今日からフリーになりまして

Joker0808

第23話




私は家に帰り、機種変したスマホにケースを付けていた。

「はぁ……あいつ……なんであんなにいっぱい種類あったのに同じの選ぶのよ」

私はそんな事を言いながら、思わず笑みを浮かべる。
さっきは楽しかったなぁ……なんか久しぶりに湊斗と笑ったかも……。
……明日からは、湊斗の隣は清瀬さんになるんだ……。
私はそんな事を考えながら、湊斗の隣に清瀬さんが居る姿を想像してしまった。
なんでだろう……なんでこんなに胸が痛くなるんだろう。

「あいつ……優しかったな……」

今日一日湊斗は私に優しくて、話しも面白かった。
なんだか、私がなんであいつと付き合ったのか少し思い出せた気がする。

「そうだ……あいつ……普段は結構優しいのよね……」

私が何を言ってもあいつは文句を言いつつも私の為に色々な事をしてくれた。

「……私……あいつの何が不満で怒ってたんだろう……」

私は徐々に何故自分が湊斗の事をあんなに嫌っていたのか、わからなくなってきた。





翌日、俺がいつものように登校すると、俺の席に周りが騒がしかった。

「なんか、昨日由羽が電話で機嫌が良かったのよ」

「そうなの? 何か良いことでもあったのかな? そう言えば湊斗一緒に帰ってたけど」

明らかに棒読みだった。
こいつら……俺と藍原が一回一緒に帰ったくらいで、俺たちがよりを戻したみたいな感じで話しをしてやがる……。
俺は無言で席に近づき、話しをしていた直晄と白戸を見る。
そして、とりあえず直晄の頭を叩いた。

「いてっ!! な、なんだよいきなり!」

「うるせぇ! 何わざとらしく話ししてんだよ!」

「そ、そんな事は無いよ! 何を言ってるの?」

「目が泳いでるぞ」

俺はそんな事を言いつつ、自分の机の上に鞄を置き、教科書を出して引き出しに入れる。
「じゃあ、ぶっちゃけ聞くけど、昨日はどうだったの? 由羽と一緒に帰ったんでしょ?」

「別に普通だよ。少し話したけど……」

「本当にぃ~何かあったんじゃないの?」

「別にねぇーよ」

俺は白戸にそう言いながら、昨日の事を思い出す。
まぁ、別に何も変わった事なんてなかったよな?
まぁ、強いて言うなら……昨日は一切喧嘩しなかったな……。

「そう言えばあいつとスマホの機種変に行ってさぁ-」

「「はい!?」」

そう言った瞬間、白戸と直晄の二人が話しに凄い食いついてきた。
なんだ?
別に俺、おかしいことなんて言ってないよな?

「ねぇ、なんで! なんでそうなったの!?」

「い、いや……俺が行くって話したら、藍原も機種変するからって……」

俺がそう説明すると、白戸と直晄はニヤニヤと笑い始め、コソコソ話し始めた。
てか、ニヤニヤしながらこっちを見るな! 腹立つ!

「これって脈ありなんじゃない?」

「そうね、もうよりを戻すのも時間の問題って感じね」

「おい、勝ってに話しを進めるな。なんども言ってるけど、それはねぇよ……」

「「えぇ~ないのぉ~、本当ぉ~」」

「本当だよ!!」

なんなんだこいつらは……。
てか、こいつらなんでこんなに仲良いんだよ!
俺がウザい二人の友人にイライラしていると、今度は教室のドアから清瀬さんが入ってきた。

「あ、春山君、おはよう」

「あ、おはよう清瀬さん」

清瀬さんは相変わらずの可愛らしい笑顔で俺の机に駆け寄ってきた。

「ねぇ、昨日の話しなんだけど」

「あぁ、映画だよね? 何を見るの?」

「私これが見たいんだけど、一緒に行ってくれる?」

そう言って清瀬さんは俺に、スマホの映画情報サイトを見せてきた。
そこには、現在放映中の大人気ドラマの劇場版の広告が乗っていた。

「あ、このドラマの映画か……」

「うん、ドラマのストーリーを映画サイズにまとめた映画オリジナルだから、ドラマ見て無くても大丈夫だよ」

「これ、母さんが見てたんだよ、面白いって言ってたから気になっててさ」

「ホントに! じゃあいつ行こうか?」

「それはそっちに合わせるよ、どうせゴールデンウイークなんてやることないし」

「えぇ~なにそれ、折角のお休みなんだよ?」

「いや、暇人だからさ。だから清瀬さんが良い日で良いよ」

「じゃあ、ゴールデンウイークの初日が良いな!」

「おう、わかった」

「うん。あ、そろそろ時間だね。じゃあ私教室に戻るから」

「おう、じゃあね」

「うん」

そう言って清瀬さんは教室を後にした。
清瀬さんと話しをしている間、直晄と白戸は完全に空気だったのだが、清瀬さんが居なくなった瞬間、二人は先程までのニヤニヤした表情から一変、真面目な表情になり俺に質問をしてきた。

「湊斗、どういうこと? 清瀬さんと映画に行くの?」

「お、おう……誘われたし」

「由羽が居るのに!?」

「だから、俺たちは別れてるの!」

「「浮気者……」」

「なんでだよ!!」

二人はジトーっとした目で俺の事を見ると、冷たい視線を向けたまま自分達の席に戻って行った。

「まったく……何なんだよ……」

俺は二人に文句を言いながらスマホを取り出し、ゲームを始めようとする。
しかし、またしても俺の席に誰かがやってきた。

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