今日からフリーになりまして

Joker0808

第15話

帰りの車の中で、母さんは俺に色々と聞いてきた。

「何、漫画の主人公みたいな事してるのよ。こっちは心配したわよ」

「ごめん」

「まぁ、喧嘩とかじゃ無いから良いけど、親は子供が怪我したって言われたら心配なのよ」

「あぁ、うん」

「はぁ……何? 助けた子って知ってる子だったの?」

「まぁ……ちょっとね……」

まさか元カノなんて言う訳にはいかないしな……。
俺は藍原の事を車の中で考えながら、自宅に到着するのを待った。
藍原は大丈夫だろうか?
あいつ、性格はあぁだけど可愛いからな……狙われるのも無理も無いか……。
俺はそんな事を考えながら、自宅の自室に真っ直ぐ向かい、ベッドに倒れ込んだ。
今日は疲れた。

「はぁ……疲れた」

声に出すと同時に俺はベッドの上で大きく伸びをする。

「はぁ……まぁ、あの状況じゃ仕方ないよな……」

俺は先程の事を思い出しながら、藍原の事を考えていた。
あいつ……怖かっただろうなぁ……。
大丈夫だったか連絡してみるか……清瀬さんにも今日急に帰れなくなった事を謝りたいし。
俺はそう思い、バックに入れていたスマホを取り出す。
しかし……。

「げっ! 画面バキバキじゃねーか……うわっ……マジかよ最悪……」

俺が咄嗟に鞄を投げ捨てたのが悪かったのか、俺のスマホは見るも無惨な姿になっていた。
画面はバキバキに割れ、タッチパネルが機能しない。
ボタンは反応するので、液晶だけが壊れたのだと思うが……。

「はぁ……明日ショップ行くか……母さんに委任状も書いて貰わないと」

俺はスマホを机に置いて、ため息を吐きながら母さんに事情を説明し、機種変の許可を貰う。
はぁ……バックアップとか取れるのかな?
俺のソシャゲのデータ……。





『藍原!!』

私が連れ去られそうになった時、私を救ってくれたのは、別れたはずの彼氏だった。

「……湊斗」

私は自室のベッドで天井を見上げながら、今日の出来事を考えていた。
いきなり男の人に車に乗せられそうになり、私は恐怖を感じていた。
そんな時、湊斗の声がした。
見ると、湊斗が走って私の元まで駆け寄り、私を助けようとしてくれた。
必死で私の腕を掴み、私を助けようとしてくれた。
湊斗が来たとき、私は自然と安心していた。 でも、湊斗が殴られた時、私は湊斗を心の底から心配した。

「……大丈夫だったかな……」

私は警察に少し事情を聞かれ、後日詳しく話しを聞かせて欲しいと言われ、今日は帰ることになった。
怖い思いをしただろうからと、一日ゆっくり休んで欲しいということらしい。

「あいつ……頭から血出てたし……」

私は湊斗の事が心配になり、湊斗に久しぶりにメッセージを送った。

【今日はありがとう。頭大丈夫だった?】

大丈夫かしら?
可笑しな事書いてないわよね?
私は文章を見返して、変なところが無いかを確認する。
大丈夫よね?
変じゃないわよね?
そんな事を考えていたら、文章を作成して送信するのに十分も掛かってしまった。

「はぁ……なんでこんな緊張してんだろ……」

私はそんな事を考えながら、湊斗からの返信を待つ。

「あいつ……本当に大丈夫よね?」

私は湊斗が病院に行っている間に、両親が迎えに来たので、湊斗の怪我の具合について何も知らない。
私のせいで怪我をしたようなものだし、怪我の具合が気になる。

「……あの馬鹿……何格好つけて無茶してるのよ……弱いくせに……」

あいつがそういう奴だってことは、昔から知っている。
誰に対してもそうなのだ。
そんなあいつを……私は……。

「あぁぁぁ!! 何考えてんのよ私!! もう……終わったじゃない……」

私は自分にそう言い聞かせる。
そうだ、もう湊斗と私は終わったんだ。
一回助けられたくらいで、私の決心は揺らがない!
そう私は自分に言い聞かせる。
でも、湊斗が助けてくれたのは事実だし、ちゃんとお礼は言わないとね……。

「あいつ……本当に大丈夫かな?」

あれから数分経つのに、湊斗の奴既読も付かない……。

「も、もしかして……入院とかしてないわよね?」

私はそんな事を考えながら、湊斗からの返信を待つ。
しかし、待てども待てども湊斗からの連絡は無いし、既読も付かない。

「もう! なんなのよ! 私が折角心配してあげてるのに!」

結局、私は一晩中湊斗の返信を待っていた。




朝、俺はベッドから起きて体のだるさを感じた。

「あぁ……昨日の疲れが残ってる感じがする……」

昨日は色々な事があり過ぎて疲れたし、一日で疲れが取れるわけないか……。
俺はそんな事を考えながら、準備を済ませて学校に登校する。
教室に着くと、クラスの皆の視線が俺に集中した。
原因は恐らく頭に巻いた包帯だろう。

「おい、あれ!」

「うわ……まじかよ……これが修羅場ってやつだな」

「三角関係の縺れね……怖いわ~」

「やったのは藍原かな?」

なんかクラスメイトがコソコソ話しをしていたが、多分勘違いだと思う。


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