隣の部屋の裸族さん

Joker0808

第4話

俺は部屋の前に立ち、インターホンを押す。
「お、おい! 大丈夫か?」

インターホンを押した後で俺はそう問いかける。
すると、またしてもドアの向こうから大きな音が聞こえてきた。

「お、おい! 本当に大丈夫か!?」

俺はドアを叩きながら続けて尋ねる。
すると、ドアが静かに前の方に押された。

「また開けっぱなしかよ……」

どうする?
昨日見たいに入っちまうか?
でも、昨日みたいなことになったらまた面倒な事になるし……。
でも、本当に一大事だったら大変だし……。
「えぇい! 八島入るぞ!」

俺はそう言って八島の部屋のドアを開けた。 幸いにも玄関に八島はおらず、昨日のような事態にはならなかった。
俺は奥の部屋に向かいドアを開ける。

「おい、大丈夫……か?」

俺は部屋の中を見て驚いた。
中はかなり散らかっており、足の踏み場も無かった。
その後目に入ったのは、布団に包まって顔だけ出している八島の姿だった。

「お、お前……何してるんだ?」

「……奴が出た……」

「は? 奴? 誰の事だ?」

「Gが出た……」

「は?」

「……別名ゴキブリ」

「いや、そう言うことを聞いてるんじゃないんだ」

話しによると、ベッドで横になってスマホを弄っていたら、急にかさかさと何かが動く音が聞こえたらしい。
気になってベッドの下を見たら、案の定ゴキブリが居たらしく、焦った八島は部屋の物をゴキブリに投げたり、箱でゴキブリを潰そうと暴れていたらしい。

「はぁ……なんだそう言うことか……」

「……重大事件」

「ま、でも……キッチンも部屋もゴミ袋だらけじゃないか……こんな部屋だったらGが居てもおかしくないだろ」

「……面倒くさい」

「おいおい、女の子なんだからそこら辺気を使えよ……」

まさか、初めて入った一人暮らしの女の子の部屋がこんなに汚いなんて。
なんか、女の子の本性を見た気分だな……。 俺がそんな事を考えながら立っていると、八島は布団に潜って丸まった。

「お、おいどうした?」

「また動いた……」

「え!? まじで!?」

俺は思わず左右の足を上げて足下を確認する。

「おい、殺虫剤とか無いのか!?」

「ない……」

無いのかよ……。
どうするかなぁ……多分、こいつゴキブリ無理そうだし……まぁ、俺も無理だけど……。 一人部屋に残して、自分の部屋に戻るのもなんか可愛そうだしなぁ……。

「はぁ……仕方ない、昨日のお詫びに俺がなんとかしてやる」

「本当?」

「あぁ、待ってろ。今、自分の部屋から殺虫剤を持ってくる」

俺は一度部屋に戻り、自分の部屋から殺虫剤を持ってもう一度八島の部屋に戻る。

「おい、ゴキブリはどこに行った?」

「そこ……」

そう言って八島が指さしたのは、本棚の裏だった。
俺は足下に散らかるゴミをどかしながら、本棚に近寄り本棚の隙間に殺虫剤を吹き付ける。

「うっ……ちょっと窓開けるぞ」

俺は殺虫剤の匂いが篭もるのを防ぐために、窓を部屋の窓を開けて換気をした。
正直、部屋の異臭にも参っていた。

「はぁ……これで死んだか?」

「……二匹」

「へ? なんだって?」

「私が見たのは二匹……」

「まだ居るのかよ!」

「うん」

マジかよ……もう一匹をこの汚い部屋から探すのは大変だぞ……。
はぁ……仕方ないか……昨日裸見ちまったし……。

「八島、もう一匹を探しながら部屋を片付けるぞ」

「面倒くさい……」

「おい! 布団に包まるな! はぁ……俺も手伝ってやるから……」

「じゃあ、私は指示を出す」

「何様だよ!」

結局掃除はほとんど俺がやる事になってしまった。
俺は自分の部屋から掃除道具を持ってきて、八島の部屋の掃除を開始した。

「おい! 洗濯物はちゃんと畳んでおけ! シワになるぞ!」

「面倒……」

「ん? これはハンカチか?」

「それ、私の下着」

「仕舞っておけ!!」

「残念ながら洗濯済み」

「聞いてねーよ!!」

一応女の子の部屋と言うこともあり、目のやり場に困る物もかなり多かった。
掃除を始めて一時間、ようやく部屋が綺麗になってきた。
本棚周辺を掃除していた時に、一匹のゴキブリの死骸は発見出来たのだが、もう一匹のゴキブリは結局発見出来なかった。

「ふぅーようやく綺麗になってきたな……」

「………ありがとう」

「気にすんなよ」

まぁ、昨日の件のお詫びって考えれば安いものだ。
てか、こいつはさっきから布団に包まったままで一切ベッドから下りてこようとしないな……。

ぎゅうぅぅぅ~

俺がそんな事を考えながら、八島を見ていると八島の方から何やらお腹が鳴る音が聞こえた。

「………」

「なんだよ……その何かを訴えるような眼差しは……」

「……お腹空いた」

「そうか、なら何か食えば良いだろ?」

「……買い物行ってない……」

「冷蔵庫は?」

「……空っぽ」

ぎゅぅぅぅぅ~

またしてもお腹の鳴る音が部屋に響き渡った。
はぁ……分かったよ。

「仕方ねーなぁ……何か作ってやるから待ってろ」

「……流石」

なんで俺がこんな事を……。
まぁ、恩を売っておいて損は無いか。
こっちは全裸を目撃してる訳だし。
これくらいは良いか……俺も昼飯まだだし。

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