異世界に喚ばれたので、異世界で住みます。
58.貴方は誇り高き皇帝
「だから、謝られても何も元には戻らない。まぁ、もとより謝られる意味が私には分からないからこの件はチャラね。ゼロから始めるしかことほかないのよ」
「…イオリ、」
「貴方は、こんな私をどう扱う?もう昨日までの事を蒸し返しちゃ駄目よ。貴方は黒帝。この国の戦を専門とする騎士団の主なんだから、過去を悔いるのはこの時まで。今まで前を向いて、貴方は自分が最善だと思う方法で、手足となり目となる騎士団を導いてきた。それを、思い出して私をどうするか決断しなさいな」
結局、私は甘いのだろう。いや、もしかすると酷い女だと思われているかもしれない。謝罪を受け取らないと言っているのだから。それでも私は、この人に前を向いてほしい。クヨクヨしてないで、前を向いてろと思う。
「――もう一度、俺の傍仕えになってくれないか?そして、俺を今の様に誡めてくれ」
「…我が君の仰せのままに」
「…ありがとう、イオリ」
「その決断をなされたお心に感謝を申し上げます。これまで以上の成果を貴方に捧げましょう」
ベッドの上であっても、私は最高の臣下の礼を黒帝に捧げる。私はもう一度、黒帝の懐刀を目指すことが出来るのだ。諦めていた目標を再び得た。黒帝は、罪悪感からそうしたのかもしれない。けれど、それを感じさせないような働きを私はするまでだ。
――ま、元々の利き足が左だから右足が使えなくなったぐらいで、簡単な戦闘には何も響かない。黒と白は鈍らと化すだろうけど、それは私の腕の悪さの問題だ。今までの様な動きは出来ないが、それを何かで補えば良い。
暫くは鍛錬漬けになるだろうなあ。早く、この状態に慣れなければ。
《甘いな、イオリ》
《ふふ、だってイオリですもの》
貴方と同じで、懐に入れたものには優しいんですもの。
ティエラは嬉しそうに微笑んでいた。アストラルは困った様な、それでも嬉しそうな顔をしていて彼等も心配してくれていたのだ。仲直りに嬉しいんだろう。
「アストラル、ティエラ、ありがとう」
《どういたしまして》
《愛しい娘の為なら、何だって厭わないさ》
「アストラル、すまなかったな」
《主、これからは気を付けてくれよ》
温かな風は空っぽの私を満たしていく。精霊たちも嬉しそうに宙を飛んだり跳ねたりしている。黒帝は、もう大丈夫だ。この人は偉大な帝になるだろう。そんな予感がした。
「…さてと、次の問題は白帝かあ」
「アルのことか?」
「そうです。私を傍仕えにと。断って来ていたんですけど捕らえられた時に、婚約者になれば安泰だとか言われて。断ったつもりなんですけどねえ」
「…粘着質だぞ」
「薄々気づいてますとも」
白帝にはさらさら仕える気などなかったが、黒帝には仕えたいと思うのは気持ちの問題?失望したくないと、白帝の手を振り払った。あの時はあの時だと思い切りたいけど、白帝は納得しないだろう。白帝のようなタイプの男は、色んな意味を含めて初めてだから難しいところだ。
《アルベルトは大事なものは何でも懐に入れたがりますから》
《あいつ、選別をしないよな。その点においてシュヴアルツは選り好みが激しいから、懐に入れるものも少ないが》
《隠して自分だけのものにしたい、そんな気持ちもあるのではないでしょうかね》
さらっと恐ろしいことを口にするティエラ。白帝の相棒だからこそ、深層心理の奥まで理解している。そこからの発言だと思うけど、どっからどう読み汲んだって恐ろしいことほかない。
「――だが、あいつはお兄ちゃんだからな。いつかは折れる」
黒帝はそう思うんだろうけど、私は1ミリたりともそう思えないんだよなー。
「…イオリ、」
「貴方は、こんな私をどう扱う?もう昨日までの事を蒸し返しちゃ駄目よ。貴方は黒帝。この国の戦を専門とする騎士団の主なんだから、過去を悔いるのはこの時まで。今まで前を向いて、貴方は自分が最善だと思う方法で、手足となり目となる騎士団を導いてきた。それを、思い出して私をどうするか決断しなさいな」
結局、私は甘いのだろう。いや、もしかすると酷い女だと思われているかもしれない。謝罪を受け取らないと言っているのだから。それでも私は、この人に前を向いてほしい。クヨクヨしてないで、前を向いてろと思う。
「――もう一度、俺の傍仕えになってくれないか?そして、俺を今の様に誡めてくれ」
「…我が君の仰せのままに」
「…ありがとう、イオリ」
「その決断をなされたお心に感謝を申し上げます。これまで以上の成果を貴方に捧げましょう」
ベッドの上であっても、私は最高の臣下の礼を黒帝に捧げる。私はもう一度、黒帝の懐刀を目指すことが出来るのだ。諦めていた目標を再び得た。黒帝は、罪悪感からそうしたのかもしれない。けれど、それを感じさせないような働きを私はするまでだ。
――ま、元々の利き足が左だから右足が使えなくなったぐらいで、簡単な戦闘には何も響かない。黒と白は鈍らと化すだろうけど、それは私の腕の悪さの問題だ。今までの様な動きは出来ないが、それを何かで補えば良い。
暫くは鍛錬漬けになるだろうなあ。早く、この状態に慣れなければ。
《甘いな、イオリ》
《ふふ、だってイオリですもの》
貴方と同じで、懐に入れたものには優しいんですもの。
ティエラは嬉しそうに微笑んでいた。アストラルは困った様な、それでも嬉しそうな顔をしていて彼等も心配してくれていたのだ。仲直りに嬉しいんだろう。
「アストラル、ティエラ、ありがとう」
《どういたしまして》
《愛しい娘の為なら、何だって厭わないさ》
「アストラル、すまなかったな」
《主、これからは気を付けてくれよ》
温かな風は空っぽの私を満たしていく。精霊たちも嬉しそうに宙を飛んだり跳ねたりしている。黒帝は、もう大丈夫だ。この人は偉大な帝になるだろう。そんな予感がした。
「…さてと、次の問題は白帝かあ」
「アルのことか?」
「そうです。私を傍仕えにと。断って来ていたんですけど捕らえられた時に、婚約者になれば安泰だとか言われて。断ったつもりなんですけどねえ」
「…粘着質だぞ」
「薄々気づいてますとも」
白帝にはさらさら仕える気などなかったが、黒帝には仕えたいと思うのは気持ちの問題?失望したくないと、白帝の手を振り払った。あの時はあの時だと思い切りたいけど、白帝は納得しないだろう。白帝のようなタイプの男は、色んな意味を含めて初めてだから難しいところだ。
《アルベルトは大事なものは何でも懐に入れたがりますから》
《あいつ、選別をしないよな。その点においてシュヴアルツは選り好みが激しいから、懐に入れるものも少ないが》
《隠して自分だけのものにしたい、そんな気持ちもあるのではないでしょうかね》
さらっと恐ろしいことを口にするティエラ。白帝の相棒だからこそ、深層心理の奥まで理解している。そこからの発言だと思うけど、どっからどう読み汲んだって恐ろしいことほかない。
「――だが、あいつはお兄ちゃんだからな。いつかは折れる」
黒帝はそう思うんだろうけど、私は1ミリたりともそう思えないんだよなー。
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