魔導と迷宮~最強の冒険者は少女を育てるようです~
39話
天高く赤色の煙が立ち上ると同時にシンシアとノインは竜に接近していく。すると何故か竜の黒い半身が泥のように溶け出す。それは意思を持っているかのように二人の方へ流れてくる。二人はその異様な液体のようなものを警戒しつつも速度を緩めずに駆けていく。だが、その接近を阻むように黒い液体のようなものが巨大な針のような物体に変形し、シンシアたちを襲う。
「<貫く光撃/スティンガー>」
「<影鞭/シャドーウィップ>」
シンシアは剣に光を集中させた突きを繰り出し、ノインは影を鞭のようにしならせ目の前の障害を打ち壊していく。だが、壊れた針のようなものはすぐに液体のような形態に戻り再び硬質化し攻撃してくる。あまりの物量に二人は堪らず後退する。
「ノイン、あれってどうなってるの?壊しても壊しても全く減らないんだけど……」
「多分あの黒い半身の方は魔力で再生するんだと思う。竜は無限の魔力を持ってるから実質あれに攻撃しても無意味。だから、必然的に光ってる方の体を狙うべき」
ノインは淡々と述べる。だが、ノインの様子とは対照的にシンシアとセレンは目を見開き、衝撃を受けたような顔をしていた。
「竜が無限の魔力を持っているというのは本当なの?初めて聞く話だけど……」
「間違いないと思う。にいが言ってたから」
「先生が………。確かにそれなら信用できる情報だね。それを踏まえたうえでどうしますか?」
シンシアはセレンの意見を伺うために顔を覗き込む。
「そうね。さっきみたいに接近しようとすれば時間を稼ぎもままならず圧殺されるでしょうね。だからといって距離をとれば城を壊したような攻撃を誘発してしまうかもしれないわ」
「じゃあ、どうする?まさか逃げ出すの?」
ノインは若干目を細め、セレンの瞳を見つめる。
「まさか。そんなこと薄情なことはしないわ。だからこうするのよ。<活性/ブースト>」
セレンは二人の背中に触れながら魔法を発動させる。その瞬間淡い光のようなものがシンシアとノインを包んだ。
「体が軽い……。これって身体強化の魔法というやつですか?」
「そうよ。私の魔法は生物の肉体的機能を高める魔法なの。だからエルボルの森では彼らの自己治癒力を高めて傷を治したのよ」
「汎用性が高い魔法なんですね」
「そうでもないわ。この魔法は元の身体機能が低い相手に使っても効果が薄いのよ。まあ、その心配はあなたたちには不要だと思うけどね」
「二人ともそろそろ来る」
ノインが警戒を促すが黒い液体のようなものは竜の周囲にしか見えず、先ほどの光を放つ攻撃をしてくる様子もない。だが、身体機能が強化されたからなのか足裏から感じる微細な振動に無意識にシンシアは反応した。ノインとセレンも当然のように後ろに跳んでいた。それと同時に先ほどまでシンシアたちが地面から鋭利な黒い石柱のようなものが生えていた。
「あの黒い何かを地面の下に広げ始めてる。早くしないと足の踏み場もなくなるかも」
「聞いて。シンシアは左、ノインは右から近づいて。近づくときは建物の屋根を利用して。足元からの攻撃を躱しやすくなるはずだから」
「セレンさんは?」
「私は正面から行くわ。私は遠距離の攻撃手段がないから。それじゃあ行くよ」
そう言ってセレンたちは駆けだす。シンシアとノインは跳躍して軽々と建物に上っていく。セレンはその様子を横目で見ながら最速で竜に接近していく。当然抵抗は強く、硬質化した黒い液体のようなものが行く手を阻む。だが、それを素早く躱したり、鋭い槍の一撃でことごとく砕いていく。竜の意識もセレンに集中し始め攻撃の密度は加速度的に増していく。流石にセレンも捌けなくなっていき手足に裂傷を負っていく。しかし、そのおかげでシンシアたちへの警戒度が下がり接近を許した。
「<影槍/シャドウランス>」
「<浮遊する光球/フロートライト>」
ノインの足元の影が彼女の背後の空間に大きく広がりそこから無数の黒い槍が発射される。同時にシンシアの周りに浮いていた十個ほどの光球が不可思議な軌道で竜に迫っていく。二人の魔法攻撃は見事竜の光を放っている方に当たった。だが、ノインの影槍は強靭な鱗に弾かれシンシアの光球は放っている光と同化し吸収された。全くダメージを与えられなかったような様子に三人は驚きを隠せなかった。その隙を突かれセレンは先ほどと違った黒い液体の鞭のような攻撃に襲われシンシアの立っている建物にたたきつけられた。
「もう終わりか小さき者どもよ。だが、それも詮無きこと。我と貴様らには絶望的なまでの差があるのだから。諦めたのならこの遊びも終わりか」
名残り惜しそうに竜はしみじみと呟く。だが、その言葉に反論する者がいた。
「まだよ。寧ろ今からが本番なんだから」
「何を……」
竜が言い終える前に無数の魔法が竜に降り注ぐ。槍のような雷や炎や土塊でできた球などがどこからともなく飛んできたのだ。シンシアとノインが周りを見渡すとたくさんの冒険者が見えた。
