片思い片手間ヒーロー

Joker0808

第15話

翌朝、純は目を覚ました後、ぼーっとしたままシャワーを浴び、ぼーっとしたまま食事を取り、ぼーっとしたまま登校した。
考えていたのは、昨日の女性の事ばかりだった。
武装が強いのか、それとも女性自身が強いのか、純にはわからなかったが、ただ一つ自分よりも強力な力を持った人間が居る、そのことを知った。
しかも、味方では無い。
これからIDを退治する度に、あの女性が現れたら、今度は逃げ切る事が出来るのか、純は不安だった。

「はぁ……」

溜息を吐きながら教室に入ると、スマホにメッセージが届いた。
差出人はエレーナだった。
文章には短く「学校は何時に終わるの?」と書かれていた。
本日は終業式で、授業は午前中で終わりだった。純はすぐさま、午前中で終わるとエレーナにメッセージを送り、机の上に突っ伏す。

「どうしたもんかなぁ……」

「何がだよ?」

「ん? なんだ竜也か……」

「どうした? 調子でも悪いのか」

「別に……ちょっと昨日の疲れが残ってるだけだ」

「それはドンマイ、それよりお前、今日暇か?」

「あぁ、悪い多分用事が入る」

純は、さっきのエレーナのメッセージの内容を思い出した。
きっとまだここら辺の事がわからないので、色々と聞きたいのだろうと考える純。
とりあえずエレーナの返信を待っている状況なので、他に予定は入れない方が良いだろうと思い、純は竜也の誘いを断った。

「多分? 先約でもあんのか?」

「あぁ、多分……っと、言ってる間に来たな」

話しをしていると、純のスマホが震えだした。
純はスマホを取り出し確認すると、想像の通り、エレーナからのメッセージが届いていた。 エレーナからは「日用品を買うから手伝って」というメッセージが送られて来ていた。
昨日出会ったばかりの男に、随分気を許しているなと、純は思いながら、返信を打つ。

「誰だ?」

「うぉっ! 覗くなよ…」

「まぁまぁ、俺とお前の仲だろ?」

「関係ねーよ……ちょっとご近所さんから、手伝って欲しいことがあるって話しだよ」

「ご近所付き合いってやつか……一人暮らしも楽じゃねーのな」

「ま、そんな感じだ。悪いな、また誘ってくれよ」

「了解。じゃあ他をあたるか~」

純はエレーナに返信を打ち終え、再び机に突っ伏す。

「パワーアップね~」

昨日の帰り道に、エレスが言っていた事を思い出す。
確かに最近のIDは力を増している。
前のように簡単に勝つことが出来ないほど、厄介な敵も多い。
しかし、そんな簡単にパワーアップなんて出来るのだろうか?
考えれば考えるほど、これからの事が不安になってくる純だった。
そして、そうこうしている間に学校がが終わり、純はエレーナを迎えにエレーナの自宅である、高級マンションに来ていた。

「えっと……確か603号室だったな……」

玄関ホールのオートロックで、純は部屋番号を押してインターホンを鳴らす。

『はい、どちら様ですか?』

「あ、俺だよエレーナ、純だ」

『あぁ、純。待ってたわ、今開けるから』

純はエレーナにドアを開けて貰い、中に入っていく。
エレーナの部屋は六階にあり、結構上の方だった。
エレベーターで目的の階に向かい、純は部屋を探す。

「ここか……なんだ、ここにもインターホンかよ」

純はドア横のインターホンを押して、ドアの前で待った。
すると、インターホンを押して数秒後、エレーナがドアを開けて純の前にやってきた。

「いらっしゃい、ごめんなさいね、連日付き合って貰っちゃって」

「いや、良いよ……ん、怪我したのか?」

エレーナは左腕に包帯を巻いていた。
昨日分かれた後に、何かあったのか純は心配になり、エレーナに尋ねる。
女性の一人暮らしだと、ストーカーなど、危ない事も多い。
しかもエレーナは美少女だ、変質者なんかに襲われないとも言えない。

「あぁ……これは昨日の晩に、野良猫にね……」

「猫? てか、夜に一人で出かけたのかよ……慣れないうちは危ないぞ?」

「いやー、ちょっと買い物に行ったら、野良猫が居て、追いかけてたら転んじゃって……」

「はぁ……何やってんだよ……確かにそれじゃあ、重い物は持てないもんな……」

「面目ない……」

怪我をしているから、自分に日用品の買い出しを頼んだのだろうと、連絡してきた意味を理解する純。
とりあえず、中に入れて貰った純。
中は段ボールであふれており、あまり女の子の一人暮らし、と言う感じはしなかった。

「引っ越してきたばっかりだから、散らかってるけど、楽にしてよ」

「あぁ、何も出さなくていいぞ、買い物行くんだろう?」

飲み物を用意しているエレーナに、純はそう言い、フローリングに座る。

「んで、何を買いに行くんだ? 結構多いのか?」

「まぁね、色々と必要な物をメモに書いたから、それを買う感じかな……はい、どうぞ」

「あぁ、ありがとう」

エレーナは小さな折りたたみの机を出し、それを純の目の前に置き、机にお茶を置く。

「はい、これが買い物リスト」

そう言ってエレーナは、机の上にメモ用紙を出す。
そこには、びっしりと買う物が記されており、純は上からさらっと見る。

「結構多いな……まぁでも、買えなさそうな物は無いか……」

「怪我しなくても、多分純の事呼んでたかもね」

「まぁ、女一人でこれはキツいな……まぁ俺も暇だったしな」

「そう言えばお昼食べた?」

「あ、食ってねーな……食ってから行くか?」

「うん! 私、天丼が食べたい!」

「了解、じゃあ行くか」

純とエレーナはお茶を飲み終えると、二人揃って街に向かい始めた。

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