魔導と迷宮~最強の冒険者は少女を育てるようです~
9話
山を下りた後ブラッドたちはギルドの裏にある納品所に来ていた。依頼の受付や報酬の受け取りはギルドの中で行うが魔物の討伐などで得た素材はここで売却するのだ。
「ゴードン、いるか」
木の小屋の扉を叩き、声をかける。すると、軋むような音を立てながら扉が開く。そこから出てきたのは無精髭を生やした筋骨隆々とした男だった。
「おお、ブラッドさんじゃないですか。お久しぶりです!」
男は満面の笑みを浮かべ、ばしばしとブラッドの背中を叩いてくる。それをひらりとかわし男を真っ直ぐに見据える。
「相変わらずむさ苦しいな」
「そういわんでくださいよ。元気が俺の取り柄なんですから」
凶悪な笑みを浮かべながらゴードンは答える。こちらを見る男の瞳が左右に動き、シンシアとノインを捕らえる。ゴードンは無精髭に手を当て、こすりながら質問してくる。
「旦那。その娘っ子たちはどちら様ですかい?まさか旦那の娘ではないんでしょう?」
「当たり前だ。こっちの金髪が弟子でそっちの黒髪が妹分だ」
「シンシアです。運に恵まれ先生の弟子になることができました。これからよろしくお願いします」
「ノイン。よろしく」
二人の言葉を聞き納得したという表情をゴードンは浮かべる。
「シンシアにノインか。こちらこそよろしくな」
男は先ほどとは変わり爽やかな笑みを浮かべた。流石に女、子供にはあの顔はしないようだ。
「自己紹介はそれぐらいでいいだろう。魔物の解体と査定をしてくれ」
ブラッドはそう言うと黒い穴からワイバーンのの死骸を取り出す。この空間内ではあらゆるものは劣化しないので死骸はすべて新鮮だ。そのため切られた首からは赤黒い血が滴り落ち始めている。
「今回はワイバーンか。ブラッドさんにしては普通のものを持ってきましたね」
「別に俺が狩るのが目的ではないからな。このくらいが手ごろだっただけだ」
「とゆうことはこれ全部この嬢ちゃんたちがやったのかい!。見たところまだまだ新米のはずなのに大したもんだな。流石は攻略者様の連れだな」
ゴードンは少女たちの胸元に輝く認識票を見ながら大きな声で称えた。当然のことである。ワイバーンは白磁の新人が狩れるような雑魚ではない。翠玉や紅玉の中級冒険者がパーティーで相手をするのがワイバーンなのだ。つまり、彼女たちは上級冒険者並みの実力を備えているということになる。その言葉にノインは薄い胸を張り、シンシアは笑みを浮かべた。
「世辞はいい。さっさとこれの査定をしてくれ。手が止まってるぞ」
「少しくらい付き合ってくれてもいいじゃないですか。久しぶりなんですし」
大げさな動きをしながらやれやれといった様子で話している。その様子をブラッドは仮面の奥から鋭い視線を向けた。実際見えていないが雰囲気を感じ取ったのかため息をつきワイバーンの死体を漁りだす。
「はいはい、分かってますよ。やればいいんでしょ、やれば」
十分ほど待たされ一枚の細長い紙を渡された。
「今回はワイバーン十体だったので査定額は金貨五枚ほどですね。どの素材もきれいなままだったのでほぼ満額です。ただ、一つだけ尻尾の切断面が荒いものがあったのでそこが少しマイナス点でしたね」
ブラッドは傍らのシンシアの顔色を確認したがこの報告を気にした様子はなかったためそっと息を吐いた。
「そうか。では、俺たちは行く。またよろしく頼む」
「いつでもお待ちしてますよ」
手を振りながら見送るゴードンを背に納品所を後にする。
「ゴードンさんいい人でしたね」
「ん。悪人顔なのに良いやつ」