「勝負はここからよ」
セレンは真っ直ぐ黄金色の瞳を見つめる。
「面白い。お前たちの全霊でかかってい来い」
竜は獰猛な咆哮を響かせた。
「<貫く光撃/スティンガー>」
「<影鞭/シャドーウィップ>」
シンシアは剣に光を集中させた突きを繰り出し、ノインは影を鞭のようにしならせ目の前の障害を打ち壊していく。だが、壊れた針のようなものはすぐに液体のような形態に戻り再び硬質化し攻撃してくる。あまりの物量に二人は堪らず後退する。
「ノイン、あれってどうなってるの?壊しても壊しても全く減らないんだけど……」
「多分あの黒い半身の方は魔力で再生するんだと思う。竜は無限の魔力を持ってるから実質あれに攻撃しても無意味。だから、必然的に光ってる方の体を狙うべき」
ノインは淡々と述べる。だが、ノインの様子とは対照的にシンシアとセレンは目を見開き、衝撃を受けたような顔をしていた。
「竜が無限の魔力を持っているというのは本当なの?初めて聞く話だけど……」
「間違いないと思う。にいが言ってたから」
「先生が………。確かにそれなら信用できる情報だね。それを踏まえたうえでどうしますか?」
シンシアはセレンの意見を伺うために顔を覗き込む。
「そうね。さっきみたいに接近しようとすれば時間を稼ぎもままならず圧殺されるでしょうね。だからといって距離をとれば城を壊したような攻撃を誘発してしまうかもしれないわ」
「じゃあ、どうする?まさか逃げ出すの?」
ノインは若干目を細め、セレンの瞳を見つめる。
「まさか。そんなこと薄情なことはしないわ。だからこうするのよ。<活性/ブースト>」
セレンは二人の背中に触れながら魔法を発動させる。その瞬間淡い光のようなものがシンシアとノインを包んだ。
「体が軽い……。これって身体強化の魔法というやつですか?」
「そうよ。私の魔法は生物の肉体的機能を高める魔法なの。だからエルボルの森では彼らの自己治癒力を高めて傷を治したのよ」
「汎用性が高い魔法なんですね」
「そうでもないわ。この魔法は元の身体機能が低い相手に使っても効果が薄いのよ。まあ、その心配はあなたたちには不要だと思うけどね」
「二人ともそろそろ来る」
ノインが警戒を促すが黒い液体のようなものは竜の周囲にしか見えず、先ほどの光を放つ攻撃をしてくる様子もない。だが、身体機能が強化されたからなのか足裏から感じる微細な振動に無意識にシンシアは反応した。ノインとセレンも当然のように後ろに跳んでいた。それと同時に先ほどまでシンシアたちが地面から鋭利な黒い石柱のようなものが生えていた。
「あの黒い何かを地面の下に広げ始めてる。早くしないと足の踏み場もなくなるかも」
「聞いて。シンシアは左、ノインは右から近づいて。近づくときは建物の屋根を利用して。足元からの攻撃を躱しやすくなるはずだから」
「セレンさんは?」
「私は正面から行くわ。私は遠距離の攻撃手段がないから。それじゃあ行くよ」
そう言ってセレンたちは駆けだす。シンシアとノインは跳躍して軽々と建物に上っていく。セレンはその様子を横目で見ながら最速で竜に接近していく。当然抵抗は強く、硬質化した黒い液体のようなものが行く手を阻む。だが、それを素早く躱したり、鋭い槍の一撃でことごとく砕いていく。竜の意識もセレンに集中し始め攻撃の密度は加速度的に増していく。流石にセレンも捌けなくなっていき手足に裂傷を負っていく。しかし、そのおかげでシンシアたちへの警戒度が下がり接近を許した。
「<影槍/シャドウランス>」
「<浮遊する光球/フロートライト>」
ノインの足元の影が彼女の背後の空間に大きく広がりそこから無数の黒い槍が発射される。同時にシンシアの周りに浮いていた十個ほどの光球が不可思議な軌道で竜に迫っていく。二人の魔法攻撃は見事竜の光を放っている方に当たった。だが、ノインの影槍は強靭な鱗に弾かれシンシアの光球は放っている光と同化し吸収された。全くダメージを与えられなかったような様子に三人は驚きを隠せなかった。その隙を突かれセレンは先ほどと違った黒い液体の鞭のような攻撃に襲われシンシアの立っている建物にたたきつけられた。
「もう終わりか小さき者どもよ。だが、それも詮無きこと。我と貴様らには絶望的なまでの差があるのだから。諦めたのならこの遊びも終わりか」
名残り惜しそうに竜はしみじみと呟く。だが、その言葉に反論する者がいた。
「まだよ。寧ろ今からが本番なんだから」
「何を……」
竜が言い終える前に無数の魔法が竜に降り注ぐ。槍のような雷や炎や土塊でできた球などがどこからともなく飛んできたのだ。シンシアとノインが周りを見渡すとたくさんの冒険者が見えた。
「勝負はここからよ」
セレンは真っ直ぐ黄金色の瞳を見つめる。
「面白い。お前たちの全霊でかかってい来い」
竜は獰猛な咆哮を響かせた。
コメント