異世界に喚ばれたので、異世界で住みます。
87.依織と叔父と
「では、そのようにしましょう。どうせ、あの国には迷惑しかかけられていないですし」
隣国の周りにある国々は、この国の同盟諸国である。隣国だけは、双帝の在り方が気に入らないからと同盟の話を蹴り続けていたそうだ。ジエロやお兄ちゃん曰く、バカ国王は自分こそが真の国王だと思っているらしい。
「アルベルトが臥せっているのに、そんなに簡単に決断しても良いのかい?」
「寝ている奴に文句は言わせません。諸国にも根回しをしておきますし」
「ふぅん。僕が先陣を切ろうかい?」
「そうですね、大叔父上に頼みましょう。好きなように暴れてください。あぁ、それよりも先にジエロから情報を聞いてからですね」
「分かった。とりあえず、シバルヴァの駆除が出来てからにしよう。急いでも現状は変わらないだろうし、勇者が魔王討伐なんて叶いっこないしね」
「俺はアルベルトの剣を取って来るので、少し席を外しますが?」
「おいおい、君は黒帝だろう?僕に問わずに行けば良いよ。父上にも報告に行くんだろ」
「…バレましたか、では少し失礼します」
シヴァ様とノルエルハの話は着々と進み、結論までたどり着いたところでシヴァ様は部屋から出ていった。私とノルエルハだけが残った部屋。互いの呼吸音しか聞こえない。
「依織」
「なぁに、エル」
「シバルヴァは猛毒だよ。万が一触れたりしたら、いくら君だって…」
「もう心配性だなあ。大丈夫だよ、心配しないで」
「心配しちゃダメなのかい?君は僕の可愛い姪っ子なのに」
「…エル、再会した時に酷いこと言ってごめんね」
母の気が狂った時から、再会して事情を知るその時まで私はノルエルハを恨んでいた。心の奥深いところから、ずっと。
「そのことはもう良いよ。だってあれは、不可抗力だったけど仕方ないことだからね」
「不可抗力で仕方ないことだったとしても、私は貴方を傷つけたしリーリン様も傷つけてしまった」
「それはそうだけど、あれは僕も悪いからね。僕ね帰って来てから、向こうでの話をしてないんだ」
「え…?」
「だって浦島太郎状態だよ?帰って来たら、20年近くも経ってたんだよ。時の流れは同じでも、いつの間にか一の兄上は退位していたし、子供も5人居た。リーリンだって少女から女性になっていたーーーそれが酷く恐ろしかった」
独りだけ置いていかれた様な気がしたんだ。13歳で二の兄上と地球に召喚されてから、20年近く経った時に喚び戻された。33歳にもなる、いい大人なのに僕は暫く引きこもった。僕が帰って来て引きこもっていることを知ったリーリンは、根気強く僕に手紙を書き続けてくれた。
リーリンは僕を愛してくれていた。いつ戻るのか分からないし、戻らないかもしれないのに、彼女は結婚もせずに待っていてくれた。35歳まで待って、僕が帰って来なかったら、修道院に入るつもりだったんだって。
5歳離れていて良かったよ。昔はもどかしかったんだけど、今じゃそれで良かったって思ってる。僕を待ち続けてくれて、僕のプロポーズを受けてくれて、子供まで産んでくれた。ありがたい話だよ本当。
「まあ話がそれたけど、依織や志貴も被害者なんだから。僕に言ったことで自分を責めないで。ね、この話はもう終わり。僕は君たちが愛しいよ。兄の子供は僕の子供でもある。もちろん、シエルやセリカも大事な子供だ」
ノルエルハは、何年ぶりかに見た柔らかな微笑みを浮かべ私の頬を両手で挟み込んだ。優しい金と銀の瞳。大好きだった父さんとエルだけの目。いつもキラキラしていて、私たちを見る目が温かくてーーー大好きだった。父さんも母さんもエルも。
「依織、泣かないで。いつもみたいに笑って」
