今日からフリーになりまして

Joker0808

第28話

「アンタどうしたの?」

「え? 何が?」

「なんか、いつもより元気が無いっていうか……いつもの由羽じゃないみたいって言うか……」

私がそう言うと、由羽は顔を上げて話し始めた。

「なんか……最近……モヤモヤするって言うか……あいつの事ばっかり考えてるっていうか……」

「それは見てればわかるわよ。で、何が言いたいの?」

「いや……だから……なんて言うか……」

私が由羽にそう尋ねると、頬を赤く染めながら口ごもってしまった。
なんとなくだけど、私はこの子が何を言いたいのかわかる気がした。
だから私は由羽の変わりにその答えを口にする。

「どうせ、まだ好きなんでしょ」

「……まぁ……うん」

ようやく認めた……。
私は深いため息を吐く。
すると由羽は顔を真っ赤にして話し始めた。
「し、仕方ないでしょ……なんか……モヤモヤするんだもん……」

「はぁ……なら、今からでも言えば良いでしょ? 電話でも春山君の家に行ってでも」

「い、いや……それはなんか図々しいじゃない……私が振ってる訳だし……」

「まぁ……確かにそれはあるわねぇ~」

ま、多分春山君はそんな事気にしないと思うけど、この子は少し自分の独占欲の強さを自覚しないといけないし……少し意地悪しちゃおうかしら。

「春山君、今度アンタの家にバイトにくるんでしょ? じゃあその時ほまた惚れさせれば良いでしょ?」

「そ、そんなの……どうすれば良いかわからないわよ……」

「じゃあ、正直に言うしかないわね、やっぱり好きですって」

「ん……そんな事……言っても良いのかな?」

「私は正直に言うのが一番だと思うけど、でも春山君がそれにどう答えるのかはわからいわ。必ずしも元カノだからって良い答えが貰えるわけじゃないし」

「そ、そうよね……」

ま、そんな訳は絶対に無いけど……だって春山君、絶対に由羽の事まだ好きだもん。
だから直ぐに清瀬さんと付き合わないんだろうし。
まぁ、こう言って脅しでもしないと、また付き合っても、この子がわがまま言って春山君が愛想尽かす可能性もあるし……今回は由羽に頑張って貰わないとね。
私はそう思いながら、注文したアイスコーヒーを飲む。

「……ちょっと……頑張ってみる」

「そう……なら私も応援してあげる」

「いつもありがとね」

「と言うわけで、まずはこちらをご覧下さい」

「え?」

私はそう言って由羽の目の前に自作の資料を出した。

「な、なにこれ?」

「アンタが春山君とよりを戻す為のプランよ」

「ぷ、プラン?」

「まずはこの資料からね」

「し、資料?」

「まずはアンタの武器を確認しておきましょうか」

「あ、あの……さっきから何を……」

「アンタは春山君とよりを戻したくないの?」

「い、いや……戻したいけど……」

「じゃあ、真面目に聞きなさい!」

「は、はい!!」

私は由羽に栗原君にした説明と同じ説明をした。





今日は何かがおかしい。
そう思ったのは登校してから間もなくだった。

「お、おはよ……湊斗……」

「お、おう……おはよう」

「ね、ねぇ……今日、お昼……一緒に食べない?」

「え? あ、あぁ……良いけど……」

朝から藍原には飯に誘われるし……。

「ねぇ、春山君。映画の日、終わったら私の家に来ない?」

「え、別に良いけど……それより買い物とかの方が楽しいんじゃ……」

「ううん、家に来て欲しいなって……ダメ?」

「いや……全然良いけど……」

清瀬さんはなんかいつも以上に積極的な気がするし……。
ボディータッチも多いし……。

「なぁ湊斗、藍原さんあっちにいたぞ」

「なんで俺にそんな事を言うんだよ」

「あ、春山君。由羽ならあっちに居たわよ」

「なんだ白戸まで……」

直晄や白戸さんはニヤニヤしながらそんな事を度々言ってくるし……。
なんなんだ?
俺は違和感を感じていた。
なんだか周りの皆の様子がおかしい。

「なぁ、朝からなんなんだよ」

「え? 何の事だ?」

俺は気になり、休み時間に直晄に聞いてみた。

「とぼけるなよ、何を企んでるんだ?」

「別に何も企んでないけど」

「嘘つくな! お前も白戸もおかしいだろ!」

「そうかな? あ、そう言えばさっき藍原さんがトイレに……」

「もう良いよ! なんで藍原の位置情報をいちいち報告して来るんだよ!」

「いや……別に何も……」

「嘘つくな! なんかあからさま過ぎるんだよ!」

「いや、本当に何でもないよ。湊斗こそ、今日は僕じゃなくて藍原さんとご飯食べてたじゃん」

「そ、それは誘われただけだよ……」

「仲よさそうだったけど、何を話してたの?」

「今日のバイトの話しだよ、変な話しなんてしてねーよ」

「ふぅ~ん……良かったじゃん、また藍原さんと仲良く出来て」

「ま、まぁ……嫌み言われたり、喧嘩したりよりは良いけど……」

「けど?」

「なんかいきなりあぁ言う態度で来られてもな……なんか裏があるんじゃないかって思っちゃって……」

「……なるほど……」

「何がなるほどなんだ?」

「別に、それより今日のバイト頑張ってね」

「お、おう……」

なんだか上手くはぐらかされてしまった気がする。

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