魔導と迷宮~最強の冒険者は少女を育てるようです~
43話
アインは城の方へ戻り、入り口近くにいたウルたちと合流した。到着したアインにウルたちが近づいてくる。
「第一皇子とその取り巻きの邪魔な貴族たちは無事リンドブルムの一撃で城ごと消滅してたよ。残りの貴族たちもそこに運んでるし、一切の怪我を負っていない言い訳用の魔法薬を入れてた瓶も準備してるしこれで依頼完了かな?」
「そうだな。完遂と言って差し支えないだろう」
そう言うとウルが右手を上げる。アインも察したのか右手を上げると二人は勢いよく手を叩き合った。
「今回は助かった。流石だな」
「いえいえ、当然の仕事をしたまでですから」
アインの労いにウルは気分よさそうに胸を張る。そんな二人に申し訳なさそうにトランが口を挟む。
「仲良く話しているところ悪いが今後の対応について聞いていいだろうか?流石にこのまま放置させると困るのだが……」
「ええ、わかってるわ。いくら何でも終わったから帰るとは言わないわよ。最低限の対応についてはまとめてあるから今から協議しましょう。もちろんアインもね」
 ウルは釘を刺すようにアインを見ながら片眼を瞑る。
「分かっている。元々は俺が任された依頼だ。ここでお前に丸投げして去るほど落ちぶれていない」
「それはよかったわ。てっきりあなたの弟子たちのもとへ行こうとしてるかと思ったから」
「それは見当違いだな。今あいつらに会うつもりはない。寧ろ今は会わない方がいいだろうな」
「それはどういうことかしら?」
「さあな。そんなことより早く協議を始めるぞ。急がなければならない対応もあるだろ」
「はいはい。始めさせていただきます」
二人はコルネットとトランの方へ向き直る。先ほどまでの会話を聞いていたからか皇子達は微笑まし気な視線を送ってくる。アインはむず痒い感覚に襲われるが気にせず今後の対応を話し始めた。
その後の動きは速かった。アインはブラッドとしてトランを冒険者ギルドに送り、竜の脅威が去ったことを街中にある魔道具を通して改めて布告した。街の人々も竜が去ったことは知っているだろうが明確に宣言された方が安心できるからだ。そして、竜の被害によって家が壊された人々は一度壊れた城の前に集まるように言った。その理由は今回の騒動で死亡した貴族の屋敷や皇族が所有している建物を仮住居として与えるためだとも布告した。ブラッドが街の様子を確認した結果安堵した人間も多いようだったので皇帝としての一歩は成功と言えるだろう。他にも今回戦いに参加した冒険者達には報奨を約束し、怪我を負ったものはギルドまで搬送し治療するようにも指示した。これには冒険者達も大喜びだった。疲労がたまっているはずなのに広場の歓声がギルドの方まで聞こえてきたほどの喜びようだ。
またこの流れで第一皇子が先の攻撃で死亡したことを伝え、自分が次の皇帝になると表明した。街の復興や住民や冒険者への誠実な対応と以前からあった民衆からの人気も相まって先ほどよりも大きな歓声が聞こえてきた。その騒がしさに心地よさを感じつつアインとトランはギルドを後にした。その後、城に戻ると酩酊状態にあった貴族たちの意識が戻り始めており動けるようになった者たちはコルネットから事の顛末を聞いていた。話を聞いた者たちは一様に喜色を浮かべていた。
(やはりほとんどの貴族は王国との戦いは望んでいなかったか。まあ、まともに戦って勝てる要素がないからな。寧ろ第一皇子は何故勝てると思ったのか疑問だな。後でウルに聞くとするか)
ウルはそんなアインの心中を察したのかこちらに歩いてくる。
「無事終わったようね。トラン皇子はあちらでコルネットの手伝いをお願いします。次期皇帝のあなたがいたほうがいいでしょうから」
「そうだな。俺も行くとする。だがその前に……」
トランは二人に真剣な眼差し送り、対峙する。
「無力な私に力を貸してくれてありがとう。もうこの頭は下げられないがその代わりに私のこの命が尽きるときまで帝国は君たちの敵になるような行為はしないし、させない。皇帝トラン・オブ・ロートルの名においてここに誓おう」
そう言ってトランは右手を握り左胸を叩く。その様子に二人は笑みを浮かべる。
「あなたの覚悟はよく伝わりました。これからも良き関係を築きましょう」
アインは手を差し出し、トランはそれを握る。トランは満足そうな表情を浮かべコルネットの方へと向かっていく。
「それで本音は?」
「時が経てば人はどうなるかわからない。個人としては好感が持てる人物ではあるが国を背負うというのは並大抵のことではないからな。だから……」
「期待はしないってことね」
言葉を取られたアインはウルはじっとりとした視線を向けるがウルのしてやったりという顔を見て文句を言うのをやめる。
「そうだ」
「ふーん。優しいのね」
その言葉にアインはむず痒さを感じ頭を乱暴に掻く。
「そういえば第一皇子が王国を攻めようとしていた理由は何だったんだ?」
その露骨な様子にウルはくすくすと笑いながら答えた。
「さあね。私にもわかんない。予想はある程度ついてるけど」
「じゃあ、それでいいから」
「嫌です。そんな不遜な態度の人に教えることはありません。それに今回の仕事の対価も貰ってないし。あーあ、アインがそんな人だったなんて悲しいなー」
その芝居がかった様子に若干の苛立ちを覚えながらもアインは優し気な声音で尋ねる。
「俺にどうしろと」
ウルは異次元袋から一枚の紙を取り出す。それには様々なものの名前がびっしりと書かれていた。
「これを集めてきて」
アインはそのリストを見てため息をつくが渋々了承した。ウルはアインのその様子を見て嬉しそうに笑った。
