異世界に喚ばれたので、異世界で住みます。
94.志貴Side
シバルヴァの駆除が終わってから、翌日の昼頃にシバルヴァの毒の除去が終わった。駆除と同じ頃に終わるのかと思いきや、ドラゴンたちや白帝が取り込んだ分の毒の除去に、思いの外時間が掛かったらしい。
依織は、腕に双帝の剣を抱いて、蒼の離宮の一室で眠っていた。疲労だろうと始音は言う。側で守っていた始音と終歌は、依織から離れようとしなかった。
「…依織」
《どうした、志貴よ。そんなに情けない顔をして》
「始音、俺は情けないな」
《うん?》
「俺にこの力があれば良かったのに。依織ばかりに苦労を掛ける」
眠る依織の顔に掛かった髪を退け、温かい頬を撫でる。依織が眠って今日で3日目。俺が依織に毒を取り除く様に言った。リリーシャが毒に蝕まれていくのに、我慢が出来なかったから。けど、これ以外に方法はなかったのだ。解毒すら許さない魔物花。確実に死へ至らしめる魔物花の毒を取り除くなんて、どうなるか分からないのに。
《依織はそうとは思っとらんぞ?志貴よ、お前は何年この娘の兄をしているんだ?依織は、誇りに思っている。父譲りの力をな。だから、こうやって死の淵ギリギリまで力を試し使うのだ》
《あまり褒められたモンじゃねーけどな!死の淵ギリギリまでなんざ、酔狂のすることだぜ》
 
始音の呆れた声と終歌の怒った声。それより、依織は疲れて寝てるんだよな?恐ろしい言葉が、二匹の口から二回ほど繰り返されたような気がする。
「死の淵、ギリギリって…」
《あぁ、死にゃせんよ。依織はその匙加減を無意識に理解しているからな》
「死にはしない、のか…」
《安心しろ。死にかけたら、聖女が迎えに行くと意気込んでいたからな》
なら良いか、なんて思えるものなら思える兄になりたかった。俺は薄情な兄ではないのだ。依織もシエルもセリカも愛しい。たった唯一の家族だから。
《依織は、お前が指揮することで確実にシバルヴァの駆除が終わると言っていた。お前を心から信頼し、命を預けた》
「…見落としもなかったし、ドラゴンたちの容態は回復した。白帝も昨夜目を覚ましたと」
《あぁ、そうさな。だか、お前も今朝目を覚ましたのだろう?》
2日間、国中に張り巡らせ監視していた。万が一、俺が見落としていれば依織がしたことを水の泡にする。だから、それだけは避けねばならなかった。持てる全ての力を使って、国中に意識を張り巡らせた。そのせいで、俺まで寝込んでしまったが。
「依織のしたことを、俺のミスで水の泡にするわけには行かないからな」
《どうしてこう、お前らは自分を卑下にするかね?この国に命を懸けて恩を売ったんだ。胸張って恩返しをしてもらうかと洒落こめよ》
「…いや、それはちょっと無理だろ」
《どうしてだ?お前らは命を懸けて、この国を、皇帝をドラゴンを民を守ったというのにか?いくら、仕えているからといっても、ここまでする家臣はそういないぞ?》
「終歌は古い人間臭い考えだな」
《当たり前だろ、こちらとら伊達に何百年何千年と生きてないわ》 
「そうだな…命を懸けて守ったんだな、俺たち」
《お前も下手すらあの世行きだったんだ。そこまでしたのに、何もなしです、ありがとうじゃ皇族もこの国も形無しだ。何かをねだっても良いんじゃねぇか?》
もしそうだったら、全員で脱国しようなと終歌は笑った。俺もつられて笑う。なんか吹っ切れた。白帝は兎も角、黒帝はケチでもないし依織を分かっているだろう。
「ーーちょっくら、出てくるわ。依織の願いを叶えてやらねーとな。泉の穢れを取り除いた時だって、色々あったからコイツ何も望んでねえし」
《あぁ、行ってこい》
立ち上がって、もう一度依織の頬を撫でた。依織の望みを俺は知っているし、それは俺の望みでもある。聞いてくれなかったら、とりあえずこの国を滅ぼして別の国に移るとしよう。
