今日からフリーになりまして

Joker0808

第54話

暇になったし、芽生に電話でもしてみようかしら?
何かあったみたいだし、至急って書いてあるし……。
私は着替えを済ませ、店を出て彩葉に電話を掛けると、直ぐに指定された喫茶店に来るように言われた。
なんだか凄く焦っている感じで、私は少し心配になってしまった。

「あ、おまたせ、どうしたの?」

「どうしたのじゃないわよ!」

「……いや、呼び出したの芽生じゃ……」

「もう訳が分からないの!」

「それは私の言葉だと思う……」

「良いから座って話しを聞いて!」

「そのつもりだけど……」

私が席に着くと、芽生は静かに話し始めた。
「昨日……春山君とアンタのデートを尾行してたんだけど……」

「まって、最初になんで私達のデートを尾行したかについて詳しく」

「いや、その件はとりあえず置いておきましょう」

「私にとっては重要な事なんだけど……」

話しを聞くと、芽生と栗原君は私たちと一緒に水族館に入ったは良かったものの、あまりに楽しすぎて尾行を忘れてしまい、後半は普通に二人で遊んでいたらしい。

「それで、それの何が大変なの?」

「話しはここからなのよ……」

「ここから?」

「えぇ……別れる間際……栗原君から……」

「から?」

「なんか……告白? みたいな事をされた……」

「ふーん……告白ねぇ……って、え!?」

私はその話を聞いた瞬間、思わず持っていたコップを落とし掛けてしまった。

「こ、告白されたの!? 栗原君に!?」

「た、多分……」

「多分って……そんな遠回しな感じで言われたの?」

「えっと……『好きなんだ! 白戸さんの事が!』って言われたわ」

「それは『みたい』じゃなくて確定よ! え? そ、それでなんて答えたの!?」

私は自分が興奮している事を理解していた。 栗原君は私も昔から知っている。
人当たりも良いし、ルックスも校内では一番と言われている。
性格の良さも知っているから、私は芽生と栗原君はお似合いのカップルだと思った。

「いや……あの……逃げ……ちゃった……」

「は?」

「そ、その……なんか思わず……」

「な、何してるのよ!! きっと栗原君きっとショック受けてるわよ!」

「や、やっぱり?」

「そうよ!」

至急会いたいって言うのはこういうことなのね……。
きっとどうしたら良いのか分からなくなって、私に相談してきったて感じね。

「もう、立場が逆だったらって考えなさいよ」

「そう言われても……私恋ってしたことないし……分からないし……」

「そうだと思うけど、何も言わずに逃げるなんて」

「た、確かにそうだけど……」

いつもの芽生とはなんだか様子が違っていた。
なんだか弱々しい感じで、いつものような堂々した雰囲気を感じない。

「んで、どうするの?」

「どうって?」

「だから、栗原君と付き合うの?」

「そ、そんな事言われても……」

あぁ、なんか立場が逆になった気分。
私も湊斗と別れたばっかりの時、芽生にいろいろ言われたっけ。

「好きじゃ無いの?」

「好きとか好きじゃ無いとか以前に……栗原君をそう言う目で見たこと無いから……」

「まぁ、初恋もまだだもんね」

そんな芽生にこんな質問をしても仕方ないか……。

「じゃあ、栗原君が他の女の子とデートしたり、一緒に居たりするところを想像してみて」

「え? う、うん……」

「どんな気持ち?」

「うーん、後ろをこっそり付けて行って、後でからかいたい気持ち」

「あぁ……芽生らしいわね……」

ダメだ。
芽生は多分、栗原君に恋愛感情を抱いてはいない。
恋愛感情を抱いているのであれば、少しはヤキモチを焼くはずだ。

「あ、でも……」

「ん? でも?」

「なんか……一緒に帰れないのは……嫌かも……」

「え?」

ん?
もしかしてこれって……脈が無い訳でも無い?

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