異世界に喚ばれたので、異世界で住みます。
80.不意をつく帰還
「よー」
聞こえる筈のない暢気な声がして、私は、私たちは書類から顔を上げた。ほのかに春めいた風を感じたことで、あぁ、窓から入ってきたんだな、と違うことを考えた。
私が提案した神頼みは、考え直した黒帝や話を聞かされた前皇帝に却下されたのだ。私を失うのは、まだ惜しいと言われたら、私だって考え直すしかないんだよなあ。
「何で夜中なのに仕事してんすか」
「お、兄ちゃん!?」
「シキ!!」
ため息をついたところで、その声の主が行方不明だった兄のものだと気付いてーー書類やペンたちが宙を舞った。バラバラになった書類に落ち込むより、兄が帰って来たという驚きが勝った。
「えぇ、そんなに俺に会いたかったんですか?」
「あああああ、帰ってきやがった!!帰って来てくれたの嬉しいのに!!帰って来やがった!!」
「依織が言っている意味分からない。帰って来たらダメだったのか?」
「帰ってくるタイミングが悪すぎるぞ、シキ」
「ついに、帰って来るのにタイミングを図らねぇといけねーのか…」
帰って来てくれたことは嬉しいのに。嬉しいのに、この絶望感に似た何か。シヴァ様の言うとおり、帰ってくるタイミング悪すぎ。マジでタイミング悪すぎ。空気読め。読んでくれ。
私やお兄ちゃん、ノルエルハだけがあの花の存在を知っているから、ジジイ共や様々な人たちに私たちが白帝暗殺を企てている、とかあり得もしないことで疑われかねないと、事情を知る人たちに相談してある。
「で、何で夜中なのに仕事してんすか?しかも書類の海が出来てるじゃないっすか」
「貴方のせいで書類の山は書類の海になりました」
「ロベルトさん、怖い顔っすよ。これ、白帝のじゃないんですか?白帝、まだ臥せってるですか?」
「ーー実はですね、」
どこから話したら良いかなあ。とか色々考えたけど、とりあえず白帝が臥せったとこから、話をすることにしたらしい。書類の海から帰って来たロベルト様が。
「シバルヴァかー」
「シバルヴァがこの世界にある心当たりがあるの?」
「いや、心当たりっつうかなんつうか。勇者(笑)が地球の奴なんだよな」
「あっちの出身?」
「そうだ。その勇者(笑)召喚に引っ付いて、魔王の片割れだった魔族がこの世界に来た」
眉間にシワが寄ったのが分かった。シヴァ様に至っては、人を一人殺した後のような顔付きになっている。ロベルト様は、書類の山を書類の海にされた時から怖い顔をしていた。
「さあ、どうすっかなー」
聞こえる筈のない暢気な声がして、私は、私たちは書類から顔を上げた。ほのかに春めいた風を感じたことで、あぁ、窓から入ってきたんだな、と違うことを考えた。
私が提案した神頼みは、考え直した黒帝や話を聞かされた前皇帝に却下されたのだ。私を失うのは、まだ惜しいと言われたら、私だって考え直すしかないんだよなあ。
「何で夜中なのに仕事してんすか」
「お、兄ちゃん!?」
「シキ!!」
ため息をついたところで、その声の主が行方不明だった兄のものだと気付いてーー書類やペンたちが宙を舞った。バラバラになった書類に落ち込むより、兄が帰って来たという驚きが勝った。
「えぇ、そんなに俺に会いたかったんですか?」
「あああああ、帰ってきやがった!!帰って来てくれたの嬉しいのに!!帰って来やがった!!」
「依織が言っている意味分からない。帰って来たらダメだったのか?」
「帰ってくるタイミングが悪すぎるぞ、シキ」
「ついに、帰って来るのにタイミングを図らねぇといけねーのか…」
帰って来てくれたことは嬉しいのに。嬉しいのに、この絶望感に似た何か。シヴァ様の言うとおり、帰ってくるタイミング悪すぎ。マジでタイミング悪すぎ。空気読め。読んでくれ。
私やお兄ちゃん、ノルエルハだけがあの花の存在を知っているから、ジジイ共や様々な人たちに私たちが白帝暗殺を企てている、とかあり得もしないことで疑われかねないと、事情を知る人たちに相談してある。
「で、何で夜中なのに仕事してんすか?しかも書類の海が出来てるじゃないっすか」
「貴方のせいで書類の山は書類の海になりました」
「ロベルトさん、怖い顔っすよ。これ、白帝のじゃないんですか?白帝、まだ臥せってるですか?」
「ーー実はですね、」
どこから話したら良いかなあ。とか色々考えたけど、とりあえず白帝が臥せったとこから、話をすることにしたらしい。書類の海から帰って来たロベルト様が。
「シバルヴァかー」
「シバルヴァがこの世界にある心当たりがあるの?」
「いや、心当たりっつうかなんつうか。勇者(笑)が地球の奴なんだよな」
「あっちの出身?」
「そうだ。その勇者(笑)召喚に引っ付いて、魔王の片割れだった魔族がこの世界に来た」
眉間にシワが寄ったのが分かった。シヴァ様に至っては、人を一人殺した後のような顔付きになっている。ロベルト様は、書類の山を書類の海にされた時から怖い顔をしていた。
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