「第一皇子とその取り巻きの邪魔な貴族たちは無事リンドブルムの一撃で城ごと消滅してたよ。残りの貴族たちもそこに運んでるし、一切の怪我を負っていない言い訳用の魔法薬を入れてた瓶も準備してるしこれで依頼完了かな?」
「そうだな。完遂と言って差し支えないだろう」
そう言うとウルが右手を上げる。アインも察したのか右手を上げると二人は勢いよく手を叩き合った。
「今回は助かった。流石だな」
「いえいえ、当然の仕事をしたまでですから」
アインの労いにウルは気分よさそうに胸を張る。そんな二人に申し訳なさそうにトランが口を挟む。
「仲良く話しているところ悪いが今後の対応について聞いていいだろうか?流石にこのまま放置させると困るのだが……」
「ええ、わかってるわ。いくら何でも終わったから帰るとは言わないわよ。最低限の対応についてはまとめてあるから今から協議しましょう。もちろんアインもね」
 ウルは釘を刺すようにアインを見ながら片眼を瞑る。
「分かっている。元々は俺が任された依頼だ。ここでお前に丸投げして去るほど落ちぶれていない」
「それはよかったわ。てっきりあなたの弟子たちのもとへ行こうとしてるかと思ったから」
「それは見当違いだな。今あいつらに会うつもりはない。寧ろ今は会わない方がいいだろうな」
「それはどういうことかしら?」
「さあな。そんなことより早く協議を始めるぞ。急がなければならない対応もあるだろ」
「はいはい。始めさせていただきます」
二人はコルネットとトランの方へ向き直る。先ほどまでの会話を聞いていたからか皇子達は微笑まし気な視線を送ってくる。アインはむず痒い感覚に襲われるが気にせず今後の対応を話し始めた。
その後の動きは速かった。アインはブラッドとしてトランを冒険者ギルドに送り、竜の脅威が去ったことを街中にある魔道具を通して改めて布告した。街の人々も竜が去ったことは知っているだろうが明確に宣言された方が安心できるからだ。そして、竜の被害によって家が壊された人々は一度壊れた城の前に集まるように言った。その理由は今回の騒動で死亡した貴族の屋敷や皇族が所有している建物を仮住居として与えるためだとも布告した。ブラッドが街の様子を確認した結果安堵した人間も多いようだったので皇帝としての一歩は成功と言えるだろう。他にも今回戦いに参加した冒険者達には報奨を約束し、怪我を負ったものはギルドまで搬送し治療するようにも指示した。これには冒険者達も大喜びだった。疲労がたまっているはずなのに広場の歓声がギルドの方まで聞こえてきたほどの喜びようだ。
またこの流れで第一皇子が先の攻撃で死亡したことを伝え、自分が次の皇帝になると表明した。街の復興や住民や冒険者への誠実な対応と以前からあった民衆からの人気も相まって先ほどよりも大きな歓声が聞こえてきた。その騒がしさに心地よさを感じつつアインとトランはギルドを後にした。その後、城に戻ると酩酊状態にあった貴族たちの意識が戻り始めており動けるようになった者たちはコルネットから事の顛末を聞いていた。話を聞いた者たちは一様に喜色を浮かべていた。
(やはりほとんどの貴族は王国との戦いは望んでいなかったか。まあ、まともに戦って勝てる要素がないからな。寧ろ第一皇子は何故勝てると思ったのか疑問だな。後でウルに聞くとするか)
ウルはそんなアインの心中を察したのかこちらに歩いてくる。
「無事終わったようね。トラン皇子はあちらでコルネットの手伝いをお願いします。次期皇帝のあなたがいたほうがいいでしょうから」
「そうだな。俺も行くとする。だがその前に……」
トランは二人に真剣な眼差し送り、対峙する。
「無力な私に力を貸してくれてありがとう。もうこの頭は下げられないがその代わりに私のこの命が尽きるときまで帝国は君たちの敵になるような行為はしないし、させない。皇帝トラン・オブ・ロートルの名においてここに誓おう」
そう言ってトランは右手を握り左胸を叩く。その様子に二人は笑みを浮かべる。
「あなたの覚悟はよく伝わりました。これからも良き関係を築きましょう」
アインは手を差し出し、トランはそれを握る。トランは満足そうな表情を浮かべコルネットの方へと向かっていく。
「それで本音は?」
「時が経てば人はどうなるかわからない。個人としては好感が持てる人物ではあるが国を背負うというのは並大抵のことではないからな。だから……」
「期待はしないってことね」
言葉を取られたアインはウルはじっとりとした視線を向けるがウルのしてやったりという顔を見て文句を言うのをやめる。
「そうだ」
「ふーん。優しいのね」
その言葉にアインはむず痒さを感じ頭を乱暴に掻く。
「そういえば第一皇子が王国を攻めようとしていた理由は何だったんだ?」
その露骨な様子にウルはくすくすと笑いながら答えた。
「さあね。私にもわかんない。予想はある程度ついてるけど」
「じゃあ、それでいいから」
「嫌です。そんな不遜な態度の人に教えることはありません。それに今回の仕事の対価も貰ってないし。あーあ、アインがそんな人だったなんて悲しいなー」
その芝居がかった様子に若干の苛立ちを覚えながらもアインは優し気な声音で尋ねる。
「俺にどうしろと」
ウルは異次元袋から一枚の紙を取り出す。それには様々なものの名前がびっしりと書かれていた。
「これを集めてきて」
アインはそのリストを見てため息をつくが渋々了承した。ウルはアインのその様子を見て嬉しそうに笑った。
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