二人は口々に意見を言う。少し褒められただけでこれとはあまりにも安いやつらだ。シンシアはともかくノインは今までの暗殺者生活で何を学んでいたのか。相も変わらず戦闘以外はポンコツのようだ。そう思っているとノインがじっとこっちを凝視してくる。その様子に何となく意図を察した。
「二人とも俺は報酬を受け取ってくる。お前たちは先に宿に戻っててくれ。ノインの部屋もすでに取ってあるからフロントで聞いてくれ。じゃあな」
ブラッドは矢継ぎ早に用件だけ言うと表のギルドの方へ歩を進めた。
「先生、どうしたんでしょうか?」
シンシアが不思議そうに小首をかしげる。
「さあ?にいは頭いいから色々考えてるんだと思う。それよりシンシア少しいい?」
「ノイン、どうかしたの?」
「今からちょっと付き合ってほしい」
「いいよ。どこに行くの?」
「秘密。付いてきて」
二人は共に街の中を歩いていく。
ブラッドはそんな中ギルドで換金を済ませていた。受付嬢が膨らんだ皮袋を持ってくる。
「ブラッド様、今回の報酬と素材の買い取り合わせて金貨八枚になります」
カウンターに置かれた袋の開け口から金色の輝きが覗いている。一部の国を除き銅貨百枚で銀貨一枚、銀貨百枚で金貨一枚という価値で統一されている。また、この後にも同様に白金貨、王金貨と続くが金貨一枚で家族四人程度の家庭なら数か月持つほどの金額であるので滅多に市場では使われない。
ブラッドは袋を黒い空間に収納すると踵を返しギルドを出ていこうとする。
「ブラッド様お待ちください。少しお耳に言れたいことがあるのです」
ブラッドは立ち止まり、受付嬢の方を振り返る。
「何だ?」
「ギルド長からの伝言がございますのでお伝えさせていただきます。『帝国で継承問題が起きてるようだが王国はこの件に一切関与しないそうだ』だそうです」
「そうか。確認のために聞くがそれを君に伝えたのはギルド長なんだな?」
「はい。そのとおりでございます」
受付嬢はにっこりと笑い返事をした。
「そうか。ありがとう」
それだけ言うとブラッドはギルドを後にした。
「ゴードン、いるか」
木の小屋の扉を叩き、声をかける。すると、軋むような音を立てながら扉が開く。そこから出てきたのは無精髭を生やした筋骨隆々とした男だった。
「おお、ブラッドさんじゃないですか。お久しぶりです!」
男は満面の笑みを浮かべ、ばしばしとブラッドの背中を叩いてくる。それをひらりとかわし男を真っ直ぐに見据える。
「相変わらずむさ苦しいな」
「そういわんでくださいよ。元気が俺の取り柄なんですから」
凶悪な笑みを浮かべながらゴードンは答える。こちらを見る男の瞳が左右に動き、シンシアとノインを捕らえる。ゴードンは無精髭に手を当て、こすりながら質問してくる。
「旦那。その娘っ子たちはどちら様ですかい?まさか旦那の娘ではないんでしょう?」
「当たり前だ。こっちの金髪が弟子でそっちの黒髪が妹分だ」
「シンシアです。運に恵まれ先生の弟子になることができました。これからよろしくお願いします」
「ノイン。よろしく」
二人の言葉を聞き納得したという表情をゴードンは浮かべる。
「シンシアにノインか。こちらこそよろしくな」
男は先ほどとは変わり爽やかな笑みを浮かべた。流石に女、子供にはあの顔はしないようだ。
「自己紹介はそれぐらいでいいだろう。魔物の解体と査定をしてくれ」
ブラッドはそう言うと黒い穴からワイバーンのの死骸を取り出す。この空間内ではあらゆるものは劣化しないので死骸はすべて新鮮だ。そのため切られた首からは赤黒い血が滴り落ち始めている。
「今回はワイバーンか。ブラッドさんにしては普通のものを持ってきましたね」
「別に俺が狩るのが目的ではないからな。このくらいが手ごろだっただけだ」
「とゆうことはこれ全部この嬢ちゃんたちがやったのかい!。見たところまだまだ新米のはずなのに大したもんだな。流石は攻略者様の連れだな」
