魔導と迷宮~最強の冒険者は少女を育てるようです~
29話
様々な人々が明日の会議に備える中、シンシアとノインは宿の一室で寛いでいた。シンシアはベッドに背中を預け手足を可能な限り伸ばす。
「今日も疲れたね」
「そう?普通だと思うけど」
ノインは黒い双剣を磨きながらそう答える。
「ノインにとっては日常なのかもしれないけど私はまだ慣れないよ。先生との訓練はほとんど対人戦だったから」
「それは仕方ない。魔物はそれぞれで性質が違うから戦い方もバラバラ。だから対策しても無意味。結局戦いの雰囲気に慣れるしかない」
「やっぱりそうだよね。ここ最近いろんな魔物と戦ったけど人と違って体の構造そのものが根本的に異なっているから知らないと何してくるかわからなくて戦いづらかったよ」
ノインは磨いた剣を証明の光で照らして刃の具合を確かめている。シンシアはその様子を横目で見ながらほほ笑む。まったく話を聞いてないようだがちゃんと会話に参加してくれる優しさに思わず笑みがこぼれたのだ。
「でもシンシアはしっかり対応できてる。これなら通常より早く迷宮に潜れるようになれるのかもしれない」
シンシアはその言葉に疑問を覚えた。
「ノイン、それってどうゆう意味?」
「迷宮は翠玉以上の等級を持つ冒険者しか入れないけど今回かなり強い部類の魔物を討伐したから早く等級が上がるかもしれないってこと」
シンシアはあからさまに驚いた表情を浮かべた。ノインは何に驚いているのかわからず首を傾げている。
「そうなんだ!てっきり迷宮に入らないのはまだ私がその域に達してないって先生が判断してるからだと思ってた」
ノインは半ば呆れたような顔でシンシアを見つめている。
「帝国に来る前のシンシアの実力でも迷宮の中層までなら十分戦えるレベル。だってエルボルの森であったパーティーも翠玉だった。あの人たちが迷宮に潜れるのにそれよりも遥かに上の私たちが太刀打ちできない道理はない」
シンシアは少し気恥し気に頬を掻く。
「私のことを評価してくれるのはうれしいけど私はまだノインの足元にも及ばないよ」
ノインはその発言を聞き少し口角が上がる。シンシアは謙遜しているように見えるがその実強くなろうという意欲が見え隠れしている。少し前ならそんな姿勢を見せることもなかった。これが自分と戦ったことで起こった変化なら苦労した甲斐があったというものだ。
最初はユニ様に言われたからこっちに来ただけだったが今はここが最も居心地が良い居場所となっていた。同年代のライバルと頼れる兄がいる環境は予想以上に心が躍る状況だったのだ。競い、研鑽し、分かち合う。そんな普通のことが一人で黙々と剣を振るい、血を浴びるよりも性に合ったのかもしれない。そんな内心をおくびにも出さずノインはシンシアの問いに淡々と答える。
「まだ?いつかは追いつく気なの?」
シンシアはいたずらっ子のような笑みを浮かべながら答える。
「いつかなんて遠い未来じゃないよ。そうだなー、半年以内には互角の勝負をしてみせるよ」
ノインは面食らったような間抜けな表情を浮かべた。流石にこんな堂々と宣言するとは思っていなかったからだ。だが、すぐにその表情は余裕を持った笑みに変わる。
「そんなこと言うのは百年早い。言っておくけど私はまだ全力を見せていないから」
「うん、そうだと思っていた。でもそれ込みで追いついて見せるよ、絶対に!」
シンシアは固めた拳をノインの方へ突き出した。ノインも微笑みながら拳を合わせた。
日も沈み会議まで残り十時間を切った頃ウルは帝都の外れの人気のない路地裏にいた。肩には青い鳥を乗せ、姿は男になっていた。
「いよいよね。ウル、首尾はどうかしら?」
「万全です。ユニ様。万が一といったこともないでしょう」
「そう。流石ね。もしもの時は私を頼ってくれてもいいのよ。どうにかしてあげるから」
「分かっております。どうしようもない事態に陥ったらユニ様を頼らせて頂きます」
「良い子ね。それでは明日を楽しみにしているわ」
そう言って青い鳥は上空へと飛び去って行った。それを見届けるとウルは大きなため息をつく。
「まったくユニ様は。どうせ自分が楽しみたいだけでしょうに」
