三日月

ghame

(23)彼女の細い肩

  5月28日木曜日

 朝起きると一番初めに
エリにバースデーメールを入れて
財布にもお金を入れ、それから鍵盤の前に座った。。


 今朝のエリは 肩がフリルになっている可愛いデザインの白いブラウスを着ていて、普段は隠れている肩が少し見えて、そこから白くて細い腕が形よく伸びている。
 普段は隠れているところが少し見えるだけでこんなに男心が舞い上がるとは、とても参考になった。

 想像したことが無いエリの肩は盲点で、笑顔に匹敵するほどギャップ効果があることも感心しながら、じっくり見て教材として目に焼き付けておくことにする。
 そんなことに心を奪われ、うっかりしていたが大切なことを思い出し、彼氏がお誕生日の彼女にかける言葉を練習することにした。

「エリ、お誕生日おめでとう。オレは彼氏だからプレゼントを週末に用意するので欲しいものを考えておいてね。それと、昨日雑誌で見かけたブラウスと似たデザインやっぱりエリに似あってるよ。自分の好みの服を彼女が着てきた時の気持ちが理解できて参考になったよ、ありがとう」 

「それで、どんな気持ちになるの?」

「そうだね、きっと男心をくすぐられて舞い上がるって気持ちだよ。」
「それは、すごい効果なんじゃない?相手の好みを取り入れるのって、やっぱり続けましょ。それでカズはいつ見せてくれるの?」
「オレは週末に買いに行ってからでも良い?」

「わかった!女心をくすぐってね!」
「オレがエリを?それはちょっと無理でしょう?女性と同じ効果は期待しない方が良いよ」

 会社に着くと今日は熊がエリに間違いなく過大に絡んで来るであろうことが心配になって、彼氏としては彼女の笑顔と白く細い肩を守らなくては、と眼を光らせていたのだが。

 朝礼の時のエリは冷房の効いた事務所の中でベストの上からカーディガンを着ていて、その心配は妄想ストーカーの取り越し苦労となった。

 朝礼が終わると「お誕生おめでとう」と、みんなに取り囲まれていて、会社に馴染んでいることも知って自分のことの様に嬉しく思っていたんだが、その中には熊もいる、そしてそいつはオレに近づいて来た。

「桜井くんおはよう、今日の課長は一段と可愛く見えないか?お誕生日を祝って昨日より盛大に笑わせてやろうぜ!」

 そう言うと、課長はエリに近づいて行くので、嫌な予感がしてオレはその後を追いかけることにした。

「課長お誕生日おめでとうございます。つきましては明日この桜井がお誕生日を祝って余興をご用意していますのでお楽しみに」
「こらこら、無茶振りすんなよ!エリ嘘だからな!主任が余興するそうですよ、そうだ鳩出すって言ってました。」
「課長、桜井が卵産むって言ってました。」

 2人は首根っこにタックルし合いながら戯れている様にしか見えないが、山下のパワーが凄くてオレは全力で対抗しないとひっくり返りそうだ。

「主任!ちょっと、そんなでかい図体で技かけてこないでください、わたし壊れちゃう!!」
「おう!壊れろ壊れろ 壊れて中から卵をいっぱい出せ!明日みんなで食ってやる!」
 ガタイの良い山下主任に良い様に弄ばれて、もうその対応が必死だ

「明日は課長のお隣予約してもよろしいですか?最近はストーカーとか世の中物騒ですから、、。」
「主任が一番物騒じゃ無いですか?痛いですよ。わたしをおもちゃにしないで下さい。えっと、佐藤課長!!主任は伝染病持ってて感染するから絶対隣に座っちゃダメですよ!」

  オレの真っ赤な顔して必死に訴えている情けない様子がツボに入ったエリは、お腹を抱えて生き生きと大爆笑を始め、まわりで見ていた営業事務課長や受付の三木谷さんを筆頭に女性社員がつられて大爆笑始めた。

「なんだと!オレはイケメンが嫌いだ!根絶やしにしてやりたい!」
「コレまた余興?2人とも子供みたいに、、山下主任、桜井さんが苦しそうよ 離してあげて。2人とも、明日は楽しみに期待してます。」
 と言う言葉を残して、涼しく立ち去るオレのバーチャル彼女の後ろ姿は、最高にクールだと思った。


「ほらみろ、オレの言った通りだろ!オレは現場にいる頃から課長を知っていて事務職になってからも3年一緒に仕事してんだ。文句あるか?」
「大有りだよ。佐藤課長様に一方的にお世話になってただけだろう!」
「なんだと!お前は先輩に向かって失礼なんだよ!」

 そこへ営業事務課長が近づいてきて
「朝から元気いいね。君たち良いコンビだ、桜井くん明日の幹事を、山下主任と一緒に頼まれてくれるかい?余興も2人にお願いしたいくらいだが!」
「課長余興は、主任1人にお任せして、幹事はお手伝いさせてもらいます。」
「明日は君たちのおかげで楽しくなりそうだ。よろしくお願いします。」



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