日本は異世界で平和に過ごしたいようです

こああい

第26話

第1種特別地域というのは、日本側に譲渡された地域全域を言う。たいして青原は譲渡されたうち、北側約400㎢ほどを指す言葉である。そのうち、約30㎢は北青原駐屯地である。
北青原駐屯地は、一部の建物以外は仮設建物で、敷地の半分は今は演習場としての役割を果たしている。仮設建物はこれから本建てに移行していくのだが、1か月近くで滑走路と1号建物(:師団司令部が入る建物)を完成させた自衛隊(と一部の業者)であった。
もちろん、建物は建築しなおす予定である。基礎がしっかり固まっていないためで、半年ほどで解体される予定だ。
この1号建物は病院としての役割が大きかった。重症者がしばしば搬送される現状で、日本本国まで搬送するくらいなら、多少無駄でも病院の役割を付与した建物を建造する方が良いという結果になった。




オルスター王国 アトラン港
現在、アトラン港にはたくさんの重機が運ばれていた。これから始まるインフラ整備の一環として、アトラン港からカスティアまでの約300Kmの道のりを舗装することとなった。が、これは数年レベルの事業であり、そんなところに自衛隊を動員するわけにはいかなかったので、一般で公募して事業を委託することとなった。
「では、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
握手をしているのは、入札の結果決まった会社の社長と、アトラン港が属するコロナス市の市長であった。
1000億円単位の事業が開始された。事業を担当するのは、国内最大手の会社であった。
なお、市というのは日本で言う県のようなものである。その上部は国となっており、市長は国から派遣される役人(というの名の貴族)で、コロナス市は大規模商会を運営する貴族に割り当てられていた。
アトラン港は最北端であるが、オルスター王国で中枢を担う港もまた、コロナス市の区域であった。


その日の日が暮れるころには、輸送艦おおすみからのピストン輸送により、舗装資材や重機などの運び出しは完了し、自衛隊からの支援による宿舎の建造も始まっていた。
宿舎は街の郊外にあり、町からの注目も避けるように考慮された結果であった。もちろん、水道は近くの川から調達出来るように立地を選び、自衛隊の誇る浄水セットを配備、飲料水は月1回日本から輸入し、ガソリン・太陽光などによって発電を行う。
ゴミに関しては、コロナス市が廃棄物に関してあまり関心がない様子(というよりオルスター王国でゴミという存在があまり認識されておらず、基本は水道に流して海に放水される)なので、これも回収し、出来るものは焼却処分、出来ないものは回収の上日本に処理することとなった。




日本政府
「バナスタシア帝国への抗議文と面会の要求の文章を提出することでよろしい?」
総理が審議を取る。各大臣は了承の意思を示す。
「よし。閣議決定ということで。」
「内容はとりあえず軟らかめに」
「そうだな。下手に攻撃したくないしな」
外務大臣がきちんと確認を取る。
抗議文の内容は、"今までの数々の敵対行動、許せん。死傷者も出たし謝罪を要求する。ま、とりあえず会談をしてこれからはそう言った間違いがなくなるように同盟結びましょうや。"という内容である。
日本側としては何故敵対行動してくるのかがわけわからないので、もし何か不満なら話し合いましょう。そして平和に行きましょうという考えである。
地球ならば割と妥当な判断である。一部の例外はあれど、大抵は会談を行い、関係を持てるのである。


それから数日後に、返答が返ってきた。内容は、
"私たちに身に覚えはないが一応ごめん。でもkwsk聞きたいから会談しましょ。こちらからも提案とかあるし。"
との趣旨であった。会談の場所はバナスタシア帝国側で用意するとのことであったが、日本の国力を見せつけて有利に物事を進めるためにも、通例上相手国の移動手段を用いるところを、また安全上からも警察・自衛隊の合同での警護となった。
また、事前に現地に海上自衛隊が事前訪問することとなっている。これはどのくらいの船舶が入港できるか、また軍の性能偵察などを兼ねている。連絡は例によってオルスター王国経由...ではなくオルスター王国より購入した魔導交信機を事前に合致させたチャンネルで運用し、連絡を取り合うということであった。
魔導交信機はハンディサイズでかつ、地球の地表面であれば理論上はどこでも交信可能という、HF(短波)のような特徴、メリットを持っている。デメリットとしては交信機自体が消耗品であることや、地球で言う帯域幅が狭いことや、ノイズが入りやすいなどが伝えられた。日本としての研究対象の一つである。



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