ウルはぶつぶつと愚痴を吐き出しながら帰路についた。
「今日も疲れたね」
「そう?普通だと思うけど」
ノインは黒い双剣を磨きながらそう答える。
「ノインにとっては日常なのかもしれないけど私はまだ慣れないよ。先生との訓練はほとんど対人戦だったから」
「それは仕方ない。魔物はそれぞれで性質が違うから戦い方もバラバラ。だから対策しても無意味。結局戦いの雰囲気に慣れるしかない」
「やっぱりそうだよね。ここ最近いろんな魔物と戦ったけど人と違って体の構造そのものが根本的に異なっているから知らないと何してくるかわからなくて戦いづらかったよ」
ノインは磨いた剣を証明の光で照らして刃の具合を確かめている。シンシアはその様子を横目で見ながらほほ笑む。まったく話を聞いてないようだがちゃんと会話に参加してくれる優しさに思わず笑みがこぼれたのだ。
「でもシンシアはしっかり対応できてる。これなら通常より早く迷宮に潜れるようになれるのかもしれない」
シンシアはその言葉に疑問を覚えた。
「ノイン、それってどうゆう意味?」
「迷宮は翠玉以上の等級を持つ冒険者しか入れないけど今回かなり強い部類の魔物を討伐したから早く等級が上がるかもしれないってこと」
シンシアはあからさまに驚いた表情を浮かべた。ノインは何に驚いているのかわからず首を傾げている。
「そうなんだ!てっきり迷宮に入らないのはまだ私がその域に達してないって先生が判断してるからだと思ってた」
ノインは半ば呆れたような顔でシンシアを見つめている。
「帝国に来る前のシンシアの実力でも迷宮の中層までなら十分戦えるレベル。だってエルボルの森であったパーティーも翠玉だった。あの人たちが迷宮に潜れるのにそれよりも遥かに上の私たちが太刀打ちできない道理はない」
シンシアは少し気恥し気に頬を掻く。
「私のことを評価してくれるのはうれしいけど私はまだノインの足元にも及ばないよ」
ノインはその発言を聞き少し口角が上がる。シンシアは謙遜しているように見えるがその実強くなろうという意欲が見え隠れしている。少し前ならそんな姿勢を見せることもなかった。これが自分と戦ったことで起こった変化なら苦労した甲斐があったというものだ。
最初はユニ様に言われたからこっちに来ただけだったが今はここが最も居心地が良い居場所となっていた。同年代のライバルと頼れる兄がいる環境は予想以上に心が躍る状況だったのだ。競い、研鑽し、分かち合う。そんな普通のことが一人で黙々と剣を振るい、血を浴びるよりも性に合ったのかもしれない。そんな内心をおくびにも出さずノインはシンシアの問いに淡々と答える。
「まだ?いつかは追いつく気なの?」
シンシアはいたずらっ子のような笑みを浮かべながら答える。
「いつかなんて遠い未来じゃないよ。そうだなー、半年以内には互角の勝負をしてみせるよ」
ノインは面食らったような間抜けな表情を浮かべた。流石にこんな堂々と宣言するとは思っていなかったからだ。だが、すぐにその表情は余裕を持った笑みに変わる。
「そんなこと言うのは百年早い。言っておくけど私はまだ全力を見せていないから」
「うん、そうだと思っていた。でもそれ込みで追いついて見せるよ、絶対に!」
シンシアは固めた拳をノインの方へ突き出した。ノインも微笑みながら拳を合わせた。
日も沈み会議まで残り十時間を切った頃ウルは帝都の外れの人気のない路地裏にいた。肩には青い鳥を乗せ、姿は男になっていた。
「いよいよね。ウル、首尾はどうかしら?」
「万全です。ユニ様。万が一といったこともないでしょう」
「そう。流石ね。もしもの時は私を頼ってくれてもいいのよ。どうにかしてあげるから」
「分かっております。どうしようもない事態に陥ったらユニ様を頼らせて頂きます」
「良い子ね。それでは明日を楽しみにしているわ」
そう言って青い鳥は上空へと飛び去って行った。それを見届けるとウルは大きなため息をつく。
「まったくユニ様は。どうせ自分が楽しみたいだけでしょうに」
ウルはぶつぶつと愚痴を吐き出しながら帰路についた。
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