今日からフリーになりまして

Joker0808

第53話

「好きなんだ! 白戸さんの事が!!」

「え………」

そう言った瞬間、僕の目の前に居る彼女の顔が見る見るうちに赤くなって行った。
そして、彼女はそのまま僕を残して去って言った。

「……言っちゃった」

僕はそこからどうやって家に帰ったのかを覚えていない。
答えを聞かないまま、白戸さんは言ってしまった。
急にあんなことを言ったのだ、気が動転してしまったのだろう。
後悔もあったが、今はなんだかスッキリした気分だった。
僕は家に帰った後も白戸さんのあの表情が忘れられなかった。





翌日、俺は直晄と共にファミレスに来ていた。

「「はぁ……」」

二人でため息を吐きながら、注文したポテトを食べていた。
しかし、なんで直晄までため息を?
あいつも何か話したいことがあるって言ってたけど……何があったんだろうか?

「はぁ……それでデートはどうだったの?」

「え? あぁ……まぁ……上手くはいったけど……」

「結局どっちか決められ無いって落ちか?」

「……ま、まぁ……そうなるな……」

「だと思った……湊斗はそういう奴だよ」

「決めなきゃとは思ってるんだけど……正直どっちも良い奴なんだよな……」

「それは何? 断るのが申し訳ないって事?」

「あぁ……」

「でも、早く答えを出したほうが良いよ……二人の為にも、振られる方も早いほうが良いだろうし」

「そうか……」

連休明けの学校で俺は二人の告白の返事を出来ればと思っていた。
直晄の言うとおり、早く答えを出した方が、二人には良いのかもしれないと思ったからだ。
「んで……おまえはどうしたんだ?」

「うん……実は昨日ちょっとね……」

「何かあったのか? こっちも色々あったけど……」

「あぁ……実は思い切って白戸さんに告白してさ……」

「へぇ、そうなのか………って、え!?」

「ん? どうしたの?」

「いや、何さらっと言ってるんだよ! お前今結構重要な事を言ったぞ!」

「まぁ……昨日の今日で少し心の整理が着いたからさ」

「いや、理由になってねーよ!」

驚いたな……まさか俺と藍原がデートをしている裏でそんな事態になっていたなんて……。
俺は直晄から昨日の出来事を聞いた。

「マジか……」

「なんか、言っちゃった……」

「言っちゃったってなんだよ」

「うん……でも正直なんかスッキリしたよ……ずっと言えなかったから……」

「……そうか……良かったな」

「うん……まぁ、答えがどうなるかわからないけど」

「……やっぱり……待ってるのは辛いか?」

俺は直晄にそんな質問をしていた。
告白の返事を待っている直晄と、告白の返事をする俺は対照的な位置に立っている。
だから俺は、返事を待っている方の意見を聞いてみたかった。

「あぁ……辛いって言うよりは……なんか、合格発表を待ってるみたいな感じかな? ソワソワして落ち着かない感じ」

「なるほどな……」

俺も早く答えを出さなくてはいけない。
この一ヶ月が、俺には一年にも近い凄く長い期間に感じる。

「さて、今日はどうする? 解散して一人で悩むかい? それとも僕とボーリングでも行くかい?」

「じゃあ、ボーリングで」

「そう言うと思ったよ」

俺と直晄は席を立って、そのままボーリング場に向かった。





「いらっしゃいませー」

ゴールデンウイーク前半、私は家の手伝いで、今日はパン屋のレジに立っていた。

「由羽! 休憩行ってきなさーい!」

「は-い!」

母親にそう言われ、私はパートのおばさんとレジを変わり、奥の休憩室に向かう。

「はぁ……疲れた」

私は休憩室でそんな事を呟きながら、付けていたエプロンを外して昼食を食べ始める。

「……湊斗、何してるかな?」

ふと、私はそんな事を考える。
昨日は楽しかった。
久しぶりに時間が過ぎるのが早いと感じた。
「あんな事は言ったけど……」

私じゃなくて、清瀬さんを選んでとは言ったものの、湊斗から直接振られるまでは諦めがつかないと言う本音もある。

「……はぁ……でもまた付き合って、また喧嘩ばっかりになるかもしれないし……やっぱり清瀬さんの方が良いよね……」

誰かから聞かれている訳でもないのに、私は何を言っているのだろうか……。
私がそんな事を考えながらご飯を食べていると、スマホに誰かからメッセージが送られてきた。

「ん? 芽生から? どうしたのかしら……」

私はスマホのロックを外して、メッセージを確認する。

【相談 有り 至急 連絡】

「なにこれ?」

送られてきていたのは、単語が四つだった。 とりあえず、至急連絡が欲しいのは分かったけど……何かあったのかな?
でも、あと一時間くらいで戻らないといけないし……。

「由羽!」

「ん? 何、お母さん?」

「あんた、今日はも上がって良いわよ。今日はそんなに忙しくないし」

「え? 良いの?」

「えぇ、お父さんが最近、誰かの影響で凄いやる気出してるから、仕事が早いのよ。だから余裕があるからアンタは遊びにでも行ってきなさい」

「あぁ……そう言うこと」

          

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