日本は異世界で平和に過ごしたいようです

こああい

第9話

現場空域 SH-60K 
『こちらSEACHECKシーチェック01、敵艦は移動を停止。しかし砲塔と思わしきものはいまだ健在です』
『かが、了解。そのまま現場上空を監視しろ。護衛艦さみだれが到着次第、巡視船こうやの負傷者を空輸せよ』
『了解』
戦闘海域上空に1機のSH-60Kが飛行していた。先ほど護衛艦かがから離艦したものだ。
「なぁ、あんなにこうやから煙が出ているけど、果たして日本まで帰れるのか?」
「知らんな。まぁ最悪護衛艦で引っ張って帰ると思うけど」
「巡視船の搭載武器が貧弱すぎるよな」
SH-60Kの乗員が愚痴っている。
「そういえば、護衛艦の艦砲食らったのによく炎上しないでいれるよな」
「俺たちが知っている駆動方式じゃないんじゃないか?燃料を積んでなければ基本的に炎上しないし」
「まぁ未知の力で動いてます!ってなったら装備庁の連中は喜ぶよな」
「ていうか異世界の人と会話できるのか?」
「領空侵犯に対応した陸自さんによると相手は日本語しゃべってたらしいぜ?」
「よくそんな情報回ってきたな。まぁ俺たちが派遣艦隊の一員だからかもしれないな」
そんな会話を交わしていると、操縦士が声を上げる。
「前方に未知の飛行体を確認。十分警戒せよ」
一気に機内の雰囲気が重くなる。さすがに敵を前にして雑談で出来るほど自衛官は余裕ではなかった。






護衛艦さみだれ
「現場空域のシーホークより飛行体を確認したとのこと」
艦長に報告が渡る。
「我が艦の赤外線暗視装置でも3体ほどかすかに探知できています。しかし、いわゆる飛竜などに属するものだと推測され、なおかつ昼間であるため探知が難しいとのこと」
「了解。対空戦闘用意、ただしミサイルの使用は緊急時以外控えろ」
現場にあと2分程度到着する護衛艦さみだれは対空戦闘の準備をして急行した。






「巡視船こうや、接近」
「巡視船こうやに覆いかぶさるように減速、救急用具を持って数名こうやに乗船しろ。そして、敵艦付近に移動し敵艦船員に対し救命浮輪を投下。要救護であれば状況終了後救助し、本国に送還する」




しかし、そんな平和に終わるわけがなかった。
艦内にベルが鳴り響き、轟音が聞こえてくる。
「本船左舷連続被弾。損害軽微!」
「攻撃源はどこだ?」
「上空と思われます。あっシーホークより入電、飛行体より攻撃があり、緊急離脱するとのこと」
「了解。そのまま護衛艦かがに帰投せよ。護衛艦かがに伝達、航空支援の要あり、戦闘機の発艦準備を要請してくれ。また、我が艦はこれより正当防衛射撃を実施。繰り返す、本艦これより正当防衛射撃を実施。緊急事態のため本部の承諾を得ず行動する。」
その瞬間、高性能20mm機関砲(通称:CIWS)より毎分4500発の無慈悲な弾丸の雨が飛行体に対して浴びせられる。しかし、飛行体は未だ飛行している。
「機関砲対空戦闘止め!ESSM用意!」
「目標、10時の方向。ESSM用意完了」
「ESSM攻撃始め」
艦長のこの言葉によって、前部甲板に装備してあるVLSより3発のミサイルが上空に放たれる。発射された3本の燃える矢はそのまま隠密飛竜に突き刺さって爆散した。




首相官邸
「何?巡視船と護衛艦が正当防衛射撃?」
首相補佐官が派遣艦隊で起こったことを報告する。
「はい、14時22分、巡視船こうやが一隻の国籍不明船より攻撃を受けたとのこと。巡視船こうやが威嚇射撃を実施したが、エンジン1基が停止したのと、保安官と自衛官が負傷したため、正当防衛射撃を実施したとのこと。なお、巡視船の搭載武装では効果が認められなかったため、護衛艦さみだれより艦砲射撃を実施したとのこと。」
「世間的には保安官と自衛官が負傷し、さらなる被害を防ぐために正当防衛をしたとでも言っておけばいいかなぁ」
「それで世論を憲法改正まで持っていけたらさらに良いですね」
「そうだな。せめて自衛隊を正規軍として、国民の財産や生命を常時守れるようにはしたいな。自衛隊の予算も増やさないとやべぇな」
有野総理大臣は、憲法改正を促進していた。もちろん日本と他国が戦争をする状態を好んでいるわけではなく、抑止力によって、平和に事を進めようとしていた。地球では尖閣諸島や竹島をきちんと管理下において核ミサイルや大陸間弾道ミサイルからも米軍依存ではなく日本自身で防衛できるようにしようとしていた。
もっとも、在日米軍以外に頼ることが出来なくなってしまった今現在、どうすることもできないのだが。


「なぁ、これって記者会見開く必要ある?」
「ええ。少なくとも官邸で記者に応じる必要はありますね」
「はぁ~。いつもの遺憾でいきますかね」
「とりあえずは。でも国会などで自衛隊や海保の武装強化や予算増加を提案しないとですね」
「そうだね。これ以上被害を増加させないように法整備とかもしていきますか」
「総理。そろそろ緊急災害対策本部等についての定例閣議の時間です」
「了解。各大臣は揃っているか?」
「いえ、防衛大臣が防衛省で緊急会議を行っています」
「じゃあ防衛大臣が到着次第閣議を始めることにしよう」

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