日本は異世界で平和に過ごしたいようです

こああい

第20話

護衛艦かがでは防衛省及び政府へ連絡するとともに、SH-60Kの発艦用意がされていた。
SH-60Kは2機発艦し、完全武装した海上自衛官も8人付随することとなった。自衛官はビニールテープでぐるぐる巻きにされた64式小銃と89式小銃、MINIMIなどを携行することとなった。




襲撃現場
襲撃を受け、負傷した外交団一行は現場からLAVによって5Kmほどのところに離脱をして、ヘリコプターの到着を待っていた。
しかし、損傷を受けた部位がしびれてきて動かせなくなるという症状がおこっていた。
「やはり毒か。弾頭が思いっきり喰い込んでいるな。解毒できるかどうかわからんな」
運転席に座っていた自衛官(衛生科)がつぶやく。
「地球にはない毒だったらなおさらですね」
サンルーフから警戒監視をしていた自衛官が反応する。
現在阿須は状態が悪化し意識を失っている。心臓は動いていることが確認できているが緊急的な治療が必要となっている。
そこに、無線が入る。
『目標地点まであと2,3分で到着する。着陸できる地点はあるか?』
「左手の田んぼはどうでしょう?見た感じ収穫を終えた田んぼのようですが」
「緊急事態だしな。『我々から5時方向に広がる田んぼに着陸せよ』」
『了解。要救護者の準備を進めろ』
上空にはヘリコプターの音が鳴り響いていた。
「よし、阿須副大臣を降車させろ。それと最大限の警戒をせよ」
隊員は小銃を構えながら周辺の警戒を厳となす。
するとすぐさま、二機のSH-60Kが視認できた。


近くの田んぼに着陸したSH-60Kから隊員たちが出てきて、阿須の格納が始まる。それと同時に補佐官や精神的・肉体的に任務続行が不能と判断された隊員がSH-60Kに乗り込む。
「そろそろ離陸します!」
操縦士が大声で叫ぶ。それと同時に数名の付き添いの自衛官がヘリコプターから離れる。
ヘリコプターのローターブレードが激しく回りだし、ダウンウォッシュも激しく発生し始める。


そのまま、阿須を乗せたSH-60Kは自衛隊阪神病院まで空輸された。ほかの軽傷の者は護衛艦かがにて処置を受けることとなった。


このことは首相官邸に通達され、そのままメディアでも速報として国民に知らせることとなった。
「ここで速報です。現在オルスター王国に訪問中の阿須副大臣が何者かからの攻撃を受け、現在重症とのことです。阿須副大臣は現在ヘリにて救急搬送中とのことです」


などと各メディアで報道された。この件に関して夕方ごろより官房長官の緊急記者会見なども行われた。
今回の件に関しての国民の反応は攻撃を仕掛けた不届き者に反撃すべしとの考えと、自衛隊が随行しているのになぜこのような事態に陥ったのだ?という考えに分かれた。一応自衛隊は護衛出動による正当防衛射撃も実施しているとの報道もされたが、国民は詳しい説明を求めた。
そのため、陸上幕僚長がわざわざ記者会見を行うという事態に発展した。


陸幕長は会見で以下のことを発表した。
・オルスター王国王都カスティアでの一連の行程を終了した一行はアトラン港までの帰路をたどっていた際に、アトラン港まで残り90Kmほどの地点で未知の勢力からの奇襲を受け、阿須外務副大臣や補佐官、護衛中の自衛官が負傷した。
・その後、攻撃を受けた方への制圧射撃を実施した。と同時に負傷者などを現場から軽装甲機動車を用いて離脱させたと。
・そして護衛艦かがの艦載機のSH-60Kを用いて空輸した。
この会見では自衛官が阿須らに突撃しようとした男たちを射殺したことなどは伝えなかった。この発表によっての国民感情の悪化を恐れたのである。


バナスタシア帝国 国家情報局 第3工作部本部
『作戦は失敗、繰り返す作戦失敗』
魔導交信機から放たれる緊迫した様子の声。この一斉によって工作部本部は混乱に陥った。
「『何があった!状況を報告せよ』」
本部長が現場隊員に状況説明を求める。
『攻撃対象からの反撃を受けた。反撃により攻撃員が死亡、小型遠距離砲も破損が確認された。なお我々はこれより現場からの離脱をする』
「なんだと!最新型の小型遠距離砲が破損しただと?」
「おいおいあれ調達価格がえげつなく高いんだぞ」
「あれって魔導鋼製ではないのか?」
「確かに魔導鋼製だ。しかも特注品の」
「特注品の魔導鋼を貫徹できる威力って相手は同等の装備を保有しているのか」
「いや、魔導鋼なら徹甲弾でなら貫通できます。問題は徹甲弾は通常の弾丸に特殊加工をしなければならず、相手は高い技術力を保有していると考えられます」
「しかしそんな技術を有するなら以前から有名だったはずだ。なのに今まで一度も聞いたことの無い国家だ。技術を保有しているとは思えない」
「なら徹甲弾を輸入したと考えるべきだな。生半可な徹甲弾は貫通できないしな」
「上層部に報告するか?」
「いや、面子が保てない。秘匿事項として闇に葬り去る。そしてもう彼の国とはかかわらない」
「了解した」


その後帰還した局員の所持していた小型遠距離砲や、腕に被弾したのを見て幹部が戦慄したというのはまた後の話である。

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