日本は異世界で平和に過ごしたいようです

こああい

第52話

首相官邸
「記者会見を開始します」
佐藤官房長官が会見場に登壇する。
「本日、閣議決定された内容について申し上げます。
まず、災害緊急事態の布告に伴う重要物資の統制を次に述べる品物は解除といたします。対象は、石油、肉類及びレアメタル等の重要物資及び、一部食料については制限が継続されています。詳しくはお手元の資料をご覧ください。
続きまして、先日にシーランド共和国と親善訓練を行った際に、シーランド共和国側より主要国代表会議なるものに招待されました。日本政府としてこの提案は受け入れることを閣議決定いたしました。後ほど外務省より概要の説明がございます。
続きまして、諸外国に対する技術流出に係る法律案を閣議決定いたしました。これは我が国の先端技術を流出防止する法律案であり、今後諸外国との安全保障上の混乱などを避けるために作成されました。これについては経済産業省と防衛省に照会していただきたいと思います。
続いて、民間人の海外渡航規制についてですが、特定の地域・国家に対しての制限を一部緩和すると閣議決定しました。安全が確保できる場合に認可制での緩和となりますが、これは当世界では情勢が完全に把握できないことなどが理由に挙げられます。また、第1種特別地域の規制緩和も予定されております。海外渡航規制は外務省、第1種特別地域については防衛省まで。
あと、この後各国からの大使館から問い合わせがあった、日本国内に滞在する外国人への対応を外務大臣より発表致します。これにて私からは以上であります」


その後の質疑応答
防衛省
-第1種特別地域の管理は、現在防衛省が行っておりますが、民間人への開放を行わないのはどのようなご所存で?
「そもそも、第1種特別地域には日本、いや地球には存在していなかった有害鳥獣が存在しており、民間人への開放を行うことは、民間人の生命の危機があると判断しているからであります」


-では今後の開放予定はございますか?
「現在、自衛隊による安全確認作業が行われています。また、最低限のインフラ整備も行われている状況であり、それらが終了した次第、開放を行う予定であります」


-つい先日、防衛費の概要が公開されましたが、去年度と比べて2倍から3倍までに膨れ上がっています。これに対して軍国主義化を懸念する声がございます。これについて大臣のお考えをお聞かせください。
「例年の予算の割合をご参照いただきたいのですが、人件費等で4割程度を占めています。これに対して今年は人件費等が5割を占めています。内訳といたしまして、バナスタシア帝国に対する侵攻阻止行動に参加した自衛隊員への特別手当や、現地での支援活動が含まれます。また、自衛隊員の給料が底上げされたことも含まれています。これは彼らの働きを鑑みると、十分に納得できる理由であり、また軍国主義化というより、自衛隊員への待遇改善という、至極当然であるように思います。
また、諸外国からの輸入を行っていた装備品の国産化への研究開発費が3割程度占めております。これについては、地球との関係が断たれた今、我が国を守る盾となる装備品の充実を図るためには、当然であると思います。
残りのうち、第1種特別地域等の整備に関する項目を説明させていだたきますと、国民の皆様に第1種特別地域を発展させていただけるよう、前段階として、自衛隊が最低限のインフラ整備などを行うものです。半年前にメディアの皆様に公開した、北青原駐屯地と基地の建設費用もこの枠組みの中に含まれております」


-在日米軍を自衛隊の指揮下に入れるという内容が一部報道にてありますが、この点について真偽のほどや大臣のご意見をお聞かせ願います。
「その報道については、政府で決議されていない内容であります。ただ、防衛省と在日米軍司令部で交渉が行われたということだけお伝えしておきます。
私個人こ意見といたしましては、在日米軍にはこれまで通り星条旗を掲げてほしいと思っております」


-万が一指揮下に入った場合、これは自衛隊が第7艦隊を指揮下に入れたということになり、事実上の原子力空母保持となる可能性についてどうお考えですか。
「あくまで在日米軍は一時的に自衛隊の指揮下に入るだけで、地球に戻った時には自衛隊指揮下からは外れますのでね」


外務省
-日本に在留する外国人の保護を各国の大使館が求めていますが、どう対応するおつもりですか。
「えーと。外務省は各国の臨時政府を樹立を支援する立場をとっています。もちろん、我が国の承認を得てからですが」


