魔導と迷宮~最強の冒険者は少女を育てるようです~
44話
あの竜の帝都襲撃から数日ほどが経過した。街の復興は新皇帝の指示により急ピッチで行われている。このままのペースでいけば一か月ほどで完全に元通りになるだろう。そんな様子を宿の窓から眺めていたアインはその光景に背を向け空間に黒い穴を開けて、移動する。移動した先は霧の立ち込める山だった。アインは一部だけ霧の晴れている部分に向かっていく。そこにはいつも通り光輝く半身と淀んだ黒い半身で構成された巨竜が座っていた。竜は黄金色の瞳でアインの姿を捉えると体を起こす。
「久方ぶりだな。我が主よ。我が働きに賞賛でも送りに来たか?」
冗談めかしたリンドブルムの発言に思わずくすりと笑みをこぼす。
「まあ、その通りだよ。今回はよくやってくれてた。俺の指示も忠実にこなしてくれたようだしな。特に死者を一人も出すなってやつを達成できるとは思っていなかったからな」
「そうであろう。そこは我も少々骨が折れた。だが、その功績は我だけのものではないぞ。主の弟子と法衣をきた女のモノでもある。あやつらがいなければ侵入された怒りとやらを表現するために完全に街を破壊しなければならなかったからな」
「いや、そこまでさせるつもりはなかった。もしそうなっていたら俺が割って入るつもりだったからな」
「ふむ、ならば主はあの弓使いに負けることはないと思っていたということか。確かにあの戦いぶりを見るにそう勘定しても問題ない相手だとは思ったがな。主にしては珍しく憶測で動いたのではないか?」
「お前見てたのか……」
「当然であろう。こんな面白い催しは早々見れるものではないのでな。半身の眼球をひっそりと忍ばせていたのよ。この時ほどこの黒い半身が便利だと思ったことはないぞ」
「なら、俺に感謝しろよ」
「無論感謝しているとも。それで返答は如何に?」
アインは顎に手を当て、少しの間思考に耽るがすぐに微笑を浮かべた顔を上げた。
「お前の言うとおりだと思う。俺は憶測で動いた。言われて見れば俺らしくはなかったかもな」
「ふむ、してその理由はあの娘たちを信頼していたというところか………。主も人間らしくなったのではないか?」
リンドブルムはアインをにやけた面で見下ろす。アインはその面持ちに若干の苛立ちを感じたが感情をグッと抑える。
「そうかもな。それじゃあ俺は行くぞ。また後で褒美に上手いものでも持ってきてやるよ」
露骨な話題変えに呆れ混じりの優し気な眼差しをアインに向ける。
「極上のものを頼むぞ」
「分かってる。俺は働きには報いる」
そう言うとアインは黒い穴の中に姿を消す。その瞬間少女が自分の魔法を吸収したことについて聞くのを忘れていたことを思いだす。だが、また今度でいいかと問題を先送りし、リンドブルムはわずかな吐息を漏らし体を丸め眠りについた。
「久方ぶりだな。我が主よ。我が働きに賞賛でも送りに来たか?」
冗談めかしたリンドブルムの発言に思わずくすりと笑みをこぼす。
「まあ、その通りだよ。今回はよくやってくれてた。俺の指示も忠実にこなしてくれたようだしな。特に死者を一人も出すなってやつを達成できるとは思っていなかったからな」
「そうであろう。そこは我も少々骨が折れた。だが、その功績は我だけのものではないぞ。主の弟子と法衣をきた女のモノでもある。あやつらがいなければ侵入された怒りとやらを表現するために完全に街を破壊しなければならなかったからな」
「いや、そこまでさせるつもりはなかった。もしそうなっていたら俺が割って入るつもりだったからな」
「ふむ、ならば主はあの弓使いに負けることはないと思っていたということか。確かにあの戦いぶりを見るにそう勘定しても問題ない相手だとは思ったがな。主にしては珍しく憶測で動いたのではないか?」
「お前見てたのか……」
「当然であろう。こんな面白い催しは早々見れるものではないのでな。半身の眼球をひっそりと忍ばせていたのよ。この時ほどこの黒い半身が便利だと思ったことはないぞ」
「なら、俺に感謝しろよ」
「無論感謝しているとも。それで返答は如何に?」
アインは顎に手を当て、少しの間思考に耽るがすぐに微笑を浮かべた顔を上げた。
「お前の言うとおりだと思う。俺は憶測で動いた。言われて見れば俺らしくはなかったかもな」
「ふむ、してその理由はあの娘たちを信頼していたというところか………。主も人間らしくなったのではないか?」
リンドブルムはアインをにやけた面で見下ろす。アインはその面持ちに若干の苛立ちを感じたが感情をグッと抑える。
「そうかもな。それじゃあ俺は行くぞ。また後で褒美に上手いものでも持ってきてやるよ」
露骨な話題変えに呆れ混じりの優し気な眼差しをアインに向ける。
「極上のものを頼むぞ」
「分かってる。俺は働きには報いる」
そう言うとアインは黒い穴の中に姿を消す。その瞬間少女が自分の魔法を吸収したことについて聞くのを忘れていたことを思いだす。だが、また今度でいいかと問題を先送りし、リンドブルムはわずかな吐息を漏らし体を丸め眠りについた。
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