大好きだ。
隣国の周りにある国々は、この国の同盟諸国である。隣国だけは、双帝の在り方が気に入らないからと同盟の話を蹴り続けていたそうだ。ジエロやお兄ちゃん曰く、バカ国王は自分こそが真の国王だと思っているらしい。
「アルベルトが臥せっているのに、そんなに簡単に決断しても良いのかい?」
「寝ている奴に文句は言わせません。諸国にも根回しをしておきますし」
「ふぅん。僕が先陣を切ろうかい?」
「そうですね、大叔父上に頼みましょう。好きなように暴れてください。あぁ、それよりも先にジエロから情報を聞いてからですね」
「分かった。とりあえず、シバルヴァの駆除が出来てからにしよう。急いでも現状は変わらないだろうし、勇者が魔王討伐なんて叶いっこないしね」
「俺はアルベルトの剣を取って来るので、少し席を外しますが?」
「おいおい、君は黒帝だろう?僕に問わずに行けば良いよ。父上にも報告に行くんだろ」
「…バレましたか、では少し失礼します」
シヴァ様とノルエルハの話は着々と進み、結論までたどり着いたところでシヴァ様は部屋から出ていった。私とノルエルハだけが残った部屋。互いの呼吸音しか聞こえない。
「依織」
「なぁに、エル」
「シバルヴァは猛毒だよ。万が一触れたりしたら、いくら君だって…」
「もう心配性だなあ。大丈夫だよ、心配しないで」
「心配しちゃダメなのかい?君は僕の可愛い姪っ子なのに」
「…エル、再会した時に酷いこと言ってごめんね」
母の気が狂った時から、再会して事情を知るその時まで私はノルエルハを恨んでいた。心の奥深いところから、ずっと。
「そのことはもう良いよ。だってあれは、不可抗力だったけど仕方ないことだからね」
「不可抗力で仕方ないことだったとしても、私は貴方を傷つけたしリーリン様も傷つけてしまった」
「それはそうだけど、あれは僕も悪いからね。僕ね帰って来てから、向こうでの話をしてないんだ」
「え…?」
「だって浦島太郎状態だよ?帰って来たら、20年近くも経ってたんだよ。時の流れは同じでも、いつの間にか一の兄上は退位していたし、子供も5人居た。リーリンだって少女から女性になっていたーーーそれが酷く恐ろしかった」
独りだけ置いていかれた様な気がしたんだ。13歳で二の兄上と地球に召喚されてから、20年近く経った時に喚び戻された。33歳にもなる、いい大人なのに僕は暫く引きこもった。僕が帰って来て引きこもっていることを知ったリーリンは、根気強く僕に手紙を書き続けてくれた。
リーリンは僕を愛してくれていた。いつ戻るのか分からないし、戻らないかもしれないのに、彼女は結婚もせずに待っていてくれた。35歳まで待って、僕が帰って来なかったら、修道院に入るつもりだったんだって。
5歳離れていて良かったよ。昔はもどかしかったんだけど、今じゃそれで良かったって思ってる。僕を待ち続けてくれて、僕のプロポーズを受けてくれて、子供まで産んでくれた。ありがたい話だよ本当。
「まあ話がそれたけど、依織や志貴も被害者なんだから。僕に言ったことで自分を責めないで。ね、この話はもう終わり。僕は君たちが愛しいよ。兄の子供は僕の子供でもある。もちろん、シエルやセリカも大事な子供だ」
ノルエルハは、何年ぶりかに見た柔らかな微笑みを浮かべ私の頬を両手で挟み込んだ。優しい金と銀の瞳。大好きだった父さんとエルだけの目。いつもキラキラしていて、私たちを見る目が温かくてーーー大好きだった。父さんも母さんもエルも。
「依織、泣かないで。いつもみたいに笑って」
大好きだ。
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