モテるのは俺の友達

Joker0808

第54話

「あの……誰ですか? お兄さん」

「あぁ、まぁ気にしなくて良いよ、君たちには関係無い話しだから」

そう言いながら、男は俺と悟の元に近づいてくる。

「ねぇ君、こいつ何か余計な事とか聞いてないよね?」

「……聞いたって言ったらどうします?」

「うーん、そうだなぁ~……残念だけどこうしちゃうかなぁ~」

男はそう言いながら、足を上げ悟の頭上に足を持ってくる。
男はそのまま足を勢いよく悟の足に落とそうとした。
俺はそんな男の足を咄嗟に手で受け止めた。
「……君には関係無いって言ったよね? なんで邪魔をするのかなぁ~?」

「そりゃあ関係あるからですよ、お兄さん………俺は一応こいつの先輩なんで……」

「そっか、そっか……なら一緒に踏みつけて………あれ?」

男は自分の体重すべてを足に掛け、俺の足ごと悟の足を踏みつけようとする。
一般男性の体重は約70㎏ほど、この男は痩せ型だからもうちょっと少ないかもしれない。 正直、少しキツいが片手で持ってられない程ではない。
うちの道場にあるバーベルの方が重いしな。
「お、おかしいな……なんで……」

「お兄さん、どうしたんですか? さっきまでの余裕な感じがどっかいっちゃった見たいですけど?」

「くっ……このガキ!!」

男はそう言って、再び足に体重を掛けてくる。
しかし、男の足は悟の頭に触れる事は無かった。
そろそろ重たいし、この足を手からどかすか……。

「よいしょっ!!」

「うぉっ!」

俺は思いっきり足を持ち上げた。
すると男はバランスを崩し、そのまま尻餅をついて倒れた。

「もう一回聞くぞ……お前は誰だ?」

後輩の頭を踏みつけようとした奴には敬語なんて要らない。
俺は怒りを込めて男にそう尋ねる。

「ひっ………な、なんだよガキが! おい! 悟! いつまで寝てんだ! さっさと四人でこいつをボコるぞ! そうしねーとあの女、どうなっても知らねーぞ!」

「うっ……うぅ……」

悟は男の言葉に立ち上がろうとしていた。
もしかして、あの香奈とか言う子が人質にでも取られてるのか?

「で、でももう悟は!」

「うるせぇ!! へましやがって! お前らも同罪だぞ!」

今度は悟の取り巻きに当たり始めた。
どうやら、こいつが色々と知っているようだな……。

「おい悟……正直に応えろ」

「……うっ………なんだ…………」

悟はボロボロの状態で立ち上がり、俺を睨み付ける。
そんな悟に俺は優しく尋ねる。

「……この男のせいか? お前がこんな事をしたのは」

「……そ、それは………」

「おい! 悟なにやってんだ! さっさとそいつを抑えろ!!」

「悟……お前がもし、あの香奈って子の為に何か苦しんでて、こいつを……いや、こいつの仲間も含めた全員を黙らせれば……お前とはもう喧嘩しなくて良いのか?」

「…………」

「悟! 良いからさっさとしろ!」

俺の声と男の声が悟の心を乱していた。
だが、俺は悟が自分から俺に助けを求めるまで動く気は無い。
じゃないと、初白のために体を張った大島に示しが付かないからだ、

「………俺は……」

悟は悩んでいた。
悩んで悩んで、悩んだ末、悟は顔を上げて言った。

「頼む……初白を連れて行かないと……香奈が……香奈が酷い目に……俺じゃ……あの人たちには勝てないんだ……だから……」

悟はそう言って俺に泣きながら土下座してきた。

「お、おい! 良いのか悟! お前の女がどうなっても!!」

「うるせぇよ」

「え………ぎゃわんっ!!」

俺はワーワー喚く男の顔面を思いっきり殴った。

「いでぇぇぇ! いでぇ……いでぇよぉ……」

「……だろうな……痛いと思って殴ったんだ……お前……俺の後輩に何した? 言えよ……」

「ひっ!」

俺は座りこんだ男の胸ぐらを掴んで静かにそう尋ねた。
男は恐怖と痛みで先程の余裕はまったく無くなっていた。

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