日本は異世界で平和に過ごしたいようです

こああい

第57話

九州南西海域上空
『春日DCよりABELE01,02.レーダーにて敵機コンタクト(捕捉)可能か?』
「春日DC,現在32機コンタクト」
『ABELE01,Roger.迎撃の誘導はASTER01(上空のE-767)に引き継ぎ、ABELE01,02はこれらを撃墜せよ。なお敵機は警告活動は不要。ReadBack』
「迎撃誘導はASTER01に引き継ぎ。ABELE01,02は敵機の撃墜。警告活動は必要なし。ABELE01.」
『ABELE01. ReadBack is correct(復唱は正しい). Permission to use all weapons(すべての武器の使用を許可).健闘を祈る。春日DC.』


暗闇の中、スクランブル発進した第6航空隊のF-2A戦闘機2機は防空指揮所からの命令の元、現場海域上空の哨戒機・早期警戒機等の護衛を遂行していた。しかし、航空自衛隊のレーダーサイトに複数の新たな機影が認められたため、そのまま現場の制空権確保も行うこととなった。


「福岡ACC、ABELE01. Request descend and maintain 3000(高度3000ftへの降下を要求).」
「ABELE01,福岡ACC. Roger(了解). Descend and maintain 3000. Clear of traffic(進路上に他機はいません).」
「ABELE02,Copy.」


F-2はレーダーでとらえた敵機が低空での飛行だったため、高度を下げ同高度への飛行に移行する。そして、飛竜部隊が十分に射程内に入ったため、機体に懸架されているAIM-7Mを切り離す。


「ABELE01,FOX1!」
「ABELE02,FOX1!」


AIM-7Mを切り離した後に、機体は急旋回をする。AIM-7Mは敵機めがけて一直線に飛翔していく。


同刻
『全艦に告ぐ。現在第2艦隊より航空支援要請を受理。飛竜部隊は即時に発艦体制を整えろ。その他戦闘部隊は攻撃態勢を整えろ。
繰り返す。第2艦隊より航空支援要請を受理。飛竜部隊は即時発艦体制を整えろ。その他戦闘部隊は攻撃態勢を整えろ。以上第1艦隊司令』


この指令により、竜母からは1隻当たり2個小隊、計8個小隊32騎が発艦した。


「飛竜部隊隊長より第2艦隊司令部。夜間のため敵艦隊の位置が把握できない。誘導を頼みたい」


飛び立った飛竜部隊だが、当然のことながら護衛艦あさひやさわぎりのことは夜間のため認識できなかった。一応月の光はあるものの暗視装置を装備しているわけでもない彼らは、ひとまず第2艦隊まで向かうことにした。
帝国海軍の戦闘艦には魔力を探知する設備が備わっており、戦闘時には敵勢力が魔法を使用することを探知する装備となっているが、今回のように味方航空勢力を誘導するためにも使用することができた。


『こちら第2艦隊副司令。えー貴機から見て北西に向けて飛行してください。なお魔導誘導は完全には出来ない。申し訳ない』
「いや、例には及ばんよ」
『俺たちの仇を取ってくれ。よろしく頼む』
「あいよ」


だが、第2艦隊に向かう途中、前方から光る槍が飛んでくる。


「なんですかあr」


分隊員が言葉を発し終わる前に、その光の槍は爆発し、分隊員は爆発した破片を受けながら、飛竜と共に海に落ちていく。


「総員気を付けろ!あの光の槍は絶対に躱せ!」


前方から次々と飛来する光の槍を交わそうと各員奮闘するが、F-2から照射される電波を交わすことは無論不可能であり、飛竜部隊は動きに合わせて追尾するAIM-7Mの餌食となった。
だが、F-2二機に積んであったAIM-7Mは各4発ずつであり、飛竜部隊の4分の1しか撃墜できなかった。そのため、残存する飛竜部隊は第2艦隊より誘導を受けつつ、護衛艦の殲滅に向かおうとする。


しかし、F-2から再度発射された短距離空対空ミサイルであるAAM-3が飛竜部隊に直撃する。飛竜がもともと火炎放射をする種を改良したものであるため、体内が高温となっている。(自衛隊も把握済み)
故に、赤外線による誘導が可能となっているため、こちらもまた百発百中の戦果をたたき出す。


「くそ!なんだこの兵器は!」


だが、彼ら飛竜部隊も着々と第2艦隊に接近しており、ついに第2艦隊らが灯す探照灯を視認する。
しかし、護衛艦らの場所は相変わらず視認できない。


「飛竜部隊隊長より第2艦隊司令部。敵艦隊の位置を報告してもらいたい」
『こちら第2艦隊副司令。敵艦隊の位置は不明。我々も見失った』
「ではあの攻撃は何だというのか!」
『不明だ。だが最終視認が東方面だ。そちらをあたってほしい」


この世界の常識として、艦は対空戦闘を行うが、飛竜などは対空兵器を携行できない。(一部除く)
そのため、基本的には艦の位置を飛竜部隊は把握できるはずなのだが、日本に対してはその常識が通用するわけもなかった。


そのままF-2は格闘戦に移行する。新田原基地よりF-15J二機、築城基地からも遅れてF-2二機がスクランブル発進していたが、後続機は哨戒機等の護衛になった。


けたたましいアフターバーナーを焚きながらF-2は飛竜部隊に接近し、距離が約1Kmほどになったところで格闘戦を開始する。
F-2は機体左翼側のJM61A1(20mmバルカン砲)で飛竜部隊に銃弾の雨を降らせる。飛竜部隊は暗闇の中の閃光弾に反応し、回避行動を取ろうとするが、ことごとくF-2の餌食となる。
何度かの旋回を経て、F-2は敵飛竜部隊の殲滅を完了する。


「ABELE01より春日DC。現場海域の制空権を確保。なお搭載弾数は残り僅か」
『ABELE01,了解。基地へ帰投せよ』
「春日DC,Roger. RTB. ABELE01.」
「ABELE02,Copy」






オルスター王国陸軍はバナスタシア帝国でクーデターが勃発したことを受け、全部隊の緊急呼集を行い、特に国境付近の部隊には戦闘態勢が敷かれた。
また王国海軍も緊急出動を行い、バナスタシア帝国の侵攻に対して警戒姿勢を取った。


横須賀基地に所属する第1護衛隊は防衛出動を受け、出港準備が整えられていたが、自衛艦隊司令部より出航が止められていた。
そして、第1護衛隊群(第1護衛隊と第5護衛隊が編成)にはバナスタシア帝国に残っている邦人救助の任務が付与された。それに伴って、同じく邦人救助の任務が付与された第1ヘリコプター団のCH-47JA及びUH-60JAが護衛艦いずもに積載されることとなった。また、救助部隊には第1空挺団が担当することとなり、第1空挺団の第2普通科大隊が出動することとなった。



コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品