隣の部屋の裸族さん

Joker0808

第27話

「リア充は死ねば良い……」

「例え彼女が出来てもお前には絶対言わない」

最悪のスタートでクラス研修はスタートした。





研修場所はバスで一時間ほどの宿泊施設だ。
隣にはキャンプ場もあり、小学生の宿泊研修などにも良く使われるらしい。

「結構綺麗な宿泊施設だな」

「あぁ、山奥ってのが良いよな……遺体を隠せる」

隣の友人は俺を亡き者にしようとしている。

「空気なんかもよさそうだな」

「そうね……山奥なら人目に付かない場所も多いでしょうし……」

後ろの席のもう一人の友人は、人目のつかない山奥で何かいかがわしい事を考えているし……はぁ……なんか本当に嫌になって来たな……。
あの後、俺は朝の八島との一件をなんとかごまかし、クラスメイト達の質問攻めから逃れた。
しかし、まだ信じていない奴も多く、強は周辺の地理をスマホを使って調べ、どこなら俺を殺しやすいかを考えている始末だ。

「はぁ……強、言っておくがな、俺と八島はそんな関係じゃないぞ」

「黙れこのリア充が! 例えお前と八島さんが付き合っていようとなかろうと、手を繋いで登校なんてした時点でお前は俺の敵なんだよ!」

「心狭すぎだろ……」

「大体、お前この間は上屋敷さんと一緒にデートしてったんだろ!?」

「あれはただ偶然……」

「なんでお前だけそんなモテるんだよ! 俺なんか画面の中でしかモテないのに!!」

「ガチ泣きしながら言わんでくれ……」

「友人に彼女が出来たくらいで嫉妬する男なんて嫌に決まってるじゃない?」

「早乙女、お前は何目線で話してるんだ?」

「くそっ! なんで俺はモテないんだ! あんなに練習してるのに……」

「強、知ってるか? 恋愛シュミレーションゲームはリアルの恋愛には応用出来ないんだぞ?」

「な、なんだと!? 恋愛シュミレーションゲームなのにか?」

「リアルに金髪の転校生とか同じクラスにアイドルとか、生徒会長がすげー美人なんて学校が存在すると思うか?」

「そ、そういえば……クソッ! 俺は騙されていたのか!」

「いや、メーカーも別に騙してはいねーよ」

強は驚愕の真実を聞いたかのように驚いていた。
そして驚きつつもスマホの恋愛シュミレーションゲームのアプリを起動する。

「じゃあ俺は二次元でしか生きられないという事か……」

「お前が生きてるのは三次元だぞ」

「うるさい! もう知らん! 俺が幸せなら何次元でも良いんだよ!!」

強はそう言って、スマホの課金の決済ボタンを押して、ゲーム内の彼女にプレゼントを贈っていた。
まぁ、恋愛の形は人それぞれだとは思うが、友人として少し心配だ。

「なぁ、早乙女」

「何? お菓子でも食べる?」

「いや、良い。強はなんでこんな馬鹿なのかなと思って」

「そんなの今に始まった事じゃないでしょ?」

「まぁ、それもそうだな」

「男なんてみんな……馬鹿な生き物よ」

「一応言っておくが、お前もその馬鹿な生き物だからな」

話しているうちにバスは目的地に到着した。

「う、うぅ~ん! はぁぁぁ~! いい天気だなぁ……」

ずっと座っていた俺は大きく体を伸ばす。
山の空気は美味しく、天候にも恵まれた最高のロケーションだった。
俺たちは早速、今日自分達が泊まるテントの設営に入った。
男子と女子で設営場所は少し離れており、班のみんなで協力して男子と女子のテントを立てることになっている。

「さて、じゃあ始めるか」

「まずは……この支柱を伸ばしてテントの中に通すのか……」

「じゃあ私たち女子は見てるから、あとは二人で頑張ってぇ~」

「「お前も男だろ!!」」

早乙女にそんなツッコミを入れながら、俺達の班はテントの設営を始めた。

「木川君」

「ん? どうした高石?」

テントの設営中、俺は同じ班の高石に呼ばれた。
高石も横川同様にあまり話をしたことの無いクラスメイトだ。
おっとりとした雰囲気の彼女はビニールシートを持って俺に言う。

「テントの下にビニールシートを敷くの手伝ってくれる?」

「あぁ、良いぞ」

俺は高石を手伝い、ビニールシートを広げる。

「ねぇ、聞いても良いかな?」

「ん? なんだ?」

「木川君って……八島さんとは本当に何もないの?」

「え? 無い……けど?」

「付き合ってるて話以外も?」

俺は高石さんのその問に一瞬ドキッとしてしまった。
付き合ってるいる話以外とはどういう意味だろうか?
もしかして、高石さんは俺と八島の関係を知っているのだろうか?
しかし、そんなはずはないはずだ……。
高石さんとはあまり話さないし、このクラス研修で同じ班にならなければ会話すらしなかったかもしれない。
俺の考え過ぎだろうか?

「付き合ってる以外? 一体何の事? 俺と八島は今朝たまたま一緒になっただけだよ」

「そっか……災難だったね」

「あ、あぁ本当にな……」

「私、ずっと八島さんって話しかけづらい人なのかと思ってたんだけど……なんか最近の八島さんを見てると全然そんな事無いのかなって思えてきて……それってもしかして木川君のおかげなのかなって思っちゃって、ごめんね変な事聞いて」

「あ、あぁそう言う事か……別に大丈夫だよ」

俺は高石さんのその話を聞いて少しほっとしていた。
なるほどそう言う事か……考えてみれば、教室内で八島と話をするのは俺くらいのもんだし……。

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