異世界に喚ばれたので、異世界で住みます。
75.シュヴァルツSide
「アルはまだ寝こけてんのか」
アルベルトが横たわるベッドの前に座る彼女に訊けば、俺を見て困ったように笑った。俺たち双子とルシエラの母親である彼女は、見ない間にやつれたような気がする。まあ、寝こけた兄よりマシだけど。
「シヴァ、お仕事は良いの?」
「休憩だ休憩。何日缶詰だったと思ってんだ」
「ふふ、そうね。アルがお寝坊さんだから、みんなに迷惑掛かってるわ」
「さっさと起きりゃ良いのになあ」
「早く起きて欲しいわね」  
儚げな美しい顔に薄く笑みを乗せ彼女は、優しい目でアルを見た。その後ろでそよ風に揺れるのは白い花びらの花。白い花びらの中は血のように赤い。存在感を放つ見たことのない花に、目が離せない。
「その、花って」
「あぁ、これ?ヴィヴィとリーヴェが持ってきてくれたの。そう言えば長いこと咲いてるわねぇ、魔術を掛けているのかしら?」
臥せった兄を心配して摘んできたという花。彼女が言うが魔術の気配はない。けれど嫌な予感がする。一回、イオとマリベルに見てもらうべきだろう。
「その花、借りていっても良いか?」
「あら、どうして?」
「枯れねぇようにしてくる」
「ふふ、綺麗な花だもの。枯らしちゃ惜しいわよね」
「じゃあ、仕事がまだ残ってるから」
「えぇ、無理しないでね」
彼女から花瓶ごと花を受け取り、本来の目的の為であるルシエラの所へそのまま向かうことにした。そういや、ロベルトも此処に来るって言ってたのに何処行ったんだ?
「シュヴァルツ様、来られてたんですね」
「あぁ。お前も来ると思っていた」
「途中で部下に捕まってしまいまして。執務室に来年度の予算の書類が届くそうです」
「…予算か」
あっけらかんと笑うロベルト。自分の妹を取り戻してから、なんか変わったんだよな。気難しいところは変わりねぇけど、朗らかになったっつうか。ちょっとだけ優しさが出てきたっつうか。
「シュヴァルツ様は、これからどちらに?」
「ルシエラの所へ」
「綺麗な花を持って?」
「これは、マリベルとイオリに調べさそうと思ってな。嫌な予感がするんだ」
「見たことのない花ですね、なんか毒々しい」 
眉を潜めたロベルトは、すぐに花から視線を反らした。ロベルトでさえ、この反応をするのだ。マリベルやイオリが見たらどうなるのだろう。
「アルベルトを見て行くんだろ?」
「いえ、マリベル団長とイオリに召集をかけます。なんか、それが手掛かりになるような気がして」
「そうか。気になるし、早いことに越したことはない」
ロベルトは、一礼して踵を返した。勘の良い男だから、何かこの花に思うところがあるのだろう。手元の花瓶を見やってから、足早に執務室へと戻った。
アルベルトが横たわるベッドの前に座る彼女に訊けば、俺を見て困ったように笑った。俺たち双子とルシエラの母親である彼女は、見ない間にやつれたような気がする。まあ、寝こけた兄よりマシだけど。
「シヴァ、お仕事は良いの?」
「休憩だ休憩。何日缶詰だったと思ってんだ」
「ふふ、そうね。アルがお寝坊さんだから、みんなに迷惑掛かってるわ」
「さっさと起きりゃ良いのになあ」
「早く起きて欲しいわね」  
儚げな美しい顔に薄く笑みを乗せ彼女は、優しい目でアルを見た。その後ろでそよ風に揺れるのは白い花びらの花。白い花びらの中は血のように赤い。存在感を放つ見たことのない花に、目が離せない。
「その、花って」
「あぁ、これ?ヴィヴィとリーヴェが持ってきてくれたの。そう言えば長いこと咲いてるわねぇ、魔術を掛けているのかしら?」
臥せった兄を心配して摘んできたという花。彼女が言うが魔術の気配はない。けれど嫌な予感がする。一回、イオとマリベルに見てもらうべきだろう。
「その花、借りていっても良いか?」
「あら、どうして?」
「枯れねぇようにしてくる」
「ふふ、綺麗な花だもの。枯らしちゃ惜しいわよね」
「じゃあ、仕事がまだ残ってるから」
「えぇ、無理しないでね」
彼女から花瓶ごと花を受け取り、本来の目的の為であるルシエラの所へそのまま向かうことにした。そういや、ロベルトも此処に来るって言ってたのに何処行ったんだ?
「シュヴァルツ様、来られてたんですね」
「あぁ。お前も来ると思っていた」
「途中で部下に捕まってしまいまして。執務室に来年度の予算の書類が届くそうです」
「…予算か」
あっけらかんと笑うロベルト。自分の妹を取り戻してから、なんか変わったんだよな。気難しいところは変わりねぇけど、朗らかになったっつうか。ちょっとだけ優しさが出てきたっつうか。
「シュヴァルツ様は、これからどちらに?」
「ルシエラの所へ」
「綺麗な花を持って?」
「これは、マリベルとイオリに調べさそうと思ってな。嫌な予感がするんだ」
「見たことのない花ですね、なんか毒々しい」 
眉を潜めたロベルトは、すぐに花から視線を反らした。ロベルトでさえ、この反応をするのだ。マリベルやイオリが見たらどうなるのだろう。
「アルベルトを見て行くんだろ?」
「いえ、マリベル団長とイオリに召集をかけます。なんか、それが手掛かりになるような気がして」
「そうか。気になるし、早いことに越したことはない」
ロベルトは、一礼して踵を返した。勘の良い男だから、何かこの花に思うところがあるのだろう。手元の花瓶を見やってから、足早に執務室へと戻った。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
26950
-
-
29
-
-
4112
-
-
124
-
-
361
-
-
310
-
-
1
-
-
127
-
-
39
コメント