魔導と迷宮~最強の冒険者は少女を育てるようです~
41話
シンシアは自分の考えた案を話し始める。
「ノインは一人で竜の気を引き、尚且つ竜の魔力が減るくらいの大魔法を放つくらいの圧力をかけて欲しいの。そうすれば、ノインだけに攻撃が集まるはず。そして、その攻撃を私が吸収します。私の魔法を竜がそうしてように。最後は吸収した魔力を利用して弱った竜に最大級の攻撃をぶつける。それが私の作戦です」
ノインとセレンはその提案にぎょっとした様子で目を見開いていた。驚き半分、呆れ半分といった様子だ。
「シンシア、それは無理よ。基本的に同系統の魔法でも他者のものに干渉することは不可能なの。どうやったかは分からないけどあれは竜固有の力の可能性が高いわ。流石にそんなものには命運を託すことはできない」
「私も勝算なく言ってるわけではないです。さっきの光弾を受けた時、魔法の一部が体の中に入ってくるのを感じたんです。意識して受ければ完全に吸収することも可能だと思います。何故できたかも私には分かりません。ですが、出来る気がするんです」
シンシアの無謀で粗雑な提案にセレンは苦虫を噛み潰したような顔をしている。だが、少女の淡青色の瞳の中には不思議な光が宿っていた。セレンはその輝きを見ると根拠や理論などなくてもこの少女ならやってくれるのではないかという不可思議な感慨が湧いてきた。セレンの理性は否定していても直感が信じろと言っている。だから、セレンはこの蛮勇ともいえる可能性を信じてみようと思った。
「……分かったわ。あなたの言葉を信じるわ。それで私は何をすればいいの?」
「セレンさんにはさっきの攻撃で負傷した人を回復させつつ動ける人を増やしてください。そして、残ってる人たちにはまだ攻撃しないように伝えてください。攻撃目標を分散させたくないので。あと、もし私たちが仕留めそこなった場合最後の詰めの部分をお願いします」
「分かったわ。それじゃあ私は一足先に行くわ。あとは二人で話し合って。成功を祈ってるわ」
そう言うとセレンは屋根の上を飛ぶ様に駆けていく。残されたその後ろ姿を見送る。
「それでシンシア。私は一人であの化け物を足止めしなければならない。出来ると思ってるの?」
「もちろん。だってノインは私の前で本気出したことないでしょ?」
ノインは一瞬顔の筋肉が痙攣したように動いたが表情を変えずに答える。
「確かに全力は出してない。でも、私が全力を出しても一人であれの相手をできるとは限らない」
「できるよ。元からできるとは思ってたけどさっきのセレンさんの態度で確信したの」
「どうゆうこと?」
「だって、セレンさん私には無理だって言ったのにノインにはできないって言わなかったじゃない。それってつまりセレンさんはノインが本気を出せば竜相手でも戦えると思ってるってことでしょ。どう?違う?」
シンシアは自信ありげに腕を組みご満悦な笑顔を浮かべている。ノインはその様子にわずかにほほ笑む。シンシアが意外にも理論的な面から攻めてきたからだ。おそらくシンシアが言いたかったのは自分のセレンもノインの実力は認めているということだろう。否定的な言い回しを使ったノインを励ましたかったのかもしれない。その事実を思うと実に微笑ましいとノインは思った。
「違わない。私にはそれだけの力があると思う。しっかりと目に焼き付けるといい。<夜天の影衣/シャドウクロス>」
ノインが魔法を発動させると足元の影が蛇が纏わりつくように体を上っていく。そして、体全体を覆いつくすポンチョのような形態に変化していく。
「攻撃は今の地点に誘導する。準備だけしてて」
それだけ言うとノインは屋根から飛び出していく。だが、ノインの体が落下していくことはなかった。体に纏った影衣が変形し、翼のようなものになり滑空したからだ。そして、そのまま真っ直ぐに竜へと向かっていく。
「一人で我と戦う気か?小さきものよ。その傲慢を身をもって贖え」
竜の怒声と共に地面から黒い巨大な杭がノインに向かって生えてくる。だが、ノインはその攻撃をあざ笑うように速度を上げ躱す。そして、その勢いのまま大きく開かれた黄金色の瞳に黒剣を突き立てようとする。その瞬間、目の前に光の壁が現れ剣の侵入を阻んだ。バチバチと火花を散らしながらさらに奥に差し込もうとするが黒い鞭のようなものの襲来に思わずその場を離れる。今の攻撃の合間に建物の壁にも黒い液体のようなものを張り巡らせていたようで三方位からの容赦のない攻撃が浴びせられる。
「<影分身/ドッペルゲンガー>」
