異世界に喚ばれたので、異世界で住みます。

千絢

70.勇者召喚(笑)

「魔王討伐に勇者召喚?」








なんだそれ、と顔にデカデカと書いてあるシヴァ様。ジェラール団長やマリベル様、ルシエラ様、ロベルト様も同じような表情で私を見てくる。








「魔物の活発化の裏に新しい魔王の即位が関わっているらしいですが、何故それが勇者と結び付くんです?っていうか勇者って」








「昔の絵本みたいですね」








フフフと笑うロベルト様とルシエラ様。なんかロベルト様って雰囲気変わったよね、そっちが素なの?魔王討伐に勇者召喚ってどこのラノベだよって思うけど、みんな考えること一緒なんだよねー。








異世界の人間が、他所の世界を救えると思ってるのが痛々しいよね。救えるわけないじゃん。何で救えると思ったの。魔王とか規格外のイキモノよ?存在しない世界だってあるのに。ましてや、そんな世界の人間が召喚されたって倒せる術あるの?なくね?伝説の剣(笑)とかあるの?








「で、その勇者召喚が何でシキに関係があるんだ?」








「勇者は関係ないですよ。都合の良いこじつけですね!一番関係あるのは魔王の方です」








「魔王?」








「私と戦って、父を殺した魔族が魔王になったみたいで」








魔封石の中に閉じ込めた筈なのに。どうやって出てきたのやら。縁が結ばれてたからって、魔族とか魔物の行き来があったとか信じれない。








「え?」








「じゃあ、シキが目的にしてるのって」








「そーです、私を殺し損ね、父を殺した魔族への報復ですね!今度こそ葬り去ってやると言ってました」








お兄ちゃんより私が報復したいけどね。私が葬るのが筋でしょーに。お兄ちゃん、いつの間にそんな情報を手に入れていたのやら。








「魔族は、世界を行き来する術を持っているということか?」








「いえ、この世界と私が居た世界は縁が結ばれていたから行き来できたのでしょう」








「本来、世界と世界は行き来するものではありませんからね。喚ぶのも喚ばれるのも、すべて一方的なものです」








ニコルに喚ばれた私が帰れないのと同じだ。まあ、帰れないのは私だけじゃないけど。帰れる手段があったとしても、地球への座標が分かるわけない。だから、もう二度と帰れない。帰りたいってわけでもないけどね。

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