日本は異世界で平和に過ごしたいようです

こああい

第42話

暗闇の中、2機のUH-60JAが飛行する。


「目標地点に到達、これより降下を開始する」


パイロットが無線にて報告する。
ホバリングするUH-60JAから4本のロープが垂れる。


「降下開始」


UH-60JAから垂直降下した4名の隊員は即座に行動態勢を整える。
その後、もう1機のUH-60JAからも4名の隊員が降下し、総員8名の水陸機動団員が潜伏を開始した。




そのころ陸上自衛隊は戦線を国境1Km付近までに押し戻すことに成功していた。
戦車を基軸とした戦線突破戦術は、10式戦車に有効な対機甲能力を持たないバナスタシア帝国陸軍にとって悪夢のようなものであった。
また、10式戦車の他にAH-1Sによる対地戦闘も行われていたが、採算性を考慮した結果、戦車の機銃による殲滅を主体とする戦闘に移行していった。


そうした中、自衛隊は敵の現場の司令部と思わしき施設を航空偵察により発見した。航空偵察は老兵も老兵のRF-4Eを使用した。
そこで、日本政府は敵司令部の襲撃及び敵指揮官の捕縛を実行することを決定した。また、帝国軍に対する降伏勧告も行うことにした。




2日後
日本政府は、2021年7月4日にバナスタシア帝国のオルスター王国侵攻に対する日本国の侵攻阻止行動の実行が閣議決定された。
これにより、自衛隊はバナスタシア帝国に対して、帝国が降伏をしない限り領土侵犯等の行為が出来るようになる。
野党からは猛反発を受けたが、物資が枯渇しつつある現況を打破するために、決着をつけたい政府側の行動は、実生活にも支障が出始めている国民からも広く支持された。


陸上自衛隊第21師団司令部


「展開中の第21師団全部隊に告ぐ。現時刻を以てバナスタシア帝国に対する侵攻阻止行動を開始する。該当戦車部隊は前進を開始せよ。普通科は戦車部隊に随行、特科部隊はバナスタシア帝国領に対して砲撃を開始せよ。航空部隊は、敵司令部まで前進。諸君らの健闘を祈っている」


第21師団司令部では阻止行動の指揮を執っていた。日本国憲法上あり得なかった他国への実質的な侵攻を執り行う各隊員たちは緊張状態にあった。


「航空自衛隊に連絡、制空権の確保維持と対地攻撃の要請」
「了解。連絡する」
「もう戦闘はこれっきりにしてくれよ...」


北青原駐屯地司令兼第21師団司令は戦闘に従事する隊員たちの心配をしていた。心配ばかりもしていられないので仕事をする。


バナスタシア帝国軍総合指揮所


「おい!なぜ我が軍が退却しているのだ!」


バシナリウス八世は声を荒げる。相次ぐ戦線の崩壊の報告にバシナリウス八世は腹を立てていた。


「おい、現場指揮官を呼べ!」
「それが...ほとんどの指揮官が戦死しておりまして」
「ちっ。使えない奴らめ。仕方がない、全軍撤退。国境を死守せよ」


バシナリウス八世は自国領の侵攻を防ぐために、国境付近まで全部隊を撤退させる。
しかし、それ以上に日本の本気は恐ろしいのであった。




「何の音ですかね?」


総合指揮所に異音が鳴り響く。
そして、その異音はどんどん大きさを増していく。


「総員、戦闘用意」


本能的に危機を感じた現場指揮官は、詰めている各兵士に警戒態勢を整えさせる。
しかし、バシナリウス八世は顔を青くしていた。


「なんでこの音がこの世界で聞こえるんだ」


とつぶやいたという。
その異音をまき散らしていた存在はついに総合指揮所の上空までやってきた。






『我々は日本軍である。バナスタシア帝国軍は直ちに降伏せよ。繰り返す。我々は...』
ホバリングするUH-60JAに特別に備え付けられた指向性スピーカーから、警告の音声が垂れ流される。日本軍と称したのは、自衛隊といってもわからないからで、また国防軍となった自衛隊においてこの名称は間違っているとは言えないからだ。


しかし、帝国軍は抗戦の意思を表した。総合指揮所の、対空火器が稼働を開始したからである。これにたいして、UH-60JAはドアガンのM2ブローニングで応戦を開始した。


M2ブローニングの威力はすさまじく、命中した兵士は文字通り粉々になり、兵器は再起不能となった。






一方そのころ、水陸機動団員は背後から総合指揮所を抑える。


「動くな!」


小銃を向けながら指揮所内を制圧していく。抵抗したものは容赦なく発砲するという自衛隊の本気である。
水陸機動団員は指揮所(といっても2階建ての洋館)をみるみる制圧していった。
そして、総合指揮所の中枢と思わしき部屋に到達した。


その後部屋を制圧し、現場指揮官と皇帝を確保した。


その際、バシナリウス八世はこう叫んだという。


「为什么这里有日军!」(訳:なんでここに日本軍がいるんだ!)

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