好き同士ってめんどくさい

Joker0808

第58話

「ここだ」

建物の一番奥の部屋。
この先に彩が……。
俺は、はやる気持ちを抑えつつユートが部屋のドアを開けるのを待つ。

「行くぞ、悠人は下がっていてくれ」

「あ、あぁ……」

俺はユートとゴブリン二人の後ろに下がる。
この中じゃ、俺が一番弱いし、ユートの言うことは妥当だろう。
俺の役目は、いかにユートの足手まといにならないかだな……。

「行くぞ!」

ユートはそう言うと、勢いよくドアを開けた。

「レイミー!!」

ドアを開け中に入ると、そこにはレイミーと彩がいた。
何かを話していた様子で二人は向かい合って部屋にいたのだが、ユートが入って来た瞬間、レイミーが彩を人質に取り始めた。

「ユート……やっぱり来てしまったのね」

「レイミー……もう終わりにしよう。僕は君を傷つけたくは無い」

「もう……終われないのよ……ここまで来たら! 終われないのよ!!」

涙を浮かべながらそう叫ぶレイミー。

「デルサ! グレブ! 貴方たち裏切るの!」

「レイミー様……もうやめましょう……折角の平和が……これでは……」

レイミーは二人のゴブリンの名前を呼ぶ。
心配そうな表情でレイミーを説得しようと試みる二人のゴブリン。

「レイミー様……」

「私はなんとしても!!」

「その通りですよレイミー様」

「誰だ!!」

俺たちがレイミーの説得を試みていると、またしても部屋の中に誰かが入ってきた。
マジシャンのような怪しげな格好で、片目には眼帯をしている。
怪しげな男は、部屋の中に入ってくるとレイミーの前に立ち、俺たちの方に頭を下げる。

「お初にお目に掛かります。私はルマルドと申します」

「ルマルド……君は……」

「ユート様、お気を付け下さい!」

「奴がレイミーをたぶらかした張本人です!」

「何!」

ゴブリン二人……名前はデルサとグレブだったか。
二人の言葉に、ユートは剣に手を掛ける。

「フフ……人聞きの悪い事を言わないでもらえませんか? 私はただレイミー様にご提案しただけです」

「何をヌケヌケと!!」

「反乱軍も今回の件もすべて! お前の入れ知恵ではないか!」

「おやおや、それでは私が黒幕みたいではありませんか」

あっけらかんとしながら返答するルマルド。
ユートはそんなルマルドに向かって剣を構える。

「今はレイミーと話しをしているんだ。ルマルド、君は黙っていてくれ」

「もとよりそのつもりですよ、私は何もしませんのでご安心を」

ルマルドはそう言うと、レイミーの隣に下がって行った。

「もう……後戻りは出来ないのよ……」

「レイミー落ち着くんだ! 今なら間に合う!」

「もう間に合わないわよ……だから……私は……やり遂げるしかないのよ!!」

「レイミー!!」

レイミーはそう言うと、部屋の壁を吹き飛ばし、彩を連れて外に逃げる。

「それでは私も……ごきげんよう!」

「くっ! デルサ、グレブ、悠人を頼む!」

「了解した!!」

ユートはレイミーを追って外に出た。
え、待って……俺は?」

「捕まっていてください!」

「え? っておわっ!」

俺はグレブに持ち上げられ、ユートの後を追うことになった。
なんて情けない格好だよ……。
森の中を少し走ったところで、ユートはレイミーとルマルドを捕らえていた。
彩もどうやら無事らしい。

「彩!」

「悠人!」

感動の再会……となるはずだったのだが……。

「アンタ……なんで抱えられてんの?」

「……聞かないでくれ」

恥ずかしい……助けに来たのにこの格好はかなり恥ずかしい。
抱えられて運ばれてるんだもの!!

「下ろしてくれ……そろそろ恥ずかしい……」

「あ、わかりました」

「ありがとう……」

「何しに来たのよ……あんた」

こっちが聞きたいわ!!

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