日本は異世界で平和に過ごしたいようです

こああい

第44話

日本政府はオルスター王国の同盟国である、シーランド共和国と新たに関係を結ぶために、オルスター王国にシーランド共和国との仲介を要請した。
そして、シーランド共和国との会談が予定されたのである。
いつものように輸送艦に軽装甲機動車(LAV)に積み込んで護衛艦隊とミサイル艇の元、訪問する...というものではなく、オルスター王国までシーランド共和国の外交担当者が赴くとのことだったので、日本政府は少し安堵した。
戦略物資のうち、食料ぐらいしか安定的に確保できていないため、石油の消費が激しいことを懸念していたのである。石油は特域周辺海域と、特域の一部に分布していることが確認できているが、まだ日本全体の消費量を賄えるほどの産出はされていない。


「よろしくお願いします」


両国の担当者が握手して、着席をする。といっても、日本の会談内容はシーランド共和国と友好関係を結ぶことだけだ。バナスタシア帝国のように、攻撃の矛先を向けられないようになればそれでいいのだ。
例のごとく、日本の説明を行い、シーランド共和国という国家の説明も受けた。


シーランド共和国の説明の要点を挙げると、
・その名の通り、共和制で政治を行う行政院というものが存在する。これは地球における議会と同等の機能を有する。
・行政院長は、国内に存在する貴族による行政院長投票立候補者の推薦によって決定される。また、貴族は割り当てられる土地において政策をおこなう。国民は自らの土地を収める貴族の罷免権を有する。貴族は政策下に置く国民の四分の三以上の罷免要求を受け次第、可及的速やかにその職を辞する。
・シーランド共和国は陸軍と海軍を有する。特に海軍は、世界有数の艦隊群を有している。また、海軍の中に飛行隊が設置されている。これは空軍に相当する。海軍飛行隊では独自に改良した飛竜・翼竜が運用されている。


その他にも文化や食事などの説明もなされたが、以下省略。


「しかし、貴国の軍はとても精強と聞いている。あの陸軍最強ともいわれるバナスタシア帝国を打ち破ったのであるから。しかし、貴国の憲法というものはこの能力を存分に生かせないでしょう」
「おや。もうその知らせが回っていますか。我が国では自衛隊というのですが、まぁ国軍という認識で構いません。ご存じの通り我が国は別世界からやってきました。その世界で日本は数多の戦争を行いました。そして前世界でも最大級の第二次世界大戦において、日本は敗戦しました。その経験から侵略戦争を我が国は行わないよう法を整備したのです」
「なるほど。では貴国の装備は何故こんなに立派なのですか?」
「自衛隊という名の通り、我が国の平和と独立を守るためです」
「ぜひその力、拝見させていただきたいですね」


会談はそのまま円満に進み、無事友好関係の締結と、海上自衛隊のシーランド共和国訪問まで決まってしまった。






房総半島沖上空
「そろそろ攻撃目標地点か」


改良型翼竜が3騎が日本へと向かう。この翼竜に乗っているのは、バナスタシア帝国の人間ではなく、トルマン王国の軍人であった。
この改良型翼竜は、翼竜の長所であった、高い航続能力や高高度飛行能力、高速飛行能力をさらに伸ばした品種改良型である。対して、飛竜の長所は高い格闘性能、武装搭載量の多さが挙げられる。
昔は両種の性能を鑑みると、翼竜のほうが航空戦力として重用されていたのだが、現在は飛竜母艦が発達したため、飛竜を用いることが格段と多くなった。
しかし、トルマン王国は、翼竜の持つ長所に目を付け、改良を行った。それが、現在彼らが乗っている翼竜である。
なお、これはトルマン王国内で地球におけるステルス爆撃機のような扱いで、トルマン王国内でもその性能を知るものや、出撃命令を出せるものはごくわずかだ。


『司令部より各騎。急降下のうえ、投下を開始』


3騎の翼竜隊は、暗闇の中神々しく光る陸地をめがけて降下を開始した。


入間基地
「房総半島沖、大型高速飛行生物を探知。領空侵犯の恐れあり。速度270kt(約500Km/h)、高度6500ft(約2000m)」
「了解。海自哨戒機の急行。要撃機の出動可否に関してCOCの可否を問え」
DC(防空指揮所)からCOC(航空総隊作戦指揮所)に可否が問われる。
「スクランブル許可」
「ホットスクランブル、ホットスクランブル」
入間基地より、百里基地にスクランブル発進が下令された。


百里基地の第301飛行隊で対領空侵犯措置任務によるスクランブル発進が実施される。
百里基地内で、ベルが鳴り響く。
建物内から走ってきた隊員がF-4EJ改に乗り込み、準備を行う。
F-4EJ改のエンジンが始動を開始する。甲高い音と共に、パイロットは手で機外整備員に伝達をする。
ある程度したところで、起動車につながっていたケーブルを整備員が回収する。そして、キャノピーが閉まる。
マーシャラーが誘導をし、F-4EJ改がハンガーから滑走路に向けて移動する。
『MARCH01,02, Line up and wait, Runway 03R.』
「Line up and wait, Runway 03R, MARCH01,02.」
そして滑走路に2機が並ぶ。
『MARCH01,02, Wind 30 at 4, Cleared for take off runway 03R.』
「Cleared for take off runway 03R, MARCH01,02.」
滑走路でエンジン音をあげながら、F-4EJ改が加速していく。十分なエネルギーを得たF-4EJ改はそのまま、大空に羽ばたいていく。
百里基地より、領空侵犯の疑いがある飛行生物に対して、F-4EJ改2機が急行した。

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