日本は異世界で平和に過ごしたいようです

こああい

第49話

佐世保基地
「出航よーい!」
ラッパの音と共に、船員たちが帽子を振りながら、護衛艦4隻が佐世保基地から出港する。


今回出航したのは、第4護衛隊群第8護衛隊のしまかぜ・ちょうかい・きりさめ・すずつきの4隻で、シーランド共和国との親善訓練に向かう。


経路は、太平洋に出てから日本近海を北に進み、房総半島沖から東にまっすぐ進むこととなる。






「艦長、航海レーダーに船団を本艦より南東に25マイル地点で確認」
「現在地を確認の上、警戒を厳となせ。また、僚艦に警戒を通達」
護衛艦ちょうかいとあきづきが50隻ほどの巨大船団を確認。出発してから丸一日、房総半島沖から300マイルほど(およそ500Km)地点での探知であった。


しかし、対象に特異な行動が認められなかったため、護衛艦隊はそのままシーランド共和国へと穏やかな海を進んでいった。




シーランド共和国 
シーランド共和国国歌の演奏と共に、護衛艦4隻がテマヘラー港に到着した。
当然のことながら、護衛艦を接岸させてくれる曳船など存在しなかったので、船員総出で接岸作業を行った。


「日本国海上自衛隊に敬礼!」
シーランド共和国軍の儀仗兵がちょうかいから降りてきた自衛艦隊司令に対して儀仗を行う。
自衛艦隊司令官は敬礼をし、護衛艦上ではラッパを鳴らしながら敬礼を行った。


「本日ははるばるお越しいただきありがとうございます。どうぞこちらへ」
自衛艦隊司令官と各艦長、護衛はシーランド共和国が用意した馬車に乗って、港を後にした。




「改めまして。オルスター王国軍総合参謀本部長のデービッド・マッカンと申します。どうぞよろしくお願いします」
「海上自衛隊自衛艦隊司令官の高須陽介と申します。本日はこのような場を用意していただき、誠にありがとうございます」
「ではお約束通り、我が海軍の観兵をご覧になられてほしいのですが、まずは食事と致しませんか?」




「では出港いたします」
共和国海軍の艦艇は6隻参加し、海上自衛隊からは総勢100名の人員が参加した。
艦橋では、高須とデービッド、各幹部達が集っていた。
「本艦は我が海軍の主力戦艦である、タイガー級戦艦1番艦のタイガーです」
「豪華な船ですね。ところでいま離岸していますが、どのような形式をとってらっしゃるのですか?」
「離岸の仕方ですか?私共は魔法師によって船体に横方向のエネルギーを加えて、その慣性で船の進行方向を変えます。あとはエンジンを始動させて、出港という形になります」
「魔法師というのは、様々な魔法を行使なさる方ですか?それとも、その魔法に特化された方ですか?」
「我が海軍は混在していますね。一応専門の部隊が存在しているのですが、残念ながら人員不足で陸軍の魔法師を拝借している基地もあるんですよ。魔法師というのは先天的なものによってほとんど才能が決まってしまいますからね」


「では武装の紹介と行きましょうか」
「艦長のビルであります。僭越ながら紹介を担当いたします。主砲は300mmの連装砲が4基、副砲で80mmの連射砲を16門搭載しております。また、従来型よりも射程が延びた新型の魚雷も搭載しております。ではまず主砲の一斉射をご覧いただきましょう。的として退艦した戦列艦を洋上に配置しております」
「発射よーい!発射」
船員の掛け声とともに、船体に大きな反動がかかった。
その後、標的艦がした。


「おおー」
海自幹部は驚きの声を上げる。その中の一人が質問をする。
「一つ質問なんですが、発射したのは燃焼剤が入った砲弾ですか?それともただの徹甲弾か榴弾ですか?」
「えっと。火の魔石を粉末にしたものを少量含んでいます。でもよくわかりましたね」
「発火の仕方が燃料に引火した感じではなかったですからねぇ。」
「よほど詳しいようで。ちなみに射程は10~15Kmほどであります」
「なるほど。ありがとうございます」


その後、いくつかの射撃が終わった後、港に戻ってきた幹部一行は護衛艦しまかぜの会議室で情報の整理を始めた。
「地球基準で評価するとしよう。先ほどの戦艦...なんだっけ」
「タイガー級ですね」
「そうそう。私の感想としては第一次世界大戦前後の軍艦と思いましたね」
「まぁ第一次大戦も第二次大戦もさして変わらないと思いますが、少なくとも我々が海戦で負けることはないでしょう」
「ただ、魔石を粉末状にするというのは、一つの新たな情報として開発の方に回しといていいと思います」
「次に、主砲と副砲、魚雷の他に武装があると考えられますかね」
「いや...少なくとも外観からはないと思います。"魔法師"による攻撃手段は未知数ですが」
「確かに。それとバナスタシア帝国海軍の見分では飛竜母艦という艦種が存在していましたが、シーランド共和国海軍に同様のものはあるとみられますか?」
「多分あると推測しますね。帝国海軍が"対シーランド共和国"兵器として実戦配備を行っていたのですから」
「これの調査もすることにしよう。とりあえず本日撮影したデータはすべて統合幕僚監部に送信しておきます」


その後幹部たちはシーランド共和国政府が用意した宿で一夜を過ごした。





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