通り魔から助けた美少女が隣の席になった話。

こああい

第5話

ということで何故か美少女と帰り道を歩いています。本当になんでだろう。

「倉田君って意外とカッコいいんだね」
「え、、ああ、ありがとう」

突然とんでもないこと言い出しているんですがこの人。え?どう反応すればいいの?
残念ながら俺にはわからん。

「そういえば、こっちの方に住んでいる人って少ないよね」
「そうだね。大体は学校の南の住宅街とか電車に乗って通っている人が多いと思う」

この街は駅の周辺の再開発が行われたのだが、駅の南側が発展して大型商業施設やら高層マンションが建設されたのに対して、北側は遅々として開発が進まず、未だに昭和の香りが少し漂う住宅街となっている。が、一応マンションとかの建設も始まっている。

「というか倉田君って普段何してるの?」
「普段かぁ。まぁ料理とか家事しながらゲームしてるぐらいかな」
「え?家事って倉田君一人暮らし?」
「いや、父さんと住んでるよ」

それっきり、霧島は口を噤んでしまった。多分だがお母さんはどこ行った?ということだろう。でもそんなことは聞きづらいものである。
だが、俺から言うつもりもない。むやみに人と深く関わっても良いことは無い。



・・・気まずい。

会話が無くなるとこんなにも気まずいのか。ひとまず、何か話題を振ろう。

「この辺りって本当に人がいないよね」
「そうだねぇ。転入だったら南側の住宅街に行くだろうし、こっち側はまだ再開発が始まったばかりだからね」

そう。北側の再開発はつい最近始まったばかりで、昭和の香り漂う建築物の中に、真新しい建築物がぽつぽつと出来始めている。その風景はなんだが異質でもあった。
ちなみに、前に立ち寄ったコンビニもその再開発によって出来たものだ。

「なんでこっち側も一緒に開発されなかったんだろう」
「私もよくわかんないな。けど、南側にはもともと商店街とかがあったから、優先されたんじゃない?」
「確かにそれは一理あるな」

「そういえば、家はどこ?」

突然そんなことを聞かれてビックリした。今の会話の流れ関係なかったよねこれ。

「えーと、あのタバコ屋わかる?おばあちゃんがやってるやつ」
「うーん、あー!あれね。はいはい」
「そこの角を左に曲がって、200mくらい行ったところが家」
「りょーかい。じゃあ今度菓子折りを持っていけばいいかな」

なんかやけにお礼をしてこようとするよなぁ。でも本当に要らない。別に金が欲しいわけでもなければ、名誉が欲しいわけでもない。
金に関して言えば保険が下りたし、同学年の女子からもらうのはなんだか忍びない。名誉に関して言えば、ひっそりと過ごしてきた自分の生活が変わるかもしれない。そんなことを俺は望んだりしない。

「いや別にいらないって。いやホントに」
「わ・・・わかったけど。本当にありがとね」
「何度も言うけど別に気にしなくていいぞ。別に俺は命を落としたりしないからな」
「うん。ありがと」

そういうと、霧島は茶髪のロングヘア―を靡かせながら、クルっとこっちを向いた。
俺の目に飛び込んできたのは、夕日をバックにした彼女の笑顔は学校では見たことがない屈託のない笑顔だった。すごくかわいい。

「・・・な、なに?じっとこっちを見て。なんかついてる?」

ハッ!俺は何を・・・君の笑顔を見てましたとか言えない。

「い、いやなんでもないよ。霧島はこっちの方角でいいか?」
「うん。でもタバコ屋までは行かないかな」
「分かった。えっと家まで送っていった方が良い?それとも別れる時まででいい?」

一応俺を頼ってきているので、どっちがいいか尋ねておく。トラウマを抱えているのは知っているのでね。

「別れるまででいいよ。わざわざ聞いてくれるなんて、倉田君のイメージ変わっちゃったな」
「え?逆に今までどんなイメージ抱いていたの...」
「教えてあげなーい。でも優しいってことは最初から変わってないよ」

なんだろう。とても照れ臭いというかなんというか。でもそう評価してくれるのはとてもうれしい。

「もしかして照れてるの?ん?ん?」
「べ、別に照れてないし。ほら、暗くならないうちにとっとと行くぞ」
「はーい」

その後、軽い雑談を交わしながら無事に霧島を途中まで送り届けた。霧島と意外と気が合うようで良かった。


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