今日からフリーになりまして

Joker0808

第39話

「まぁ、そうは言われてもな……で、どうだ?」

「ど、どうって……何が?」

「だから……その……デートの件だよ……」

藍原は顔を真っ赤にしていた。
てか、俺はなんで今更藍原をデートに誘うのにこんなに緊張しなきゃ行けないんだ……。 それもこれも藍原がこんな顔するから……。

「べ、別に良いけど……な、何するの?」

「い、いやそれはまだ考えてなくて……どこか行きたいところとかあるか?」

「そ、そうね……か、買い物とか……」

「そ、そうか……じゃあそうするか……」

「う、うん」

「しょ、詳細はまた連絡するから」

「わ、わかった」

俺はそう言って藍原の元を去った。
はぁ……藍原とデートか……なんか久しぶりだな……。
そんな事を俺は考えながら、教室の自分の席に戻った。

「誘ったのか?」

「ん? あぁ……どうしようかな?」

「何がだ?」

「いや、藍原とどこに行こうかなって……買い物したいって言うし……やっぱりショッピングモールか?」

「良いんじゃ無い? 僕も手伝うから頑張ろう」

「頑張るって……何をだよ……」

俺は直晄にそう言いながらため息を吐いた。 このデートで俺は二人に対しての答えを出そうと思っていた。
頑張るか……精神的に頑張らなきゃいけないかもな……。





放課後、俺が帰ろうと思い鞄に教科書を仕舞っていると、清瀬さんが教室のドアを開けて俺の席にやってきた。

「ねぇ、春山君。今日は一緒に帰れる?」

「え? あ、あぁ大丈夫だけど……」

俺はそう言いながら、藍原の方を見た。
すると藍原は俺と清瀬さんの方をチラチラ見ながら、鞄に教科書を入れていた。

「じゃ、一緒に帰ろ!」

「う、うん。そうだね」

そう言って清瀬さんは俺の手を引いて教室から連れ出そうとする。
すると、突然藍原が席を立って俺と清瀬さんの方に歩いてきた。

「清瀬さん」

「何か用? 藍原さん」

意外にも藍原が声を掛けたのは俺では無く、清瀬さんにだった。

「ちょっと、良いかしら?」

「……良いわよ、私も話したかったから。ごめんね春山君。少しまっててくれる?」

「あ、あぁ……」

清瀬さんと藍原は俺を置いて教室を出て行った。
不穏な雰囲気を感じたのか、クラスの中ではコソコソ噂話が始まっていた。

「修羅場よ修羅場!」

「またあの二人? 春山君一体何をしたのかしら?」

「どっちでも良いけどムカつく!!」

「くそっ! なんで春山ばっかり!!」

好き勝手行ってくれるな……でも、仕方ないのかもな……それよりあいつらは大丈夫だろうか?
俺は少し不安を感じながら二人が帰ってくるのを待った。





「話しって何かしら?」

彼女は微笑みながら私にそう言った。
私は一度しっかり清瀬さんに聞きたかったことがあった。
だから私は彼女を呼んで二人で話しをすることにした。

「清瀬さんは……湊斗の事……好きなの?」

「……えぇ、好きよ……貴方が湊斗と出会うずっと前から……」

「それはどう言う……」

「その前に私も聞きたいわ……貴方はなんで湊斗とよりを戻したいの?」

「……気がついたのよ……私の湊斗に対する気持ちに……だから……私は湊斗と元の関係に戻りたいなんてわがままを言い始めたのよ」

私の湊斗に対する本当の気持ち。
それはただ私が勝手に湊斗を独り占めにしたいと思っていたことだった。
独占したいという欲求は強くて、他の女の子と仲良くしているのを見るのが嫌で……湊斗には文句を言ったり、怒って見せたりしていた。
正直、悪かったのは私だ。
そして気がついた、私はただ湊斗の優しさに甘えていただけなんだって……だから今度は、もっと湊斗の事を考えて付き合いたい。
わたしはそんな自分勝手な事を思っていた。
「キツい言い方をするけど……それって貴方のわがままよね?」

「えぇ……清瀬さんの言うとおりよ……だから私は貴方にちゃんと言っておきたかったの」

「何かしら……」

「……私はもう湊斗と付き合う資格なんてもうない……だから私はもう湊斗に何かを求めたりしない。だから湊斗が貴方を選ぼうと私は貴方を恨んだりしない……でも、私も負ける気は無いわ」

「………勝手な言い分ね」

「それは自分でもわかってるわ……要するに貴方には負けないって事を言いたかったの」

「そう、私も負ける気は無いわ……絶対に」

「話しはそれだけよ、急にごめんなさいね」

「別に良いわよ。じゃあ私はこれで」

「えぇ……」

清瀬さんはそう言うと、教室の中に戻っていった。
私はあの人に勝てるのだろうか?
性格も良くて、美人で……。
あんな事を言ったものの私は不安だった。
湊斗が私じゃ無くて清瀬さんを選んだならと思うと、胸が引き裂かれるような感覚を感じた。

「はぁ……もっと早くに気がついてればな……」

そんな事をいくら考えてももう遅いのはわかってる。
でも……今になってこんなにも後悔するのは、私が本当に湊斗を好きなんだということの証明なのかもしれない……。

「湊斗……」

私は彼の名前を呟き、教室に戻った。

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