小学生のぼくは日記を書くことにした

文戸玲

怒った様子で怒っていないと佐藤さんは言う


 学校につくと佐藤さんは露骨にぼくのことを避けるようになった。普段のぼくなら中川くんや宮坂くんに何をされたって気にはしないのだが,ぼくは佐藤さんのことを友達としてずいぶん気に入っていたみたいだ。胸の奥がぽっかり空いたみたいで,喉がギュッと締めつけられたように少し苦しい。

「佐藤さん,なんだかいつもと違うよね。昨日ぼくんちで何か不愉快なことをしたかな」

三浦くんがぼくのところへ来て言った。ぼくとしては心当たりがないわけではないが,どうして怒っているのかと言われるとそこがなんとも掴めない。女の子には急に怒り出すことがあるのだと誰かが言っていたから,今はそういう時期なのかもしれない。佐藤さんと仲直りしたいという気持ちはある。だから,放課後に佐藤さんのところへ行って何に起こっているのか聞いてみようと思った。

 掃除をして帰りの会が終わり,これから下校をしようという頃に佐藤さんの所へ向かった。

「どうして怒っているの?」

とぼくは言った。

「私は怒っていない! あと,コウシくんが変わらないのなら私はあなたたちと一緒にいられないから!!」

と佐藤さんは言った。怒った口調で怒ってないと言い,よく分からない状況は深まるばかりだ。ただ,いま少し話をしただけで分かったことがある。ぼくが変わらないと佐藤さんとは仲良くなれないということだ。ぼくは家に帰ったら自分を変えるための本でも読んでみようと思う。

コメント

コメントを書く

「文学」の人気作品

書籍化作品