隣の部屋の裸族さん

Joker0808

第13話

「もう私達親友でしょ!」

「出会って数週間で親友は無い」

「酷い!!」

「あらあら、本当に仲が良いのね」

「どう見たらそうなるんだ……」

「これ以上二人の邪魔をするのもアレだし、私はこれで失礼するわ」

「師匠! それじゃあまた!」

「えぇ、またね。今度はしっかりメイクしなさい」

早乙女は上屋敷にそう言うと、そのまま店を後にしていった。

「面白い人だね、師匠って!」

「なんで師弟関係は出来てんだよ」

色々ツッコみたいところはあるけど、何も無くて良かった。
上屋敷も早乙女を軽蔑したりしない奴で良かった。
結構こいつは良い奴なのかもしれないな……。
僕は店で鞄を購入し、上屋敷と共に店を後にした。

「買い物はこれくらいだな、じゃあ俺はこれで」

「待った!」

「ん? なんだよ」

「木川君、引っ越したんだね?」

「そうだが?」

「行ってみたい! 今から言っても良い?」

「絶対ダメだ」

こいつは急に何を言っているんだ。
てか、今俺の部屋には八島が寝てるんだ、絶対に家になんて上げられるか!

「えーなんでー! 私帰っても暇なんだもん」

「知らん、それに俺は今一人暮らしだ」

「本当!? 良いなぁー! てか、尚更行ってみたくなった!」

「おまえなぁ……一人暮らしの男の部屋だぞ? 危機感とか感じないのか?」

「まぁ……木川君だし」

「どう言う意味だ。それとその半笑いはなんだ!」

こいつにとって俺は一体なんなんだ。
しかし、ちゃんと断らないと本当についてきそうだな……。

「良いじゃん! 別にエッチな本とか探さないから!」

「そもそも持ってない」

「大丈夫だから! 何もしないから!」

「それは本来男の台詞だ」

「良いじゃん、なんでダメなの?」

「引っ越したばっかりで散らかってるんだ」

「私は気にしないよ!」

「客を呼べる状態じゃないんだ」

「じゃあ片付け手伝う!」

「なんでそこまでして来たいんだよ……」

「暇だから!」

「じゃあ、一人でカラオケでも行け、俺はこれからやる事があるんだ」

「見捨てるなよぉ~私にか~ま~え~」

「やめろ! 引っ張るな!」

帰ろうとする俺の服を掴んで話さない上屋敷。
子供かよ……。
俺はそんな事を思いながら、強引に上屋敷を振りほどく。

「あっ!」

「んじゃぁな、暇なら他を当たれ」

「う~薄情者ぉ~!!」

後ろから聞こえる上屋敷の声を無視して、俺はその場を後にする。
危ない危ない、今上屋敷に来られたら面倒なことになる……。

「これからも気を付けないとな……」

俺と八島の関係は誰にも話していない。
バレたらクラスの男子達に半殺しにされそうだし……。

「当分は誰も部屋に呼ばないようにしないとな……」

八島とは反同棲みたいな感じになってるし、部屋に誰かを呼んでボロが出たら大変だ。

「はぁ……なんだか疲れたな……上屋敷もげんきだよなぁ……」

「そうかな? 私はいつもこうだよ?」

「そうかよ………ん?」

自分のマンションの前まで来た時だった。
一人事のはずなのになぜか返答が帰ってきた。
俺は不審に思い、声の方に振り向いた。

「やっ!」

「なんで付いて来てんだよ!」

声の方には上屋敷がいた。
まぁ、声でなんとなくそんな気はしていたが……。
てか、こいつここまで付いてきたのか!?

「お前なんでここに居るんだよ……」

「暇だったから尾行した!」

上屋敷は親指を立てて俺にそう言ってきた。 こいつの親指折ってやろうか……。

「おまえなぁ……さっさと帰れよ」

「ここまで来たのに?」

「はぁ……お前まさか……このまま部屋まで付いてくる気か?」

「もちろん!」

「胸を張って言うな……はぁ……仕方ない、少しまってろ」

このままだとこいつは帰らなそうだし、家から八島を追い出しておくか……。
俺は上屋敷を玄関ホールで待たせ、自分の部屋に戻る。

「おい、八島居るか?」

「……ん~……何?」

「まだ寝てたのかよ……まぁ、だろうと思ったけど」

「………おかえり」

「あぁただいま。悪いが直ぐに自分の部屋に戻って貰えるか?」

「ん……良いけど……まだ……目……覚めない……」

「良いから、早く頼む!」

「う~ん……乱暴者ぉ……」

俺は寝ていた八島を起こして、自分の部屋に戻るよう言い、無理矢理八島を自分の部屋に戻した。
少し部屋を片付け、俺は上屋敷が居る玄関ホールに戻った。

「良いぞ」

「なに? エロ本でも隠したの?」

「違う。でも部屋の中は漁るなよ」

「分かってるって~」

俺は上屋敷を部屋に案内する。

「ここだ」

「へぇ~本当に一人暮らしなんだね」

「だからそう言ってるだろ」

俺は部屋の中に上屋敷を入れる。
考えてみれば、八島以外の女子が俺の部屋に入るのは始めてだ。
でも、そもそも女子を部屋に入れる機会が短期間でこんなにあるとは……。

「へぇ~なんだ、片付いてるじゃん」

「あんまり見るなよ」

俺は上屋敷を座らせ、飲み物を用意する。
上屋敷は物珍しそうに俺の部屋を見回していた。

「あ、そう言えば私、男子の部屋入ったの初めてだ!」

「マジかよ……すげー軽い乗りで来たよな、お前……」

「いやぁー、なんか木川君は大丈夫だろうなーって」

「お前の中で俺は何なんだよ」

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