-しかし、現状数か国の承認がなされていないのは何故ですか?
「拒否した各国の大使館は領土を求めてきていますが、日本政府は今のところ新たな領土を譲渡するつもりがありませんのでね。逆に承認した国々のうち、米国は在日米軍基地に、イギリスは自国大使館に政府を樹立してますね」


-人道的観点から、国によって差別するのはよろしくないと思うのですが。
「だからね。日本政府が提示する問題を解決するだけでいいんですよ。でも例えば中国は、尖閣諸島の領有を主張していますよね。そういった対応を変えないのならば、政府としても毅然とした対応を取らざるを得ないわけですよ」


政権支持率は、転移から1年半が経過した今でも60~70ポイントで安定していた。それは先の侵略阻止行動(事実上の自衛戦争)の勝利という結果や、エネルギーの安定供給化を早期に成しえたからである。特域の石油生産も、地球での日本の石油消費量の半分程度は確保しており、その他は原子力発電などによって賄っている。
現在のエネルギーの課題点としては、原発の燃料であるウランの備蓄があと半年程度しか持たないことである。ただ、濃縮ウランの生産体制を整備するために、ウランの転換・再転換工場が特域に建設されている。
そして、この世界にもウランが存在していることが判明している。それはオルスター王国に緑色の蛍光を放つガラスが確認されていて、実際に輸入してウランガラスであることも確認されている。




尖閣諸島海域
「う~ん。最近ここら辺も平和ですね。まぁ今日は海荒れてましたけど」
「せやな。今日風強いしな。ていうか中国海警局とかいたほうが嫌やろ?」
「そうですね。てか船長って、不審船の時"いなさ"に乗ってましたよね」
「よー知ってんな。あの時はほんまに死ぬかと思たわ」


第7管区に所属する巡視船おおみは東シナ海の警備にあたっていた。転移当初は警戒レベルが最高であったが、中国海警局や中国漁船などが全く現れなかった(当たり前である)ことから、警備の回数も日に日に少なくなっている。


「ねぇ、なんか見えません?」


艦橋で夕日を眺めていた一人が、指をさして周りに伝える。


「確かになんか見えるな。でもこの方角に陸地はないしな。レーダーも特に反応していないし」
「木造船だろう。きっと日本政府と話でもしたい連中だろ。実際船で来た国も聞いたことあるし。船長、どうします?」
「とりあえず停船させて聞いてみいひん?進路転進な」




「すごい数の船団やな」
「推測に過ぎないのですが、あの船団はどこかの艦隊かと」
「まぁそうとしか考えられへんわな。昔の巡洋艦ぽいしな。領海までどのくらいある?」
「40マイルぐらいです」
「了解。一応本部に連絡しといて。後、カメラの撮影もよろしく」
「退去命令出します?」
「そうやな。準備よろしく」


船内には久しぶりに緊張が走る。そこに、無線が入る。


『こちら7管区本部、船団の所属はわかりますか?』
「船団の所属は不明。しかし、船団の中には巡洋艦とみられる艦艇がいます」
『...了解』


このことを認識した第7管区本部は軍艦の存在もあり、海上自衛隊に連絡を入れた。そして、防衛省は海上自衛隊の哨戒機を現場に急行させるとともに、佐世保基地の護衛艦あさひ・さわぎりを緊急出航させた。理由としては、防衛省設置法に基づく"調査・研究"とした。また、海上保安庁も高速な巡視船あそ・ほうおう等巡視船艇12隻を緊急出航させた。また、航空機6機の出動もした。


「船長、領海まであと20マイルです」
「そろそろ警告しないとまずいやろな。あと俺らのこと敵やと認識してるはずやで」
「軍艦なんであまり近づきたくありませんが、しょうがないですね。船長、並行航行を致してよろしいですか?」
「ていうかそうしなあかんな。とりあえず十分に距離を取ってや。俺らは日本の海を守るのが使命や。全員防弾チョッキ着用。あと銃器の準備もやな」


巡視船おおみは、戦闘に陥る可能性も考慮して警告行動に移った。艦長以下全員が危険を冒すという覚悟をしたが、海の防人として彼らは果敢に立ち向かう。
一方、尖閣諸島方面に向かっていた第5航空群第5飛行隊所属のP-3Cが現場海域に急行していた。

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