飲んで、またベッドで横になり静養に努めた。
そして…………。
「はい、これ。診断書と完治証明書ね」
インフルエンザにかかってから10日程が経過した。
発病した時期が悪く、かかりつけの病院が年末年始休みを取りやがったもんだから、完治証明書みたいなのをもらうのに、年を越して1月の4日になってしまった。
寝てたのは、新入団記者会見があった1日だけで、あまりにも暇だったので、野球ゲームの実況ミラクルプロ野球で、まだ実装されていない北関東ビクトリーズを自分で作って、ネットで移籍情報を調べながら、ゲーム内で選手を移籍させまくりましたよ。
最近ではライブ選手と言って、入団決まった選手をエディットモード独自に能力を査定して、顔や打撃フォームもそっくりに作って、パスワードで配ってるプレイヤーがいましてね。
もちろん、無名な俺は居るはずもなかったけど。
そのオリジナル選手達を使わせてもらいながら、オートモードでペナントレースを戦わせたりして遊んでましたね。
まあ、何回やっても最下位でしたが。
本当は素振りとか、母校に行ってキャッチボールとかティーバッティングくらいやらせてもらおうかと思っていたけど、診断書なければ、トレーニングしちゃダメとか球団の人が言うもんだから、そんな感じでずっと大人しくしていた次第でございます。
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