今日からフリーになりまして

Joker0808

第34話

「もしもし」

『もしもし? 春山君? バイト終わったの?』

「あぁ、さっきね」

『お疲れ様、大変だった?』

「いや、そうでもないよ」

電話で清瀬さんと話す内容は他愛も無い世間話がほとんどだった。

『それでその駅前のケーキ屋さんが美味しくてね……』

「へぇ~、俺も行ってみようかな?」

『……ねぇ、春山君……』

「何? どうかしたの?」

『映画……楽しみだね』

「ん? あぁ、そうだな……どうかした?」

『……いや……別に……て言うか、ただの私のわがままなんだけどさ……』

「うん」

『……なんか、最近藍原さんと仲良いから……ちょっとヤキモチ』

「そ、そっか……でも、俺はもう藍原とは……」

『わかってるよ、でもさ……好きな人が元カノと一緒にバイトしてるって……結構不安なんだよね……』

まぁ、そうだよな……。
俺はスマホ越しに清瀬さんの声を聞きながらそう思っていた。

「大丈夫だよ、俺と藍原はもう……」

『うん……そうだよね! ごめんね、変な話しして』

「いや、良いよ。大丈夫」

『もう遅いし、そろそろ電話切るね。ごめんね疲れてるのに』

「いや、俺も清瀬さんと話したかったし、全然良いよ。じゃあまた明日学校で」

『うん、じゃあね』

清瀬さんはそう言い終えると、電話を切った。
俺はスマホを机の上に置き、大きく伸びをする。

「はぁ~! 俺も寝るか……」

時刻は23時を少し過ぎたくらいの時間だ。
明日も学校だし、早めに寝ようと思い、俺はベッドに横になる。

「不安になるか……」

俺は清瀬さんの言葉を思い出しながら、目を瞑った。
清瀬さんの気持ちを知っているからこそ、俺は藍原と仲良くすることに疑問を抱き始めていた。
藍原との関係は良好になりつつある。
しかし、そのせいで清瀬さんが不安になるのはどうなのだろうか?

「俺と藍原は……終わったんだ……」

俺はそう自分に言い聞かせながら、布団を被り眠りに落ちた。





「はぁ……困らせちゃったかな?」

私、清瀬彩葉は先程まで電話していた春山君の事を考えながら、そんな事を呟く。

「……藍原さん……多分まだ春山君の事……」

ライバルの名前を呟きながら、私は春山君の事を考えていた。
私と元カノ、春山君はどっちを選ぶのだろう?

「もう……絶対に負けない……」

そう、もう出遅れる訳にはいかない。
絶対春山君を渡す訳にはいかない。
私はそんな事を考えながら、ベッドに横になる。

「映画デートが勝負ね……」

私はそんな事を考えながら、スマホで映画館周辺のデートスポットを調べ始めた。

「藍原さん……手強いもんなぁ……」

私はそんな事を考えながら、スマホを操作する。





「はぁ~あ……眠いなぁ……」

「どうしたの? 二日バイトして疲れた?」

「あぁ、まぁ……そんな感じ」

学校の昼休み、俺は直晄と話しをしていた。 直晄は相変わらず、昨日のバイトの事が気になる様子で、俺にしつこくバイトの話しを聞いてくる。

「そう言えば、藍原の親父さんからこれからも店で働かないかって誘われたな……」

「へぇー! じゃあ結構気に入られてるんだ!」

「まぁ……そうなんじゃね?」

「これはもう藍原さんと結婚するしか……」

「なんでそうなるんだ」

「イデッ! 殴らないでよ……」

「お前が変な事を言うからだ!」

俺は直晄の頭にチョップをお見舞いする。
まったく……こいつは何回言ったらわかるんだか……。

「はぁ……どうしようか……考えててな」

「まぁ、そうだよね? 元カノの家でバイトって、結構気まずくない?」

「本当だよ……でも、作業もそこまで大変じゃないし……時給も割と良いし……」

これから何かと金が必要になるし、バイトをして損は無い。
しかも、面接も履歴書も不要でやっとってくれるバイト先がある。
こんないい話は無いのだが……。

「問題が大きすぎるんだよなぁ……」

「だから、よりを戻せば全部解決じゃない?」

「それが簡単にいくわけないだろ?」

「湊斗は本当に藍原さんの事はもう……」

「……もう終わった話だ」

俺は直晄にそう言って、会話を中断した。
直晄の質問に俺は多分どう答えて良いかわからない。
好きなのか、嫌いなのか……今じゃ自分が藍原にどんな感情を抱いているのか、まったくわからない。
可愛いと思うことももちろんある、だが付き合って居た頃の藍原を思い出すと、よりを戻してもまた直ぐに別れるような気がしてならなかった。

「……直晄」

「何?」

「もう、藍原と俺の関係について……何も聞かないでくれ」

「え?」

「俺と藍原はもう別れたんだ……よりは戻らない。言い切っておくよ」

「……本当かな?」

俺がそう言うと、直晄は笑いながら俺にそう言った。

「それより、今度のゴールデンウイークは清瀬さんとデートだろ?」

「あぁ、資金も手に入ったし、今日は帰り
に服でも見ていこうかな……」

「じゃあ、久しぶりに僕と帰るかい? 服の相談くらい乗るよ」

「おう、じゃあ頼むわ。俺はそういうの良くわからないし」

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