三日月

ghame

(31)モデルチェンジ

 
 店内に入ると若い女性客がエリを含めて7人いた。
スタッフも4人いて繁盛していることが伺える。
 女性客の1人がオレの顔をじっと見ているので(?)と思ったんだけど
 次の瞬間スマホと見比べていたのでYouTubeを見てオレの変身前と見比べていることが明らかだったので見てる人もいるんだなと思った。

 さて、紺色のワンピースの後ろ姿を見つけたのでソファーに腰掛けて待つことにして、今から行く買い物に参考になる雑誌が無いか選んでいると
「お待たせ」と、エリの声がした。

 期待に胸を膨らませ立ち上がって振り向くと、予想以上に可愛いくなった仕上がりに、別人の様な違和感があって、しばらく見つめて、つい出てしまった一言は
「どちら様ですか?」一気にエリの顔が暗くなる。

 しまった!!

 その一言が彼女を間違いなく傷つけたことに気が付きフォローの言葉を考えたが、全く浮かばなくて内心焦る。。

 そこにハサミ登場
「期待以上の仕上がりでしょう?エリちゃんもかずくん同様、素材が良いのよ。美男美女カップルね、おデート行ってらっしゃい」

 エリが美人なのは初めて会った時から知っていた。
「こんなに綺麗になってしまったらオレ困ります。」
と、素直に気持ちを伝える。
 それを聞いたエリの気配がうつむいた。
 表情までは見えない、、

「ハサミさん。でも、またもや神業です。ありがとございました。」
「かずくん可愛いわね!そこ座って!」
 そう言うと、ジェルを付けた手で髪を揉み込んで、エリの横を歩ける程度の見栄えを出してくれた。

「じゃ、また月曜日に」

「エリお腹空いてない?オレもうペコペコだ!ガッツリ食べたいんだけど、綺麗になったエリが入れるオサレな店が良いよね。パスタだ!オレは大盛りを食べよう。イタリアンで良い?」

「カズ、多分カズは彼女できるわよ。一緒にいて楽しいもん。」
 そんな事をエリが言うとは、なんか意外だった。
「オレもだ、エリと一緒にいるときは楽しい。実は親友だと思ってる。エリにとっては迷惑かな、とは思っているけど。」
「実は私も、数日前から友達ってこんな感じなのかな?なんて考えていたの。カズにとっては迷惑かな、とは思っているんだけど。」

 自転車を並んで押して歩きながら、目を合わせて微笑みあった。
「告白すると、オレなんかもっと前からエリのこと双子の妹だったら良いとか、同性なら親友になれたかも。とか思ってた、」
「兄弟は無理だけど、親友ならなれるわよ。兄弟!」
と言ってパンチをオレに向かって伸ばして来たので オレも拳を作ってエリのちっちゃな拳にチョンと合わせてお互いニッと、また笑った。

 自転車を停めて店に入り、エリを壁側の奥の席を勧めてオレは通路側に座る。
 注文を済ませて変身したエリの顔をじっくり観察すると髪は柔らかい栗色になっていて垢抜けている。 メイクをしたようで、まつ毛も長く目がパッチリしてお人形の様だ。
 元々白く綺麗な肌は、ほっぺが薄らピンクに染まっていて唇もぽってり艶々していて一言で言うと妖精みたいだ。
 このまま羽を広げて飛んで行ってしまいそうな不安感さえ抱かせる。 
 ここまで変身しなくても良かったんじゃ無いか?
2人をそっとして置いて欲しいのに、これでは目立ってしまう。
 ハサミがやり過ぎた事は、ちょっと嫌だった。

「カズはあまり気に入って無いみたいね。さっきから浮かない顔してる」
「うん、エリ綺麗になったよ。綺麗になり過ぎ。」
「何それ?褒め言葉にしか聞こえないんだけど」
「そうだね、オレはエリを褒めてるね。」
「わかった、この顔に慣れないんでしょう?もう髪切っちゃったんだし中身は同じなんだから早く慣れてね!髪の色を変えたのなんて初めてだし抵抗があるのよ、カズが浮かない顔してたら私困る。」
「確かに、エリの言う通りだ。直ちに慣れることにする。しかし、エリ相当美人だぞ!気を付けろよ、悪い男が寄ってくる。」
「何それ?寄って来ないわよ!カズだって外見変わって誰か寄って来た?」
「納得、それはごもっともでした。」
 まんまと、エリの一言に丸め込まれた



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