依織は、腕に双帝の剣を抱いて、蒼の離宮の一室で眠っていた。疲労だろうと始音は言う。側で守っていた始音と終歌は、依織から離れようとしなかった。
「…依織」
《どうした、志貴よ。そんなに情けない顔をして》
「始音、俺は情けないな」
《うん?》
「俺にこの力があれば良かったのに。依織ばかりに苦労を掛ける」
眠る依織の顔に掛かった髪を退け、温かい頬を撫でる。依織が眠って今日で3日目。俺が依織に毒を取り除く様に言った。リリーシャが毒に蝕まれていくのに、我慢が出来なかったから。けど、これ以外に方法はなかったのだ。解毒すら許さない魔物花。確実に死へ至らしめる魔物花の毒を取り除くなんて、どうなるか分からないのに。
《依織はそうとは思っとらんぞ?志貴よ、お前は何年この娘の兄をしているんだ?依織は、誇りに思っている。父譲りの力をな。だから、こうやって死の淵ギリギリまで力を試し使うのだ》
《あまり褒められたモンじゃねーけどな!死の淵ギリギリまでなんざ、酔狂のすることだぜ》
 
始音の呆れた声と終歌の怒った声。それより、依織は疲れて寝てるんだよな?恐ろしい言葉が、二匹の口から二回ほど繰り返されたような気がする。
「死の淵、ギリギリって…」
《あぁ、死にゃせんよ。依織はその匙加減を無意識に理解しているからな》
「死にはしない、のか…」
《安心しろ。死にかけたら、聖女が迎えに行くと意気込んでいたからな》
なら良いか、なんて思えるものなら思える兄になりたかった。俺は薄情な兄ではないのだ。依織もシエルもセリカも愛しい。たった唯一の家族だから。
《依織は、お前が指揮することで確実にシバルヴァの駆除が終わると言っていた。お前を心から信頼し、命を預けた》
「…見落としもなかったし、ドラゴンたちの容態は回復した。白帝も昨夜目を覚ましたと」
《あぁ、そうさな。だか、お前も今朝目を覚ましたのだろう?》
2日間、国中に張り巡らせ監視していた。万が一、俺が見落としていれば依織がしたことを水の泡にする。だから、それだけは避けねばならなかった。持てる全ての力を使って、国中に意識を張り巡らせた。そのせいで、俺まで寝込んでしまったが。
「依織のしたことを、俺のミスで水の泡にするわけには行かないからな」
《どうしてこう、お前らは自分を卑下にするかね?この国に命を懸けて恩を売ったんだ。胸張って恩返しをしてもらうかと洒落こめよ》
「…いや、それはちょっと無理だろ」
《どうしてだ?お前らは命を懸けて、この国を、皇帝をドラゴンを民を守ったというのにか?いくら、仕えているからといっても、ここまでする家臣はそういないぞ?》
「終歌は古い人間臭い考えだな」
《当たり前だろ、こちらとら伊達に何百年何千年と生きてないわ》 
「そうだな…命を懸けて守ったんだな、俺たち」
《お前も下手すらあの世行きだったんだ。そこまでしたのに、何もなしです、ありがとうじゃ皇族もこの国も形無しだ。何かをねだっても良いんじゃねぇか?》
もしそうだったら、全員で脱国しようなと終歌は笑った。俺もつられて笑う。なんか吹っ切れた。白帝は兎も角、黒帝はケチでもないし依織を分かっているだろう。
「ーーちょっくら、出てくるわ。依織の願いを叶えてやらねーとな。泉の穢れを取り除いた時だって、色々あったからコイツ何も望んでねえし」
《あぁ、行ってこい》
立ち上がって、もう一度依織の頬を撫でた。依織の望みを俺は知っているし、それは俺の望みでもある。聞いてくれなかったら、とりあえずこの国を滅ぼして別の国に移るとしよう。
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