日本は異世界で平和に過ごしたいようです

こああい

第30話

2日目


「では始めましょうか。私は軍務省の軍務計画課のミハルスと申します。一応階級は少将です」
「国務庁のウィルです。クストフと変わりまして、応対をさせていただきます」
「日本国外務省の棚里です」


バナスタシア帝国との会談は2日目を迎えた。初日は険悪な雰囲気で終わってしまったため、関係の改善に棚里たちは努めていた。


「昨日はちょっとこちら側も冷静さを欠いていましたね」
「こちらこそ。すみませんね」
「今日は建設的に行きましょう」


「日本の皆さんに攻撃をしてしまったことには誠に申し訳ない。今回の事案は国家情報局の長が独断で行ったことであった。もちろん、国家情報局長は昨日の夕方ごろ処分を致した。代表して謝罪いたします」


バナスタシア帝国が日本に攻撃を行った事案に関しては、正式にバナスタシア帝国が事案を認めた。


「日本といたしましては貴国と継続的な友好関係を結びたいと考えております」
「ほう。バナスタシア帝国としても関係は結びたいですな。バナスタシア帝国の保護国になるというのはどうでしょう?」
「貴国の保護国とは?」


この時点で棚里はいやな予感がしていたが、とりあえず相手の話を聞く。


「保護国になった場合には、以下の条件を約束していだたきます」


つまるところ、事実上の属国化であった。年間一定の金と人員を献上し、外交権の移譲、技術の移転など。
到底受け入れられるものではなく、これに棚里は憤慨してしまった。


「再びですが、何をおっしゃっているのですか?そんなの到底受け入れられません。ただの属国化じゃないですか」
「なんですか?我が国に盾突くおつもりで?」
「我が国は貴国と対等な関係を望んでいるのですが」
「対等な関係ですか。貴国がマスニカ半島先端部の全権利を返却していただけるのであれば考えなくもありませんが」
「オルスター王国の担当者にも連絡いたしましたが、特域はもともとオルスター王国領であったと聞いております。そして特域の領土権などを譲渡してもらったのですが」
「オルスター王国だと?もう貴様らに用はないな」
「なぜですか?」
「マスニカ半島先端部の領土権をあの忌々しい国は主張し、実効支配しているのだ。そんな国と関係を持っている時点で、我々は貴国に何の要件もないです。貴国は我々の敵です」


棚里たちは憤りを覚えつつ、やらかしたことを悟った。


「そうですか。我々もお話になりませんな。即刻帰国させていただきます」
「ええ。どうぞとっととお帰り下さい。あと貴国はこれから安全に過ごせるとは思いになられないことですね」


棚里たちは、その後すぐに帰国の準備に入った。それと同時に護衛艦隊は警戒態勢に入った。今までは日本の外交団が使用しているだけであったが、敵国認定されれば話は別になってくる。不意な戦闘に備えるため、乗員は哨戒配備となった。
また、車の回収隊も急遽出航することとなった。幸いにして北青原分屯基地に停泊していたため、速やかに回収を終われそうであった。






一方そのころ、政府では対応に追われていた。


「おいおい、バナスタシア帝国と開戦なんて無理だぞ」
「一応憲法改正しましたから、日本の国益にかなう行動は許容されますが」


官邸では緊急の閣議が行われていた。


「うちの外交官の不手際だったとは思いますが、我が国の事実上の属国化を要求されたら、さすがにゴーサインは出せないでしょう」
「まぁ。しかもあちら側は日本を完全に敵と認定したってな」
「はい。オルスター王国という単語に反応していましたね」
「なぁ、オルスター王国って世界的に見ればまずい国だったり...」
「あ。地球で言うK朝鮮みたいな。」
「そう。まぁこの世界で生きていくのであれば世界の協調を得ることが必要だな」
「そうですね。迅速に別国家へのコンタクトを開始しましょう」
「それはともかく戦争は避けたいな。政権支持率とかもろもろ考えても」
「まぁ、そうですね。しかし宣戦布告の類がなされた場合を想定したマニュアルを早急に作成いたしましょう」


その後、迅速にマニュアルが作成された。そして数週間ほど時が過ぎたころ、バナスタシア帝国よりオルスター王国及び日本に対して宣戦布告がなされた。
その報を受けた日本は、日本史上初となる防衛出動により、陸上自衛隊は第21師団を、海上自衛隊は第1護衛隊群と、万が一日本領海付近まで敵艦隊が接近した場合に備えて、在日米軍に支援要請を、航空自衛隊は早期警戒管制機や、哨戒機などによる警戒監視、第3飛行隊の一部が北青原基地で待機をすることとなった。


また、オルスター王国に対しては安全保障条約に基づき、第21師団の一部部隊がオルスター王国とバナスタシア帝国付近に展開することとなった。また、第1護衛隊群の第5護衛隊がこちらも国境付近のオルスター王国領海に展開する運びとなった。


もちろん、国内では左派の人々が反発をしていたが、今回は完全なる防衛戦闘であるため、国民全体からは好意的にとらえられていた。
しかし、日本人の生来の体質というべきか、戦争に対する忌避感が国民にあったのも事実であり、実際に自衛官たちの中にも強い抵抗を示していたものが居たのであった。



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