ノインが魔法を発動させるとノインそっくりな数十体の分身体が出現した。竜はその魔法に驚き攻撃の目測が狂った。その隙を見逃さず数十体のノインがそれぞれが独立して竜に迫る。数多くの黒い鞭や杭が迎撃してくるが目標が増えたためかノインたちはそれを掻い潜る。そして、急所の目や鱗の継ぎ目など攻撃の通りそうなところに片っ端から影衣を変形させて斬撃を浴びせていくが竜の体には傷一つはいらない。しかし、高速での連続攻撃は竜を苛立たせた。
「鬱陶しいぞ。<竜光/ドラゴンライト>」
竜の周りには先ほどと同じように夥しいほどの光弾が出現する。怒りで冷静な判断ができていないのか明らかな過剰攻撃だ。浮かんでいた光弾はノインたち目掛けて飛んでいく。その瞬間ノインはほくそ笑み分身たちを消滅させる。竜はその行動の意図を測りかねたがすべての攻撃を本体のノインに集中させた。ノインは全速力でシンシアのいる建物の屋根の方へ飛んでいく。ノインはシンシアに目配せをすると彼女を盾にするように後ろに回り込んだ。シンシアは迫りくる光弾の雨を前に左手を前に突き出し体の周りを薄い光の膜で覆っていく。
数秒後無数の光弾の嵐がシンシアを襲う。しかし、光の膜に触れた瞬間光弾はどんどん消失していく。だが、あまりの大魔力にシンシアの目は血液で赤く染まり血の涙が流れる。他にも体の各所の血管が破裂し、その勢いで皮膚が突き破られ血が噴き出す。
(このままじゃ私が先に限界を迎えてしまう。できるかわからないけどやるしかない!)
シンシアはブラッドから貰った黒剣を一瞥し、光を吸収しながら剣に光を纏わせ始める。思い付きで行った行動だったが上手くいきすべての光弾は目の前から姿を消す。だが、満身創痍のシンシアは倒れそうになる。すると後ろにいたノインがその体を支えた。
「シンシア、あと少し頑張って。私もあなたの魔法に合わせて最大の攻撃を放つ。一緒にあの竜を倒そう」
「そうだね。倒そう」
そして、二人は同時に魔法を放つ。
「<竜光斬撃/ドラゴニックスラッシュ>
「<黒影波/シャドウウェーブ>」
シンシアの剣から解放された光の奔流とノインの双剣から噴出した凝縮された闇の塊が弱った竜に直撃する。その衝撃は凄まじく周囲に展開されていた黒い液体のようなものと建物も吹き飛ばし大きなクレータを作った。立ち上る土煙を見ながら二人は疲労のあまり膝をおった。
「ノインは一人で竜の気を引き、尚且つ竜の魔力が減るくらいの大魔法を放つくらいの圧力をかけて欲しいの。そうすれば、ノインだけに攻撃が集まるはず。そして、その攻撃を私が吸収します。私の魔法を竜がそうしてように。最後は吸収した魔力を利用して弱った竜に最大級の攻撃をぶつける。それが私の作戦です」
ノインとセレンはその提案にぎょっとした様子で目を見開いていた。驚き半分、呆れ半分といった様子だ。
「シンシア、それは無理よ。基本的に同系統の魔法でも他者のものに干渉することは不可能なの。どうやったかは分からないけどあれは竜固有の力の可能性が高いわ。流石にそんなものには命運を託すことはできない」
「私も勝算なく言ってるわけではないです。さっきの光弾を受けた時、魔法の一部が体の中に入ってくるのを感じたんです。意識して受ければ完全に吸収することも可能だと思います。何故できたかも私には分かりません。ですが、出来る気がするんです」
シンシアの無謀で粗雑な提案にセレンは苦虫を噛み潰したような顔をしている。だが、少女の淡青色の瞳の中には不思議な光が宿っていた。セレンはその輝きを見ると根拠や理論などなくてもこの少女ならやってくれるのではないかという不可思議な感慨が湧いてきた。セレンの理性は否定していても直感が信じろと言っている。だから、セレンはこの蛮勇ともいえる可能性を信じてみようと思った。
「……分かったわ。あなたの言葉を信じるわ。それで私は何をすればいいの?」
「セレンさんにはさっきの攻撃で負傷した人を回復させつつ動ける人を増やしてください。そして、残ってる人たちにはまだ攻撃しないように伝えてください。攻撃目標を分散させたくないので。あと、もし私たちが仕留めそこなった場合最後の詰めの部分をお願いします」
「分かったわ。それじゃあ私は一足先に行くわ。あとは二人で話し合って。成功を祈ってるわ」
そう言うとセレンは屋根の上を飛ぶ様に駆けていく。残されたその後ろ姿を見送る。
「それでシンシア。私は一人であの化け物を足止めしなければならない。出来ると思ってるの?」
「もちろん。だってノインは私の前で本気出したことないでしょ?」
ノインは一瞬顔の筋肉が痙攣したように動いたが表情を変えずに答える。