ゴードンは少女たちの胸元に輝く認識票を見ながら大きな声で称えた。当然のことである。ワイバーンは白磁の新人が狩れるような雑魚ではない。翠玉や紅玉の中級冒険者がパーティーで相手をするのがワイバーンなのだ。つまり、彼女たちは上級冒険者並みの実力を備えているということになる。その言葉にノインは薄い胸を張り、シンシアは笑みを浮かべた。
「世辞はいい。さっさとこれの査定をしてくれ。手が止まってるぞ」
「少しくらい付き合ってくれてもいいじゃないですか。久しぶりなんですし」
大げさな動きをしながらやれやれといった様子で話している。その様子をブラッドは仮面の奥から鋭い視線を向けた。実際見えていないが雰囲気を感じ取ったのかため息をつきワイバーンの死体を漁りだす。
「はいはい、分かってますよ。やればいいんでしょ、やれば」
十分ほど待たされ一枚の細長い紙を渡された。
「今回はワイバーン十体だったので査定額は金貨五枚ほどですね。どの素材もきれいなままだったのでほぼ満額です。ただ、一つだけ尻尾の切断面が荒いものがあったのでそこが少しマイナス点でしたね」
ブラッドは傍らのシンシアの顔色を確認したがこの報告を気にした様子はなかったためそっと息を吐いた。
「そうか。では、俺たちは行く。またよろしく頼む」
「いつでもお待ちしてますよ」
手を振りながら見送るゴードンを背に納品所を後にする。
「ゴードンさんいい人でしたね」
「ん。悪人顔なのに良いやつ」
二人は口々に意見を言う。少し褒められただけでこれとはあまりにも安いやつらだ。シンシアはともかくノインは今までの暗殺者生活で何を学んでいたのか。相も変わらず戦闘以外はポンコツのようだ。そう思っているとノインがじっとこっちを凝視してくる。その様子に何となく意図を察した。
「二人とも俺は報酬を受け取ってくる。お前たちは先に宿に戻っててくれ。ノインの部屋もすでに取ってあるからフロントで聞いてくれ。じゃあな」
ブラッドは矢継ぎ早に用件だけ言うと表のギルドの方へ歩を進めた。
「先生、どうしたんでしょうか?」
シンシアが不思議そうに小首をかしげる。
「さあ?にいは頭いいから色々考えてるんだと思う。それよりシンシア少しいい?」
「ノイン、どうかしたの?」
「今からちょっと付き合ってほしい」
「いいよ。どこに行くの?」
「秘密。付いてきて」
二人は共に街の中を歩いていく。
ブラッドはそんな中ギルドで換金を済ませていた。受付嬢が膨らんだ皮袋を持ってくる。
「ブラッド様、今回の報酬と素材の買い取り合わせて金貨八枚になります」
カウンターに置かれた袋の開け口から金色の輝きが覗いている。一部の国を除き銅貨百枚で銀貨一枚、銀貨百枚で金貨一枚という価値で統一されている。また、この後にも同様に白金貨、王金貨と続くが金貨一枚で家族四人程度の家庭なら数か月持つほどの金額であるので滅多に市場では使われない。
ブラッドは袋を黒い空間に収納すると踵を返しギルドを出ていこうとする。
「ブラッド様お待ちください。少しお耳に言れたいことがあるのです」
ブラッドは立ち止まり、受付嬢の方を振り返る。
「何だ?」
「ギルド長からの伝言がございますのでお伝えさせていただきます。『帝国で継承問題が起きてるようだが王国はこの件に一切関与しないそうだ』だそうです」
「そうか。確認のために聞くがそれを君に伝えたのはギルド長なんだな?」
「はい。そのとおりでございます」
受付嬢はにっこりと笑い返事をした。
「そうか。ありがとう」
それだけ言うとブラッドはギルドを後にした。
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