「確かに全力は出してない。でも、私が全力を出しても一人であれの相手をできるとは限らない」
「できるよ。元からできるとは思ってたけどさっきのセレンさんの態度で確信したの」
「どうゆうこと?」
「だって、セレンさん私には無理だって言ったのにノインにはできないって言わなかったじゃない。それってつまりセレンさんはノインが本気を出せば竜相手でも戦えると思ってるってことでしょ。どう?違う?」
シンシアは自信ありげに腕を組みご満悦な笑顔を浮かべている。ノインはその様子にわずかにほほ笑む。シンシアが意外にも理論的な面から攻めてきたからだ。おそらくシンシアが言いたかったのは自分のセレンもノインの実力は認めているということだろう。否定的な言い回しを使ったノインを励ましたかったのかもしれない。その事実を思うと実に微笑ましいとノインは思った。
「違わない。私にはそれだけの力があると思う。しっかりと目に焼き付けるといい。<夜天の影衣/シャドウクロス>」
ノインが魔法を発動させると足元の影が蛇が纏わりつくように体を上っていく。そして、体全体を覆いつくすポンチョのような形態に変化していく。
「攻撃は今の地点に誘導する。準備だけしてて」
それだけ言うとノインは屋根から飛び出していく。だが、ノインの体が落下していくことはなかった。体に纏った影衣が変形し、翼のようなものになり滑空したからだ。そして、そのまま真っ直ぐに竜へと向かっていく。
「一人で我と戦う気か?小さきものよ。その傲慢を身をもって贖え」
竜の怒声と共に地面から黒い巨大な杭がノインに向かって生えてくる。だが、ノインはその攻撃をあざ笑うように速度を上げ躱す。そして、その勢いのまま大きく開かれた黄金色の瞳に黒剣を突き立てようとする。その瞬間、目の前に光の壁が現れ剣の侵入を阻んだ。バチバチと火花を散らしながらさらに奥に差し込もうとするが黒い鞭のようなものの襲来に思わずその場を離れる。今の攻撃の合間に建物の壁にも黒い液体のようなものを張り巡らせていたようで三方位からの容赦のない攻撃が浴びせられる。
「<影分身/ドッペルゲンガー>」
ノインが魔法を発動させるとノインそっくりな数十体の分身体が出現した。竜はその魔法に驚き攻撃の目測が狂った。その隙を見逃さず数十体のノインがそれぞれが独立して竜に迫る。数多くの黒い鞭や杭が迎撃してくるが目標が増えたためかノインたちはそれを掻い潜る。そして、急所の目や鱗の継ぎ目など攻撃の通りそうなところに片っ端から影衣を変形させて斬撃を浴びせていくが竜の体には傷一つはいらない。しかし、高速での連続攻撃は竜を苛立たせた。
「鬱陶しいぞ。<竜光/ドラゴンライト>」
竜の周りには先ほどと同じように夥しいほどの光弾が出現する。怒りで冷静な判断ができていないのか明らかな過剰攻撃だ。浮かんでいた光弾はノインたち目掛けて飛んでいく。その瞬間ノインはほくそ笑み分身たちを消滅させる。竜はその行動の意図を測りかねたがすべての攻撃を本体のノインに集中させた。ノインは全速力でシンシアのいる建物の屋根の方へ飛んでいく。ノインはシンシアに目配せをすると彼女を盾にするように後ろに回り込んだ。シンシアは迫りくる光弾の雨を前に左手を前に突き出し体の周りを薄い光の膜で覆っていく。
数秒後無数の光弾の嵐がシンシアを襲う。しかし、光の膜に触れた瞬間光弾はどんどん消失していく。だが、あまりの大魔力にシンシアの目は血液で赤く染まり血の涙が流れる。他にも体の各所の血管が破裂し、その勢いで皮膚が突き破られ血が噴き出す。
(このままじゃ私が先に限界を迎えてしまう。できるかわからないけどやるしかない!)
シンシアはブラッドから貰った黒剣を一瞥し、光を吸収しながら剣に光を纏わせ始める。思い付きで行った行動だったが上手くいきすべての光弾は目の前から姿を消す。だが、満身創痍のシンシアは倒れそうになる。すると後ろにいたノインがその体を支えた。
「シンシア、あと少し頑張って。私もあなたの魔法に合わせて最大の攻撃を放つ。一緒にあの竜を倒そう」
「そうだね。倒そう」
そして、二人は同時に魔法を放つ。
「<竜光斬撃/ドラゴニックスラッシュ>
「<黒影波/シャドウウェーブ>」
シンシアの剣から解放された光の奔流とノインの双剣から噴出した凝縮された闇の塊が弱った竜に直撃する。その衝撃は凄まじく周囲に展開されていた黒い液体のようなものと建物も吹き飛ばし大きなクレータを作った。立ち上る土煙を見ながら二人は疲労のあまり膝をおった。
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